若い女性層を中心に、細書きのムーブメントが起こっています。
2020年に発売されたパイロットコーポレーションの「0.3ミリ激細油性ボールペン」アクロボールT03は、女性の使用を意識したカラーリングでした。
そのパイロットから、新しい激細ボールペンのラインナップが出ました。
単色ノックの新ボディ、「アクロ500」。
それと、4色ボールペン+シャープペンシルという複合筆記具のシリーズである「ドクターグリップ4+1」です。
単色ノックのアクロ500は、一般的なノック式ボールペンより10ミリほど短いショートサイズです。大きなくびれなどない直線的なボディですが、ただそこに硬さや無骨さは微塵もありません。先端と後端がわずかにカーブして細くなっているデザインで、手に取るとその緩やかなラインに優しさや柔らかさが隠されていることが判ります。
手帳用と呼ばれる軸径の細い製品群とは異なり、握る部分は充分な太さを確保していますので、書きにくいということは一切ありません。
内蔵されているインクは、低粘度油性アクロインキの黒のみです。先端のボール径が異なり、激細0.3ミリと極細0.5ミリの2つがラインナップされています。
0.3ミリでも濃く、黒々とした筆記線を書くことができます。実際に書いてみると判りますが、0.3ミリの筆記線は細いですが黒くてはっきりと見えます。もちろんボール径が異なるので筆記線じたいの幅は違うのですが、0.3ミリの筆記線は0.5ミリの視認性に決して劣ることはありません。
ただし書き心地は異なります。0.3ミリはかりかりとした感触が伝わってきます。0.5ミリは、するすると書ける最高の滑りを見せます。もともとアクロボールの0.5ミリは、油性ボールペン使いの中では定評のある製品です。0.3ミリほど細くなくていい、という方に0.5ミリという選択肢があることは大変喜ばしいことです。
ボディカラーは0.3ミリと0.5ミリで一部異なります。0.3ミリではブラックマット、シルキーラベンダー、シルキーグリーン、シルキーピンクの4色展開です。0.5ミリではブラックマットとシルキーピンクは共通ですが、あとはネイビーとシルキーベージュとなります。シルキーと呼ばれる柔らかな色合いは昨今の流行でもあり、若い女性に特に人気のあるカラーリングですよね。
クリップは金属製で、クリップを支える台座の上部に穴が空いています。これはストラップホールで、チャームを取りつけたり、あるいは落下防止のためにチェーンやケーブルを巻くためのものです。この穴があることで、アクロ500はデスク上での使用だけでなく、よりアクティブな使用を求められている現場への持込を想定されているのだと判ります。
ボールペンを常用される方の意見で、「クリップがもっと丈夫だったら」とか「落下防止のストラップをつけることができたら」という話をよく耳にします。過去、そういった装備を持ったボールペンはたいてい無骨でかわいくない「働く男の道具」でした。アクロ500は現場でボールペンを使用する女性の声を反映した、かわいくて実用的な、現代の世相にマッチしたボールペンであると言えるでしょう。
一方、ドクターグリップ4+1は、2007年に発売されてからパイロットの複合筆記具の顔として君臨してきたベストセラー製品です。
油性ボールペン4色(黒、赤、青、緑)とシャープユニットというフル装備、太いラバーグリップを持ち、パイロット製品の代名詞のひとつである「握りを科学した筆記具」ドクターグリップの名を継ぐ本製品は、発売以降外観の大きな変更はないものの、いくつかのバリエーションを生み出して来ました。
今回のドクターグリップ4+1の特徴は、油性ボールペン4色に0.3ミリリフィルを装填し、さらにシャープユニットも0.3ミリに揃えてきた点です。
2021年3月の時点で、0.3ミリの油性ボールペンが多色(複合)筆記具となった例は、まだ本製品しかありません。
手帳に最適な激細ボールペンですが、単色を複数持つことは利便性を考慮すると現実的ではありません。また現状では、緑のインクを内蔵したアクロボールの0.3ミリ製品が単色では存在しません。色分けして記入する際に緑が欠かせないというユーザーが0.3ミリで細かく書きたいと願う場合、現時点ではドクターグリップ4+1のこの0.3ミリ搭載製品を購入するしかないのです。
書き心地はまさしくかりかり、のひとことです。0.5ミリや0.7ミリでは味わうことのできない、一文字ひともじを刻んでいくかのような感覚です。わたしは滑りすぎる油性ボールペンを苦手としているので、このかりかり感はむしろ文字を書くためのコントロールに有効なのではないかと感じています。
0.3ミリリフィルを装填したドクターグリップ4+1は5色展開で、アクロ500同様に淡い色使いとなっています。写真のものはブルーグレーですが、他にペールブルー、ペールオレンジ、ペールコーラルピンク、ペールラベンダーがあります。
今回は、細書きに特化した2製品をご紹介しました。黒単色しか使用せず、常に手帳などと持ち歩きたい、またストラップで落下や紛失を防ぎたいという方にはアクロ500を、そして0.3ミリ全部盛りで、4色ボールペン──特に緑を使う機会が多く、手帳など細かな罫線に色分けして記入したい方には、ドクターグリップ4+1の0.3ミリ搭載製品をお薦めします。
(他故壁氏)
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