アメリカ・中国の間で引き裂かれる日本はどうなる? 綱渡りの外交迫られる菅政権

文=斎藤満
【この記事のキーワード】
アメリカ・中国の間で引き裂かれる日本はどうなる? 綱渡りの外交迫られる菅政権の画像1

Getty Imagesより

 安全保障は米国に依存し、経済は中国に依存するなど、米中を二股にかける日本。バイデン政権は民主主義国家対専制国家の戦いと言って、中国の人権問題を強く非難しています。つまり、米中単独の戦いではなく、米国以下、民主主義を標榜する同盟国と共同で、中国、北朝鮮などの専制国家と戦う姿勢を見せています。そして米国は主要7か国(G7)でも、共同で中国への圧力を強めたいとの意向を示しました。

 すでに米国、カナダ、英国、EUは新疆ウイグルでの人権侵害を問題と捉え、中国に制裁を科しています。G7の中で制裁に参加していない国は日本だけとなりました。昨年、米国のシンクタンクから二階俊博幹事長など自民党幹部が親中派としてマークされていますが、彼らの後押しで総理の座を得た菅義偉政権にも、中国に対する姿勢が問われています。

中国依存を強める日本経済

 日本の株価は中国上海株や香港ハンセン指数の動きに大きく左右されます。朝方株価が上昇していても、昼前に中国市場が開き、中国株が下がると、東京市場も後場には下げに転じるケースが頻繁に見られます。この株価の動きが象徴するように、日本経済は中国経済に大きく依存するようになっています。

 財務省の「貿易統計」によると、2020年度の日本の輸出全体に占める中国の割合は22.9%と、米国を引き離して第1位となっています。これに香港、台湾も含めると、全体の35%を超えます。一方、輸入では中国だけで27%を占め、こちらも最大で、これに香港、台湾を加えると31.4%になります。

 帝国データバンクの調査によると、貿易面で中国と関わる日本企業は2万社に上ります。また中国に進出している日本企業は1万3600社にのぼり、合わせると3万社以上が何らかの形で中国経済と関わっています。

 このため、海外の投資家の中には、中国に投資したいけれども規制があって直接中国企業の株を変えない投資家が、その代わりとして、中国経済と深く結びつく日本株を買っている、とも言われます。従って、彼らは米国の中国攻勢が強まり、中国経済に不安を感じるとその分日本株を売ってくる面もあります。

バイデン政権が非難する専制中国の蛮行

 その中国に対して、米国が攻勢を強めています。特に問題視しているのが新疆ウイグル自治区での中国政府による強制労働、ジェノサイド(大量虐殺)といった人権侵害です。

 こうした行為に対して、米国のみならず、カナダ、英国、EUもこれに関わる中国政府の関係者に対し、入国禁止などの制裁措置をとっています。またウイグル族に対して強制労働を強いる企業などにも強い非難を行っています。日本企業の中にも、新疆ウイグルで生産される綿花、綿製品を使っているところがあり、強制労働をさせていないか、チェックが入っています。

 ちなみにバイデン政権はNATO加盟国のトルコがかつてアルメリア人に対してジェノサイドを行ったとして、こちらにも強く非難を行っています。トルコも長年日本と親密な関係にあり、経済面でもトルコと関わる日本企業は少なくありません。

 バイデン政権が問題視しているのは人権問題だけではありません。中国による南シナ海での軍事強化、台湾海峡の侵略問題にも厳しい目を向けています。

 中国共産党の機関紙・人民日報や解放軍報は4月25日、1面で海南島での主要艦艇3隻の就役を伝えました。そして環球時報は「(中国政府が)南シナ海を支配する決意を鮮明にした」と伝えました。

 習近平政権は米国に対して、南シナ海では軍事化を進めることはないと約束しましたが、これを無視してすでに軍事基地を設置し、訓練も行っています。南シナ海に対し「力ずくでの現状変更」を行う流れで中国政府は台湾海峡にも侵攻しています。台湾には米軍基地がないので、いざという時には日本の沖縄米軍基地が最前線となります。

1 2

「アメリカ・中国の間で引き裂かれる日本はどうなる? 綱渡りの外交迫られる菅政権」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。