ーーマスク会食はどの程度効果があるのでしょうか。
岡田:ものを口に入れる時だけマスクを外して、すぐつける。喋るときには絶対にマスクをするというくらい、本気でやれば、効果は結構期待できるのではないかと個人的には思います。大皿を直箸でつつかない、汁を飛ばさない、喋るときにマスクをするなど、徹底して飛沫が飛ばないようにすればいいんです。医療従事者向けの指針をアレンジすると、このような表になります。
感染者 | |||
---|---|---|---|
マスクなし | マスクあり | ||
非感染者 | マスクなし | 高リスク | 中リスク |
マスクあり | 中リスク | 低リスク |
谷口:飲食中にマスクを外して喋った時点でもうマスク会食ではありません。食事だけならまだしも、お酒が入ったら絶対無理ですよね。大声になるし、気が大きくなってマスクを外す人が多くなります。
やはりお酒が進みやすい夜の飲食はリスクが高くなるんです。だから、行政はそういうリスクの高いところから規制していって、感染者を抑制しようとしているんです。それが効かないと、リスクの高くない行動まで抑制しなければいけなくなる。
ーーマスク会食を前提とした食事でも、みんな食べ始めたらマスクを外したままで喋り出します。会食している人に対して「マスクを着けて話して」とはなかなか言えないでしょう。
谷口:ずっと謹慎していたのに「つい断れなくて」「憂さ晴らししたくて」と言って1度だけ会食し、それで感染してしまう方が多くいらっしゃいます。感染するときは1度の会食でも感染するんです。
岡田:会話する時に気にせずマスクを外したり、この状況で会食時に直箸でつつく人は、普段からそういうリスクの高い行動をとっている可能性が高いといわざるを得ません。よく「感染経路不明」といわれますが、そのなかには可能性のある場面が多すぎて不明というケースが結構あるそうです。
ーー「部下の元気な顔が見たい」というのんきな理由で出社を強制する企業があると聞きました。満員電車で感染する可能性は高いのでしょうか。
谷口:マスクを着けて乗っている分にはあまり問題ないのかなと思っています。流行が始まってからこの第4波まで、「確実に満員電車でうつった」という人はいませんでした。やはりどこかでみなさん会食をしていることの方が多いのです。
ーー私の友人はエンタメ業界で仕事をしているので、陽性になったら1か月仕事を失うそうです。だからもうずっと会っていません。そうやって本人は厳格に過ごしていても、感染者数が増えれば舞台は中止になってしまう。理不尽だなと思います。
谷口:今回の緊急事態宣言によって書店や映画館など、その場ではマスクを外さない場所も休業要請の対象になったのは、「どんな行動がリスクなのか」というメッセージが社会全体に浸透しているとは言い難いためではないでしょうか。感染者が増えたら、対象となる事業者には申し訳ありませんが、外出の機会そのものを減らすしかありません。
岡田:ひとつ言えることは、医療従事者の多くは、もうずっと我慢をしているんです。自分の感染を気にしているというよりは、自分がかかって、患者さんにうつしてしまったら困る、という心配が主だと思います。無症状で感染を拡げるケースがあると言われたら尚更です。会食をしてクラスターになってしまった医療従事者はニュースで晒しあげられてしまうので目立つのですが、やはり周囲の人を見渡せばずっと耐えている。旅行もしていないし、会食もしていない。ワクチン効果が100%ではないので、もう少し流行が収まらないと、というのはありますが、周囲へのメッセージ性を考慮して、ワクチンを打っても会食などはまだしないつもりだという人も多いです。十分気をつけていたのに感染してしまった患者さんも多くいらっしゃいますが、好き放題している人たちの診療にも関わっている。それを忘れないで欲しいです。
(取材、構成:和久井香菜子)
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