ぽっちゃり女性のバイブル『ラ・ファーファ』が支持される理由とは? 「隠す」のではなく「好きな服を自由に着る」という提案

文=小澤佐知子
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『la farfa(ラ・ファーファ)』(C)文友舎

 多くの女性は、いわゆる「ルッキズム(見ため至上主義)」の圧力を感じながら生きています。体型や容姿を気にする社会に、窮屈さを感じている女性は少なくありません。しかし、そんな流れを大きく変える「ボディポジティブ」が、世界的なムーブメントとなっています。

 “痩せている=美しい”という、これまでの固定化された見方ではなく、ありのままの体型や外見を愛して楽しむという考え方が今、日本でも広がりつつあります。

 このコンセプトのもとに2013年、日本初のプラスサイズ専門のファッション誌『la farfa(ラ・ファーファ)』(ぶんか社※)が創刊されました。現在、多くの女性に支持されています

※2019年7月から、ぶんか社グループ文友舎が発行。

 ぽちゃティブ、マシュマロ女子、プラスサイズ女子……など、昨今のトレンドワードを8年前から牽引する『ラ・ファーファ』。そんな時代を先取りした雑誌が誕生した経緯や、女性が抱く見た目に関する意識の変化について、編集部の高井淳さんにインタビューを敢行。ボディポジティブに止まらず、女性の未来を前向きに切り開く、そんなヒントも探ってみました。

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高井淳・文友舎第1編集部広告担当
2006年ぶんか社に入社。漫画雑誌の編集者を経て、2013年『ラ・ファーファ』の担当編集者として創刊に携わる。現在、ぶんか社グループの文友舎で『ラ・ファーファ』の広告担当として、さまざまな企業と協力してプラスサイズ業界を盛り上げる企画を実施。

「モデル体型の着こなしが現実的な参考になるのか?」という疑問

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『la farfa』(C)文友舎

――高井さんは『ラ・ファーファ』に創刊当初から携わっていらっしゃいますが、“プラスサイズ女子”に向けた雑誌が誕生した経緯を教えてください。

高井さん:当時の女性編集長は体型がふくよかだったことから、自分に合う洋服を扱うメディアがないことにずっとモヤモヤ感を抱いていました。そんなとき、「通販では大きめサイズの洋服が売れているらしい」との情報を耳にして、「だったらプラスサイズ女子をターゲットにしたファッション誌を作ってみよう」となりました。

――日本のファッション誌は、痩せたモデルがトレンドのファッションを着こなすのが一般的ですよね。

高井さん:スリムな人やレギュラーサイズの人なら、モデルが着たファッションを自分に落とし込んでイメージできるのかもしれません。しかし、プラスサイズの人の場合「従来のファッション誌が参考になるのか?」と考えたら、プラスサイズ専門のファッション誌に挑戦する価値が十分にあると思いました。

『ラ・ファーファ』にマッチするモデルを探す

――2013年にムック本としてスタートした『ラ・ファーファ』は、翌年に雑誌として創刊されました。その反響や手応えはいかがでしたか?

高井さん:‟ぽちゃティブ“や‟マシュマロ女子”という造語が注目され、イベントに渡辺直美さんを呼ぶなど、多くのメディアに取り上げられました。渡辺直美さんが創刊号の表紙も飾り、話題を呼んだのは確かです。

 ふくよかな体型を理由にオシャレやファッションを楽しむことを諦めていた女性は、想像以上に多かった。読者から「衝撃を受けた」という感想をたくさんいただきました。

――その衝撃とは、具体的にどういったことでしょうか?

高井さん:一般的なファッション誌をリアルに感じられない女性にとって、衣食住の‟衣”が憧れでしかなかった。ところが、誌面では、自分たちと同じ体型のモデルが笑顔でイキイキとポーズをとっている。「私もオシャレを楽しんでいいんだ!」と、喜んでくれたんです。

――リアル感を追求するにあたり、特に意識していることは何ですか?

高井さん:まずは、モデルです。当時、モデル事務所に『ラ・ファーファ』にマッチするようなモデルは皆無でした。そのため、イベント会場でスカウトするなど、編集部でモデルを探していました。

 ただし、誌面では身長、体重、スリーサイズを掲載すると決めていたため、モデル探しは難航しました。「身長160cm、体重80kgの人が着るとこんなイメージなんだ」という、リアルな着用感を伝えることにこだわっていたからです。

「隠す」のではなく「好きな服を自由に着る」という提案

――その他、読者にオシャレを楽しんでもらうために、どのような点にこだわりを持って誌面を作っていらっしゃいますか?

高井さん:これまで、細身ではない女性は「黒やグレーで引き締まってみせる」「レギンスで足を隠す」など、“痩せているように見せる”ことがセオリーとして浸透していました。しかし、『ラ・ファーファ』では、隠すのではなく“出す”ことを試みており、いわゆる「着やせ」というワードは極力使わないよう心がけています。

――「美しい=痩せていること」という風潮や概念に、一石を投じているのでしょうか?

高井さん:そうですね。雑誌スタート時に心がけたのは、ぽっちゃり女子は「痩せて見られたいはず」「気になる部分は隠したいなはず」という先入観や固定観念を外すことでした。私の中でもそういった先入観が知らず知らずの間に染みついており、まずは作り手自身が意識改革をすることから始めました。読者にはありのままの自分の身体でファッションを楽しんでもらいたいです。

 また、『ラ・ファーファ』ではさまざまなテイストのファッションを紹介しています。モード、カジュアル、フェミニン……テイストに縛られず、プラスサイズに特化した情報を提供していくことで、読者のファッションの選択肢を広げることが『ラ・ファーファ』の役割のひとつだと考えます。

――多様性が認められる時代へと変化しつつある現代でも、「痩せていなければ美しくない」という社会からの圧力は根強く、体型に悩む女性は多くいます。そんな女性に贈るメッセージはありますか?

高井さん:自分だけの魅力に目を向けて、前向きに楽しく生きている人は美しい。世の中が作った「美の正解」に流される必要はないと思います。『ラ・ファーファ』はこれからも、女性がありのままの体型でファッションを楽しめるように応援していきます。

(インタビュー・文=小澤佐知子)

※『la farfa』モデルのNaoさんのインタビューはこちら

●『la farfa』(ラ・ファーファ)
「日本初の“ぽっちゃり女子”のための本格ファッション誌」をコンセプトに、2013年3月に創刊。雑誌名はイタリア語で「蝶」を意味する「farfalla(ファルファッラ)」に由来。サナギが華やかな蝶になって羽ばたくように読者にも綺麗に変身してほしいという願いが込められている。奇数月20日発売。

公式サイト『@la farfa』: https://lafarfa.jp/
公式Twitter :@la_farfa_info
公式Instagram :lafarfa.official

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