
GettyImagesより
「直感のままに生きる」「自分を生きる」をモットーに、芸能人のようなキラキラライフを発信しまくるスピリチュアル商人HAPPY氏。スピリチュアルな世界観の自己啓発法「引き寄せの法則」を自己流にアレンジして成りあがったブロガーですが、現在の肩書は瞑想アイドル……でしたっけ? スピ教祖様たちってば、SNSのアカウント名レベルに肩書や名前をコロコロ変えるので、今は第何形態だっけ? と脳内検索が追いつきません。
HAPPY氏を説明するうえで欠かせないのは、壱岐島の縄文祭でしょうか。長崎県壱岐市の観光大使に就任中、ド派手なスピイベントをぶち上げたものの、島民や環境に配慮のない運営が大ひんしゅくを買い、その後「公序良俗に反する」という理由で異例の大使解雇となった出来事です。BSスカパーの番組で田村淳にコメントされたのと同様に、市も「受け止めきれない!」と判断したのでしょう。しかしその後も「シンデレラプロジェクト」をはじめとする大規模なイベントを開催しつづけ、衰退しつつある子宮系スピリチュアルの信者を吸収してシェアを広げている感もあり、そこそこの勢いをキープしているのは純粋にすごい。有能プロデューサーが、背後霊のように張り付いているのかな。
さてこうした謎物件に遭遇するたび、いつも頭をよぎるのは「一体どんな人たちがこの教祖様を支持しているのだろう」という疑問です。元・子宮委員長(その後2度改名)の場合は、メロドラマ的世界が好物な人たちでしょうか。「設定変更」なる教義を武器に布ナプキンや文具を売りさばく藤本さきこ氏の顧客は間違いなく、ブランド大好きセレブ嗜好の女性たち。少しジャンルが違いますが、冷え取りの女王・服部みれい氏ファンなら、ちょっとパンキッシュな反骨精神も備えた、意識高い自然派? そしてHAPPY氏ファンは……よく言えば「純粋」、悪く言えば「夢みがち」な印象。スピリチュアルを嗜む時点で夢見がち傾向なのは当然っちゃ当然でしょうが、彼女が「夢を現実にしよう!」(もちろん有料)と提供する内容が、「ドレスを着てスポットライトを浴びる」だの「アイドル活動をする」だの、ものすごく子どもじみているので。
同人漫画に描かれる教祖像
それは、HAPPY氏の同人誌にも現れていました。氏が4年間つづけたブログを閉鎖後(今は新たなブログが開設されている)、立ち上げたクローズコミュニティ「HTLphilosophy」のメンバーたちが作ったコミック誌があるのです。誌名は『ソース』、サブタイトルは「ヴォルテックコミックス」。※ソースは「源」、ヴォルテックは「エネルギーの渦」といったニュアンスの言葉で、どちらも引き寄せの法則を語るうえで欠かせない概念。
インフルエンサーHAPPYちゃんが立ち上げた大人気クローズコミュニティ【HTLphilosophy】。そのHTL初の漫画雑誌ができました。漫画を読むこと、描くことが大好きなHTLメンバーが、自己変革ストーリーを漫画で表現! HTLの知恵を織り交ぜたユーモアたっぷりのコーナーも満載です。漫画を読みながらHTLのエッセンスを楽しく体感できちゃいますよ。
同誌には幅広い作風&クオリティの漫画が詰め込まれ、同人誌としてはそこそこのボリュームです。その中で目玉となるのは、表紙のイラストも手掛けているプロ作家の作品「山田二葉物語」でしょう。ノンフィクションとして、HAPPY氏がライブストリーミングサービス「17LIVE(イチナナ)」でかました快進撃が描かれています。スピ界ではすっかり有名人であるHAPPYちゃんが、「焼売アイドル山田二葉」としてアウェイなフィールドでゼロからチャレンジ!? 漫画によると猫耳装着のぶりっこ路線で「あなたを包んでグリーンピース! ハートのセイロで蒸しちゃうぞ♡」という決め台詞をくり出すようです。新たなフィールドにチャレンジと言えど、スピイベント「シンデレラプロジェクト」でさく裂させていた、アイドル願望路線と変わらんやんけ…! とずっこけました。
物語はこんな感じです。
・ライブ配信当日、新人としての初挑戦にガクブルなHAPPYちゃん。
・オロオロしながら初配信をスタートさせると、さっそくHAPPYちゃんの存在を知る人が訪問(「不思議なご縁」風に描かれるのが、ポイントですね)
・しかし数日つづけるもなかなか結果を出せず、落ちこむHAPPYちゃん……。で・も! 大切なことに気づくのです。「私がワクワクしていないのにエネルギーが乗るわけない!」。(単に信者への告知が足りなかったのでは)
・それからは初心を忘れず自分の内面と語りあい、ときにトラブルがあっても真摯に対応し、そして自分の望みを忘れずに。すると流れが好転し、新人演者たちがリスナーからの課金ポイントを競う「進撃イベント」で次々とミラクルが!(どうでもいいが、えげつないイベントですのう)。
・疾走感あふれる感動的な展開はそのままつづき、最終的に優勝はできなかったけど気分は最高。 楽しかった! やっぱり大切なのはエネルギーだよね!
感動のフィナーレ! ……なのか!? コレは。この作品を読んでから、実際の動画や画像などをあさってみると、漫画とリアルのギャップに「信者フィルター」の存在を感じます。漫画とリアルを比べること自体が間違っているのでしょうが、それでもあえてツッコミたい。漫画では、キュートな女の子がワクワクはじけながら無邪気に配信し、その姿にたくさんの人からワ~ッと注目される。現実の画像は、平凡な(失礼)女性がなじみ客に向け、ちょっと惰性も感じるようなトークを繰り広げている。しかも、おそらく「ギフト」という投げ銭を送りまくっている大半が、信者か関係者なのでは?(漫画にも描かれていますが、ビジネス彼氏のアイキンも、かなりの高額ギフトをつっこんでますし~)。視聴者からの投げ銭で懐が潤う、スピビジネスのPRになる、という泥臭い現実面はスルーして「エネルギーが!」「奇跡が!」しかもHAPPYちゃんはあくまで楽しいからやっているだけ! という描き方。全く、やさしいですなあ。
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