「キッチンカー」がコロナ禍で人気を集めるワケ ハウス食品もプラットフォーム事業参入

文=A4studio
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GettyImagesより

 新型コロナウイルス感染症でさまざまな業界が損害を被るなか、特に深刻な影響が出ていると言われているのが外食業界だ。一般社団法人日本フードサービス協会が今年1月25日に発表した外食産業市場動向調査の結果によると、全体の売上高は前年比84.9%と大きく落ち込み、店舗数も前年比98.2%となっている。

 だが、外食産業に逆風が吹いている現状で、にわかにキッチンカー(フードトラック)の注目度が高まっていることをご存知だろうか。今年2月には株式会社ペッパーフードサービスが「いきなりステーキキッチンカー」を出店し、3月にはハウス食品グループ本社株式会社が、キッチンカープラットフォーム「街角ステージweldi(ウェルディ)」を開始した。

 なぜキッチンカー業界は大手の外食チェーンや食品メーカーが参入するほどに注目されているのか。フードアナリストの重盛高雄氏に、キッチンカーが存在感を増した要因と業界が持つ今後の可能性について伺った。

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重盛 高雄(しげもり・たかお)/フードアナリスト
ファストフード、外食産業に精通しているフードアナリスト。テレビ、ラジオ、雑誌などさまざまなメディアに出演し、2017年には英国の「The Economist」誌で日本のファストフードについてインタビューを受けた。フードアナリスト・プロモーション株式会社

日陰の存在から一躍脚光を浴びたキッチンカーが持つ魅力

 そもそも、コロナ禍以前のキッチンカー業界はどのような状況にあったのだろうか。

「キッチンカーのように料理を作って提供するビジネスモデルが拡大していったのはつい最近で、それまでは移動スーパーの『とくし丸』に代表されるような移動販売車が主流でした。コロナ禍においてはキッチンカーだけでなく、移動販売車の需要も伸びています。

 コロナ禍以前のキッチンカーはイベントや町の防災訓練、ビジネス街から少し離れた駐車場などで見かけることが多かったですね。ビジネス街では弁当をリアカーなどで運んで販売するスタイルに押されていて、今ほどは出店していませんでした」(重盛氏)

 そんなキッチンカーがコロナ禍で支持を得た理由は、キッチンカーが持つふたつの魅力にあると重盛氏は語る。

「コロナ禍で支持を得た要因のひとつとして、デリバリーとテイクアウトのいいとこ取りをしていることが挙げられるでしょう。デリバリーの場合は待つのに時間がかかり、テイクアウトの場合は受け取りと持ち帰りの手間がかかるという難点がありますが、キッチンカーの場合だと家や職場の近くで購入し、出来立ての料理を持ち帰ることができるのです。

 また、キッチンカーにはメニューの独自性が高いという特徴もあります。キッチンカーではどこででも食べられるような当たり前のメニューだと流行らないので、少しアレンジを加えたような、地域性のある珍しい商品がラインナップされていることが多いです。その点が、珍しいものを食べたいというニーズにマッチしたのではないでしょうか」(重盛氏)

 また、ハウス食品グループ本社が手がける『街角ステージweldi』は、これまでのキッチンカープラットフォームとはひと味違ったアプローチをしているのだという。

「従来のキッチンカープラットフォームは、オーナー自身が作りたいものを販売するものよりも、フランチャイズとして決まった商材を販売するところが多かったです。プラットフォーム事業以外にも、キッチンカーのリースや開業支援によってビジネス展開を支える企業がありました。

 『街角ステージweldi』はオーナーが販売する商材は自由で、料金設定がシンプルということが特徴的です。1日にかかる費用が5000円と売上の25%なので固定費が算出しやすく、未経験の方でも参入しやすくなっています」(重盛氏)

今が勝負の時? 定着していく可能性を秘めるキッチンカー

 キッチンカーという業態の最大のメリットは固定の店舗を持たないことにあるが、それゆえのデメリットが業界全体の課題点にも通じているようだ。

「店を持つとなると固定費の問題だけでなく、宣伝やライバル店との差別化など集客のための施策を打つ必要があります。一方で、キッチンカーであれば固定費や初期費用が店舗と比較すると抑えられますし、利用客が見込める場所やイベントに出店するよう自ら動くことができます。敷居が低いので、飲食業に携わったことのない異業種の方が始めるケースも多いですね。

 ただ、店舗を持たないため固定客がつきにくい、店舗と比較して衛生面に不安があるという欠点もあります。固定の店であれば、店舗に行けば食べたいものが食べられるので固定客が生まれやすいのですが、キッチンカーの場合は常に同じ場所で営業しているとは限らないので、固定客が生まれにくくなっています。

 また、キッチンカーは食品を手渡す場所とお金を触る場所が同じであることや、水回りなど、店舗ほど衛生面が充実していません。キッチンカーの満足度は充分高いと思うので、その点をどうクリアして消費者に安心感を与えるのかが、発展していくうえでの一番の課題と言えるでしょう」(重盛氏)

 重盛氏によれば、キッチンカー業界は今後さらに成長していく余地があるという。

「総務省統計局が発表している家計調査の、直近10年の二人以上の世帯の品目分類別支出金額を見ると、2020年は外食支出の数字が大きく落ちていますが、それ以前は外食支出と消費支出の合計はほぼ並行して推移していました。日本フードサービス協会の外食産業市場動向調査によれば、客単価の数字は2020年でも大きく減っていないので、外食支出こそ減少しているものの消費者の外食に対する意欲は旺盛であることが伺えます。

 そういった意味では、キッチンカーは外食の受け皿として来店機会の増加に役立つ業態です。コロナ禍の収束後も食のインフラとして残る可能性は高いと見ています。

 ただ、定着するとなると新たに参入する人が増加し、競争が激しくなってくると思います。そうなると新規性・希少性だけでは消費者に受け入れられなくなるので、そのキッチンカーに行かないと食べられない味や、値段とは違うプラスアルファの価値を作ることが、生き残るために必要になるのではないでしょうか」(重盛氏)

 今はまだ飲食業界のなかではニッチな業態とされているキッチンカーが、コロナ禍でどこまでその存在感を増していくのか注目したいところだ。

(文=佐久間翔大/A4studio)

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