不調の「いきなり! ステーキ」と好調の「やっぱりステーキ」……明暗分かれるファストステーキ業界

文=A4studio
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「いきなり! ステーキ」公式サイトより

 ファストステーキ業界の世界で一世を風靡した『いきなり!ステーキ』大きく転換していることをご存じの方は多いことであろう。

 今年2月21日に『いきなり!ステーキ』を展開している株式会社ペッパーフードサービスが発表した決算短信によれば、2020年12月期(2020年1月1日~12月31日)の売上高は310億8500万円で前年同期比53.5%減となっており、純利益でも39億5500万円の赤字を計上している。

 その一方で、2015年沖縄県に1号店を出店し、以来全国に60店舗以上を展開し、今年の上半期だけでも10店舗近く開店・開店予定の「やっぱりステーキ」というチェーンもある(経営/株式会社ディーズプランニング)。「やっぱりステーキ」は現在勢力を増しているファストステーキの象徴と言ってよいだろう。

 一時は栄華を極めた『いきなり!ステーキ』はなぜ凋落してしまったのか。『やっぱりステーキ』など新興のチェーン店が台頭している中でファストステーキ業界の勢力図はどのように変化していくのか。フードサービス業界記者歴35年以上のフードサービス・ジャーナリストの千葉哲幸氏に話を伺った。

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千葉 哲幸(ちば・てつゆき)/フードサービス・ジャーナリスト
フードフォーラム代表。外食産業の専門誌である『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(当時、商業界)両方の編集長を歴任するなど、三十数年間フードサービス業界の記者として活動。2014年7月に独立し、取材・執筆や書籍のプロデュース、セミナー活動を展開している。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社)がある。

“ファストステーキ”を生み出した「いきなり!ステーキ」の功績

 そもそもファストステーキ業界とは、『いきなり!ステーキ』の成長とともに育成されていったと千葉氏は語る。

「『いきなり!ステーキ』は2013年12月に銀座四丁目に第1号店がオープンしたのですが、その背景には俺の株式会社が運営する『俺の~』シリーズのブームがありました。2011年9月にオープンした『俺のイタリアン』は、星付きレストランの料理を半額で提供することが特徴だったのですが、高い原価率を補って利益を出すために当時取り入れていた方法が“立ち食い”形式でした。

 立ち食いにすることで、狭いスペースで営業することが可能となり店の回転率が上がります。このビジネスモデルと、かねてからペッパーフードサービスが展開していた『炭焼ステーキくに』の量り売りスタイルを組み合わせて生まれたのが『いきなり!ステーキ』です。

 その後、住宅街やロードサイドに出店していく過程で、一般的なステーキ店では5000円前後のステーキが2000円程度円で食べられるという客単価の低さや、提供時間の早さが話題となり、“ファストステーキ”という概念が生まれました。ファストステーキという言葉と業態を作ったという意味で、『いきなり!ステーキ』の外食産業への貢献度は非常に高いですね」(千葉氏)

 まさしくファストステーキ業界のパイオニアである『いきなり!ステーキ』だが、2018年4月から既存店売上が前年実績を下回るようになり、2019年8月からは全店売上も前年割れを記録するようになった。『いきなり!ステーキ』が衰退し始めた要因は何だったのだろうか。

「端的に言えば、店が飽和状態となったということでしょう。開店した当初は物珍しさで食べられたとしても、外食の選択肢は数多く存在しているので、日常的にステーキを食べるという慣習はありません。それにもかかわらず、ハイペースで出店していったため、需給のバランスが崩れてしまいました。

 さらに、『いきなり!ステーキ』は値上げして客単価を上昇させていきました。それによって当初のお手軽な店から利用する敷居が高い店となっていきました」(千葉氏)

老若男女を問わない魅力で勢力を伸ばし続ける『やっぱりステーキ』

 『いきなり!ステーキ』の一方で頭角を現してきているファストステーキチェーンのなかでも、特に好調とされるのが沖縄発祥の『やっぱりステーキ』。その特徴は年齢・性別を問わずにアプローチできる商品・サービスにあると千葉氏は語る。

「沖縄では飲み会などの締めにステーキを食べる文化があり、そういった場面で食べるステーキには脂身が少なく柔らかい赤身肉が使われています。『やっぱりステーキ』でも肉質の柔らかさが特徴的なミスジという部位がステーキに使われているので、中高年の方々でも食べやすい。

 もうひとつの特徴が価格とサービスで、『やっぱりステーキ』の看板メニューは1000円で食べ放題のスープ、サラダ、ご飯がセットになっています。ご飯が食べ放題というのは若い男性にとっては代えがたい魅力。そういった肉質やサービスの特徴が評価されて、老若男女のマーケットに浸透していっていると考えられます。

 また、『やっぱりステーキ』は『いきなり!ステーキ』と真逆で、グラム数を減らしたりハンバーグを提供して原価バランスを守るなどして、1000円という値段を維持し続けています。この経営スタンスの違いが、両者の明暗を分けた要因だと思います」(千葉氏)

 今後も『やっぱりステーキ』などの後に続いて、さまざまなファストステーキ店が登場するのではないかとも考えられるが、千葉氏によればこれから続々と新たなチェーン店が出てくる可能性は低いという。

「『いきなり!ステーキ』が生み出したファストステーキという業態自体は廃れることはありませんが、市場が縮小していくことは充分に考えられます。また、『やっぱりステーキ』のような低価格でご飯食べ放題な業態はしばらく流行するでしょうが、人口が減少して若者が減っていることや、ヴィーガンというライフスタイルが増えていることを踏まえると、これからこの市場が右肩上がりに増えていくことは考えにくいでしょう。

 外食産業の歴史は『俺のイタリアン』のビジネスモデルを取り入れて『いきなり!ステーキ』が生まれたように、他店の商売の仕組みを学び、食のトレンドや消費者のニーズを捉えて、新たな業態が開発されるということを繰り返しています。ですから、今後はまた新しい業態が生まれ、ますます多様化していくでしょう」(千葉氏)

 ポスト・ファストステーキチェーンとなりうる業種・業態はたくさん存在していることであろう。それがどのようなタイミングで顕在化していくのか、大いに気になるところだ。

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