人口減少社会における公共交通機関のバリアフリーはどうあるべきか? ユニバーサルデザインの専門家に訊いた

文=和久井香菜子
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――ハードの部分はだいぶ改善されたのですね。ではソフト面ではどうでしょうか。

 JRのサポートは、正直言ってもう少し頑張ってほしい部分もありますね。例えば東急電鉄は、全ての駅にセンサー付固定ホーム柵が設置され、視覚障害者や酔った人の転落が激減しています。

 この柵のドアには位置を示すQRコードが個々に付いていて、車いすユーザーや視覚障害者などを介助した駅員さんが携帯でその情報を送ると、降車駅の駅員さんが携帯で位置情報を受け取り、当事者の方の到着時間に合わせてそのドアまで迎えに来てくれるのです。このようなサポートがJRにも、そして全国の私鉄にも導入されたら良いと思います。

 東急のサポート体制をもう少し言うと、サービス介助士といって、車いすの方や視覚障害者をサポートするための講習を駅員全員が受けています。このような全体的な教育があることも、サポートの充実度に関わってきます。

 また個人的にJR東海に対して思うのが、ジパング倶楽部や外国人観光客が購入できるジャパン・レール・パスで、「のぞみ」や「みずほ」に乗車できない仕組みです。これは廃止してほしいですね。

 障害のある人も自治体によってはジパング料金で乗れるのですが、それでは「ひかり」と「さくら」にしか乗ることができない。「ひかり」は1時間に2本、「さくら」は1時間に1本の運行なので、移動に膨大な時間がかかります。

 例えば、京都から広島まで行こうと思うと、JR東海とJR西日本がのぞみ利用を許さないため、大きな荷物を持つ海外からの旅行者や、高齢者・障害者は、新大阪で「ひかり」から「さくら」に乗り換えないといけない。この乗換は車いすだとかなり大変です。

 しかしJR東日本であれば、全ての新幹線に乗ることができます。JRによって、乗れるものと乗れないものが混在するのです。そもそも、海外では旅行者向けのユーレイルパスなどで、乗れない電車が存在するということ自体、ありえない。そんな制限があるのは日本だけです。目の前を5分おきに出ている新幹線に乗れず、1時間も待たないといけないのは悲しいですよね。

――無人駅ではどのような問題が起こっているのでしょうか。

 去年、大分市で駅が無人化されたことで利用が制限され、移動の自由が侵害されたとして訴訟が起きました。

 現状、日本には1日5~6人しか乗り降りしない無人駅はたくさんあります。地方は人口が減り、モータリゼーションが進んで、通勤者も学生も車でしか移動しなくなっているんです。

 そのような過疎地で問題なのは、利用者が自分の乗りたい時間に電車に乗れるサポートがなくなることです。日本の駅の約半分が無人駅なので、町役場の人やNPO、ボランティア団体の人たちが予約した時間に駅にやってきて乗せてくれるようなICTの仕組みができればいいですね。行政がスタッフを派遣したり、地域の学生に協力してもらってもよいかもしれません。

 ちなみに海外の鉄道などでは、どうしても人手が必要なときは予約制をとっています。北欧では24時間前の予約で、サポートする体制があります。

 介護ヘルパーの資格がある地域の方と現地で待ち合わせて旅行をすることは、日本でも増えてきています。移動介助の全てを駅員だけで賄う必要はないんです。

――解決策としてICTの活用やマンパワーを補うことはかなり大きいだろうと思います。

 DNPが運営している「May ii(メイアイ)」というアプリがあります。聴覚障害や車いすの人がアプリでサポートをお願いすると、気づいた近くの人がサポートを挙手できるんです。

 「May I help you?」と言える環境をつくっていこうというアプリです。今は利用可能エリアも限られていますし、個人情報や信頼度の問題を解決していく必要もありますが、こういった活動がうまく全国的に広がればいいですね。

――問題の本質を見極め、解決法を考える必要があるんですね。

 現金が必要なとき、ATMやコンビニでお金が下ろせれば、郵便局や銀行に職員がいなくても問題ありません。同様に駅も、移動が可能になれば良いわけです。

 目的が達成できれば、サポートの形はいろいろあっていいのかもしれません。みどりの窓口が減るという報道もありますが、障害者割引などがオンラインで予約や発券ができるようになれば楽になる人も多いと思います。

――それにしても、せっかくバリアフリーが進んできたのに、無人駅が多くなってしまったのは皮肉ですね。

 日本の人口構成が変わってきたためでもありますね。しかし、そのような地方ほど、運転しない高齢者も、移動や情報取得に困難のある障害者も増えていますから、公共交通機関を利用する方のサポートを今後どうするのか考えるのは急務だと思います。

取材:和久井香菜子、構成:中山史奈(ブラインドライターズ)

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