人種・国籍を越えて人々が共存していくために必要なものとは?/サヘル・ローズインタビュー

文=小野寺系
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ーー外国籍のヘルパーという存在についてはどのような印象を持たれていますか。

 言葉の壁もありますし、介護される方によっては不安を覚える場合もあるじゃないですか。「家の物を持って行かれるかもしれない」と警戒する高齢者の方もいらっしゃると聞きます。でも、そんな外国の人に対する固定観念をぶつけられたら、当然本人は傷つくわけです。

 これからの日本社会は、外国の人たちに頼らざるを得ないわけですよね。だから、マリアムという本作の登場人物は、ある意味で日本が直面する問題を映し出す存在だと思っています。内田監督は、もしかしたら役にそこまでの意味を持たせようとは思っていなかったかもしれませんが、私としては、自分がその存在になり切ることで、差別や偏見に関する問題を感じさせることができないかなと思って演じていました。

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ーーサヘルさん自身も、役に重なるような経験がありましたか。

 ありましたよ。やはり疎外感を感じるときはありました。本作でマリアムが出会い頭にお母さんから「何なのこの外国人」って言われてしまうように、言葉で圧力をかけられたこともあります。

 他の国に来て生きるというのは、それだけでまず居場所がないってことなんです。異国の地に向かう人たちって、それぞれに異なった物語を持っています。マリアムの背景は、映画の中では描かれないし、設定も作り込まれてはいないんですけど、私の中にはあるんです。それは映画を観ている方たちには伝わらないんですけど、本作が描く女性たちの孤独というテーマと、私の中のマリアムの像は重なるんです。

 「日本に来ている外国人」という先入観で人を見るのでなく、どんな背景を持って、どんな事情を抱えているのか、その人個人にもっとみんなが興味を持っていただきたいんです。いまは無関心な社会ですから、いろんな問題が起きたとき、社会全体が関心を持ってしっかりと怒らないから、良くない方向にいくことがあるわけでしょう。だからできるだけみんなが人や物事に関心を持って、向き合う社会にしないと。

 外国人だけでなく、価値観の違う人とも共存していかなければならないわけです。向き合わないことで共存が難しいのなら、その意識を少しずつでも自分が変える努力をしなければと思うんです。大勢の人の意識をすぐに変えることはできないけれども、『女たち』を観た人の中でひとりでも意識を変えてくれたら良いなって。映画って、そういう力を持っているって、信じているんです。

(取材・構成:小野寺系、撮影:細谷聡)

『女たち』
6月1日(火)TOHOシネマズシャンテ他全国公開!!
配給:シネメディア、チームオクヤマ

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