「S30」は大人のための一生使い続けられる最高級シャープペンシル

文=他故壁氏
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 学生の頃と較べ、社会人になるとシャープペンシルの使用頻度はぐっと減少しますよね。

 でも、学生にとって、シャープペンシルはなくてはならない学習の友ですし、次第に愛着も湧いてきたり、もっと手に合うシャープペンシルがあるのではないかと探してみたり──関心が高まるのも、学生ならではかもしれません。

 そんな学生諸氏の間で、いま高級シャープペンシルがブームなのをご存知ですか。

 シャープペンシルにも様々な機能やルックス、あるいはメーカー独特の開発方針があります。そんななかでいま注目を集めているジャンルと言えば、製図用シャープペンシルと木軸シャープペンシルです。

 製図用シャープペンシルは、過去には手書きで製図を行う際に使用されたプロユースの製品群を指します。パイロットでは、ロングスリーブ──先端にあるパイプが長く、視認性が良くて定規で線を引きやすい構造を持っており、またボディのどこかにHBやBといった内蔵シャープ芯の硬度を表示できる手動の硬度表示窓があるのも特徴です。さらに、内蔵された小型消しゴムの裏面にクリーナーピン(パイプ内に芯が詰まった際に取り除くための細い針金)が装備されているのも製図用の証です。

 木軸シャープペンシルは、その名の通りボディの大半に素材として木材を使用した製品群です。木目が美しく、樹脂のように滑らず、金属のように冷たくない。そして使用頻度が上がっていくと経年変化で艶が変わっていく──永く愛用できることも魅力のひとつです。

 そんな「製図用」と「木軸」の両方を兼ね備えた製品が、パイロットコーポレーションに存在します。S20(エストゥエンティー)と名づけられた本製品は、製図用シャープでありながら全身が樹脂含浸カバ材で覆われ、そのスリムで美しい佇まいはシャープペンファンの心を掴んで離しません。

 パイロットは製図用シャープペンシルを「Sシリーズ」と名づけ、2021年現在下記のラインナップを揃えています。

・S3(エススリー):300円(税抜)オール樹脂ボディの廉価版
・S5(セスファイブ):500円(税抜)グリップにラバーを用いたミドルクラス
・S10(エステン):1,000円(税抜)グリップに金属を用いたアッパークラス
・S20(エストゥエンティー):2,000円(税抜)全身が木軸の高級版

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 そしてこの3月、新しいSシリーズが発売となりました。それが今回ご紹介するS30(エスサーティ)です。

 S30はSシリーズでは最高級の製品となりますが、実は「製図用シャープペンシル」ではありません。

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 本体はS20同様に、樹脂含浸カバ材を使用した木軸ですが、製図用シャープではないので

・ロングスリーブが搭載されていない
・硬度表示窓が装備されていない
・消しゴムにクリーナーピンがない

 以上が相違点となります。

 過去にS3とS20で「スタンダード」と呼ばれる製品があり、これらにもやはりロングスリーブ、硬度表示窓、クリーナーピンは実装されませんでした。ただしこれらは製図用であるS3とS20が発売された後に出てきたバリエーションのひとつで、今回のS30のように「Sとついているのに製図用でない」製品は今回が初めてになります。

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 そしてS30にあってS20にない最大の特徴といえば、S30が「オートマチックシャープ」である、ということでしょう。

 ここで言うオートマチックシャープとは、1回ノックしたら、その後芯が途切れるまでノックせず筆記を続けることができるシャープペンシルを指します。

 S30は誤ノック動作防止のために、スリーブ部分を格納できる仕様になっています。使用後は先端を机に押し当て、ノックして先端を収納します。

 次回使用時は、1ノックして先端を出し、そのまま筆記を開始します。芯はスリーブから出ない状態で、書いていくうちにスリーブ先端が紙に当たってわずかに引っ込みます。文字を書いたのち、手を上げてスリーブ先端が紙から離れたとき、押し込まれていたスリーブが前進します。これがノックと同じ効果をもたらし、次回筆記用の芯を内部から押し出してセットするのです。

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 オートマチックで字を書く場合は、常に金属スリーブの先端が紙に当たっていることになります。慣れない方には、この芯ではない部分が当たる「ひっかかり」が苦手、と思われることもあるかと思います。その場合は2回ノックをすれば、一般的なシャープペンシルと同様に芯だけが紙に当たります。

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 オートマチックシャープペンシルには、大なり小なりこの「ひっかかり」があります。それはS30も例外ではありません。わたしはこの「ひっかかり」が苦手なので、S30も2回ノックで使用しています。

 それならオートマチック機構がない、1,000円も安いS20を使えばいいと思われるでしょう。でも、S30はS20にはない美しさがあります。

 S20ではマット調で輝きを抑えられていた金属パーツが、すべてメッキ仕上げになりました。そして硬度表示のなくなったノックノブの側面にはボディと同素材の樹脂含浸カバ材が巻かれ、高級感がぐっと増しています。

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 大人が常用する最高級シャープペンシル、と言っても過言ではないスタイルを持つS30。もちろんオートマチック機構は、学習時やアイデア出しなどの際に思考を途切れさせないための機能でもあります。また木軸は使えば使うほど味が出て、自分だけの一本に育っていきます。わたしも手持ちのS20がかなり育ちましたので、次はS30を愛用して育てていこうと思っています。

 改めて木軸のシャープペンシルを持ちたいと思う大人のあなたに、真っ先にお薦めできる優れものです。

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