
GettyImagesより
2018年にお茶の水女子大学がトランス女性の受け入れを認めた直後から、SNS上を中心にトランスジェンダーに対する誹謗中傷が続いている。「性犯罪者と区別がつかないからトランスジェンダーを女性空間から追い出すべきだ」といった主張があちこちに広まり、さらにはトランスジェンダー当事者の外見を嘲笑したり、大量のいやがらせリプライを浴びせたりといった光景がこの何年も続いている。
このような現象は日本に限ったことではなく、英語圏や韓国でも同様のことが起きている。2020年の冬、韓国でひとりの若者が淑明女子大学の合格通知を受け取った。彼女の夢は弁護士になり、さまざまな社会的弱者を救うことだった。しかし大学で学びたいという彼女の願いはかなわなかった。トランスジェンダーである彼女に対して「女性のための空間に入ってくるな」「トランスジェンダー女性が自分のことを女性だと主張する根拠は飛躍」など苛烈なバッシングが行われたことが原因だ。
21もの団体が「女性の権利を脅かす性別変更に反対する」と声明を出し、彼女は入学を断念した。彼女を歓迎する女性たちもインターネットに書き込んだが、圧倒的な悪口を前に、彼女の心はボロボロになっていた。
「大学に行こうとする当たり前の目標、その中の夢さえも誰かに怪しまれる対象となった」
彼女は手記にこう綴った。
「すべての人はマイノリティの側面とマジョリティの側面を多層的に積み重ね、自らのアイデンティティを確立していく。自らを常に強者と考える人は、自らが弱者でありうるということを受け入れられない。反対に、自らを常に弱者と考える人は、自らがある面において強者となりうることを忘れ、他の弱者を無視するものだ。このような考えではヘイトが再生産されるばかりだ」
同時期、韓国では性別適合手術を受けた後に除隊処分とされたピョン・ヒス下士が必死に声をあげていた。淑明女子大への入学を諦めた彼女にピョンは手紙を送った。
「私たち皆、お互い頑張りましょう。死なないようにしましょう。必ず生き残ってこの社会が変わるのを一緒に見たいです」
しかし、その一年後にピョンは遺体となって発見された。
このような韓国での悲劇は、日本でも起きかねない。
〔トランスジェンダーと防犯について関心のある方は、仲岡しゅん弁護士の寄稿を参照ください)。
1 2