「ドラゴン桜」でのゲイの描き方が物議 「ステレオタイプの再生産」「雑な描き方するなら出さない方がいい」

文=雪代すみれ
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『ドラゴン桜』公式サイトより

 5月2日にドラマ『ドラゴン桜』(TBS系)の第二話が放送されたが、ゲイの描き方が雑だとしてネット上で物議を醸している。

 『ドラゴン桜』は、2005年に第一弾が放送された。元暴走族で弁護士の桜木建二(阿部寛)が、偏差値36の高校の生徒を、東京大学合格へ導くまでを描いたドラマだ。

 今年4月から放送されている第2シリーズの舞台は、偏差値32の龍海学園。設定は前作の15年後であり、桜木及び、第1シリーズでは桜木の教え子であった水野直美(長澤まさみ)が弁護士になって登場する。

 問題視されているのは第二話の序盤のシーンだ。第一話では、桜木を学園に呼びよせることに反対していた理事長・龍野久美子(江口のりこ)に頭の上がらなかった校長・奥田義明(山崎銀之丞)が、突如賛成派となっていた。

 二話ではその真相が明かされる。不信に感じた龍野は急に意見を変えた理由を探り、<理事会で私を裏切った理由はこれ?>と、奥田が坊主で体格がしっかりした男性と腕を組んで歩いている写真を見せる。

 続けて龍野は<あなた、ゲイ?>と問い、動揺する奥田に対し、<バカね。あなたどの時代を生きてるの? 今はLGBTは当たり前。多様性の時代よ><私たち教育者はそれを子どもたちに教えていく立場でしょう。なのに恥ずかしがって、隠して、おまけに脅されてバカじゃない。堂々としてなさい。堂々と>諭した。

 しかし、奥田は「桜木先生に突かれているのはそこではない」と打ち明ける。それに対し龍野は「まさか、買ったの?」と問い詰める。すると奥田は「お金に困っていると言うので、お小遣い程度を…」と釈明。それを聞いた龍野はテーブルの上にあったカップを払い飛ばし、<この大馬鹿もの!  二度とやめなさい。誤解されるようなことを>と声を荒げた。

 また別の場面では、奥田が桜木に好意を寄せているかのような描写も。こうしたゲイの描き方に違和感を覚えた視聴者は少なくなく、Twitter上では「ゲイの先生の描き方もオネエ描写の上に買春匂わせとかあまりにも軽率」「雑な描き方するなら出さない方がいい気がする」「間違ったステレオタイプの再生産」など、批判的な意見が散見される。

安易に社会問題を取り入れることの問題点

 多様性が尊重されるようになった昨今では、ドラマや映画でLGBTQの登場人物が描かれることは珍しくなくなった。例えば、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)では、津崎平匡(星野源)の上司である沼田頼綱(古田新太)がゲイであった。

 LGBTQである人物を“日常にいる人”として描くことに関しては歓迎する声が多く、『ドラゴン桜』においてもそれ自体は否定されていない。

 しかし既に指摘されているように、校長の言動は「ゲイ=オネエ」というステレオタイプを補強してしまっている。また、買春を想像させる表現や、桜木に好意を寄せる描写は「性に奔放」「惚れやすい」といった偏見がうかがえる。

 奥田は写真に映っていた男性と、それなりに深い間柄であったのだろうから、桜木に好意を寄せるにはプロセスが雑で、ゲイに対する偏見が過ぎるだろう。

 また龍野の「堂々としてなさい」というセリフにも疑問が残る。確かに、LGBTの認知度は高まっており、差別的な言動は批判がされるようになった。しかし、今回の放送の感想にも「校長がゲイ(笑)」など、設定を“ネタ”として受け取った視聴者がいる。また、現実世界でいえばアウティングの問題もある。安心して打ち明けられる社会でないから、奥田は堂々とできないのだろう。

 なお、原作の『ドラゴン桜2』(講談社)と、ドラマの第2シーズンは、設定や舞台が少々異なる。原作では、奥田が賛成に意見を変えたのは、桜木に脅されたからではなく、水野が東大合格したときの写真を見て、心を動かされたからであった。

 「LGBTは当たり前」「多様性の時代」といった前向きな言葉を並べてはいるものの、ステレオタイプ的な描き方や、社会問題としての理解が浅い点が目立った今回の『ドラゴン桜』。社会問題を取り入れるならば、実態を丁寧に調べ、描き方が差別的・偏見的ではないか、注意を払ってほしい。

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