3度目の緊急事態宣言に「3度目の正直」は期待できるか

文=みわよしこ
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 2021年4月末の執筆時は、2020年4月~5月・2021年1月~2月に続き、3回目の緊急事態宣言が実施されている時期にあたった。新型コロナ感染症の抑え込みには、過去2回の緊急事態宣言では成功しなかった。「二度あることは三度ある」だ。メンタルヘルスについても同様なのだろうか。それとも、「三度目の正直」を期待できる余地があるのだろうか。

自粛要請は意味不明のまま

 3回にわたる緊急事態宣言のいずれにおいても最初から対象となってきた東京都を例として、政府による主要な要請の変化を見てみよう。

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 第1回においては、2月末に突然決定された学校の休校が、働く親たちを困惑させた。非正規雇用の学校教職員の中には、3月分の収入を失い、新年度の4月に入っても仕事と収入が途絶えたままだった人々もいる。しかも当時、「子どもは新型コロナウイルスに感染しにくい」とされていた。実際に、子どもの間での感染事例は確認されていなかった。しかし現在、感染の中心となりつつある変異株は、子どもにも感染する。学校での集団感染も珍しくない。

 大規模商業施設、飲食店、酒類を提供する飲食店に対して自粛を要請することの意義も、明瞭ではない。第3回においては、政府は「人の流れを抑制する」としているが、デパートとファミレスと居酒屋では、人の流れ方が全く異なるはずだ。常に不特定多数がすれ違う可能性があるのは、デパートだけである。ファミレスでは、トイレとドリンクバー以外で知らない客どうしが互いに接触することはほぼない。居酒屋は、いったん入ると1時間以上、そこに落ち着いて飲食する場である。新型コロナ感染症の問題がクローズアップされて以来、マスクを外して他の客に話しかけることを禁止している居酒屋も多い。

 カラオケ店に対する要請も謎だ。もともと日中、カラオケ店を訪れる人々の主力は、グループ客ではない。大きな音を出す楽器やクラシックの声楽を練習するために訪れる人々、電源とWiFiを活用して安価なレンタルオフィスとして使用する人々、そして「一人カラオケ」を楽しむ人々である。夜間は、安価な宿泊施設として1人で利用する人々も少なくない。なぜ、感染を拡大しやすいパターンを特定し、そのパターンに対策を講じないのであろうか。

 他にも、さまざまな疑問点や問題がある。たとえば、オフィスワークは一貫してテレワーク化が推奨されているものの、通勤・通学については特段の制約が行われていない。特に第2回以後は、新型コロナ以前の「いつもの通勤電車」に戻ってしまった地域や時間帯も多い。そして、繰り返しになるが、新型コロナは感染力の強い変異株が勢力を増している。通勤電車による感染がないとすれば、むしろ不自然だ。

 知らずに感染者と接近した場合、政府が推奨するスマホアプリ「COCOA」で事後に知ることが可能なはずであるが、2020年9月から2021年1月まで接触を検知できない状態であったことが、後に明らかになった(現在は修正されている)。「行政の委託したPCR検査業者が、検査をせずに陰性という結果を出していた」という事例もあった。そもそも、PCR検査を行う機会自体が、数量ともに不足している。

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