
Getty Imagesより
三度目の緊急事態宣言が再度延長されようとしているこの期に及んでも、政府と組織委は開催を諦めていない。今回はこの五輪の正体である「マネーファースト」的側面について、詳しく解説してみよう。
過去最大のスポンサー料
政府と組織委が五輪開催を諦めない最大の理由は、巨大なテレビ放映権料やスポンサー料、そして今まで注ぎ込んできた税金などの五輪マネーが回収不能になることを恐れているからだが、その一つであるスポンサー料に関しては、またもや電通が介在している。
五輪の売上げの柱は放映権料とCM放映料、開催実施費などだが、電通にとって恐らく大きな売上げとなったのが、スポンサー企業の管理料収入だ。スポンサーの数が五輪史上、最多の67社となっているからである。
前回のリオ五輪までは、スポンサー企業は一業種一社という取り決めがあった。例えるなら、トヨタがスポンサーなら日産は参加できないという決まりだが、東京大会はその縛りを無くし、同業種で何社でも参加できることとした。これはもちろん、売上げ拡大を狙った電通が、IOCを説得した結果である。
そのため、ANAとJAL、三井住友とみずほ、東京メトロとJR東日本など、同じ業種で複数の企業が参加するようになった。中でも一番多いのは新聞社で、朝日・毎日・読売・日経・産経の全国紙と、北海道新聞社が名を連ねている。
各社のスポンサー料金は伏せられているが、国内最上級のゴールドパートナー(15社)は一社あたり150億円、オフィシャルパートナー(32社)は60億円程度、オフィシャルサポーター(20社)は10〜20億円程度と見込まれている。
これらスポンサー企業の開拓をしたのが電通であり、すべて組織委との三者契約になっている。組織委はスポンサー収入を3400億円などと発表しているが、その中に電通の手数料がいくら入っているかは明らかにしていない。
筆者の計算では、本当のスポンサー収入は4300億程度で、そこから電通の管理料20パーセントを引いた額が、公表されているスポンサー収入ではないかと考えている。つまり電通はスポンサー管理料だけで800億円以上を稼いだと予想出来るのであり、東京五輪は同社にとってまさに金城湯池と言えるのだ。
この莫大なスポンサー契約料以外にも、テレビ放映権料、様々な媒体でのCM放映料、グッズ関連のマーチャンダイジング料など、元々五輪に存在していた多くの利権が、電通の介在によって何倍にも膨らんでいった。巨大イベントにかかる予算が、さらに巨大化しているのである。
半官半民で、コスト監視が出来ない仕組みを構築
上記のスポンサー料について組織委はその金額を一切明らかにしていないため、過去の五輪での実績や様々な情報によって推察している。だが組織委はさらに、もっとも実質的な部分である「開催実施のカネの流れ」を第三者に検証させないシステムを作り上げている。
本年4月1日現在の組織委職員数は3929名。東京都1113名、国から73名、地方自治体からの出向者477名などの公務員と、民間910名(電通やスポンサー企業等からの出向者)、契約社員954名、人材派遣371名などで構成されている(組織委発表)。
特に電通は約150名を常駐させており、同社のスポーツ局の人員を合わせれば、常時数百名が五輪業務に従事している。
この人員構成を見れば明らかだが、組織委は公益財団法人でありながら、民間法人としての形もとっている。半官半民であり、みなし公務員という位置づけなのだ。
つまり、国民に対してはお堅い官の顔をちらつかせながら、スポンサー契約やチケット販売、様々な資材の調達は民間の手法で行う。民間契約ならば守秘義務があるため、いちいち国会などで開示請求に答える義務も無くなる。これは極めて巧妙な手法である。
もう少しわかりやすく言うならば、組織委の出してくる費用概算はすべて総額であり、その根拠になる細かな単価、積算根拠は示されていないと言うことだ。チェックが不可能なので、提示金額が正しいかどうか、第三者には確かめようがない。
前述したように、組織委はスポンサー収入の総額を3400億円と公表してきた。その真偽を確かめるため、その根拠となる企業別のスポンサー料の開示を求めたが、それは秘密保持契約があるからダメだという。だがそれで許されるなら、本当のスポンサー収入がいくらなのか、分からないではないか。
3月31日、毎日新聞は『五輪費用、あれもこれも総額 組織委、実際単価示さず「参考値」』という記事を掲載した。そこでは、
「五輪競技会場の運営は企業が担うため、そこにかかる費用は「民民契約」で決まる。そのため、予算はさらに見えなくなる。組織委は国から「公益性」を認定された税制優遇のある公益財団法人。予算書や事業計画書などの開示義務はあるものの、会場の運営委託費については、テスト大会の委託先と委託費の総額が開示されているのみ。そこにも人件費単価などの積算根拠は示されていない」
と報じられている。
東京五輪は招致の際、約7400億円で開催出来ると言われていたが、現在の組織委発表による総コストは1兆6400億円、その二倍以上である。さらに国と東京都は合わせてさらに1兆8000億円の税金を五輪用に使っており、それを合わせれば、今回の五輪に費やす金額は約3兆5000億円と、目もくらむばかりの巨額となる。しかもその大半は税金なのだから、五輪開催費用の中身は厳しく検証されなければならない。
それなのに、組織委は民民契約を盾にして、新聞社や国会での野党議員の追及にも、様々な契約内容や積算根拠を明かさない。これこそまさに、五輪とは徹底的に国民の税金を吸い上げる「夢の集金システム」なのだ、という証左ではないか。五輪は、凄まじいばかりに開催地の税金をむさぼり食っているのである。
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