再生可能エネルギー普及のため、新電力の価格高騰が二度と起きない仕組みをつくれ

文=志葉玲
【この記事のキーワード】
再生可能エネルギー普及のため、新電力の価格高騰が二度と起きない仕組みをつくれの画像1

Getty Imagesより

●いま、“ここ”が分水嶺…豊かな地球を残すために知っておくべきこと(第3回)

 私たちの生活に電気は欠かせません。しかし、日本の温室効果ガスの排出源の約4割は発電からなのです。石炭や天然ガスを燃焼させる火力発電は、大量のCO2を排出します。だからこそ、CO2排出が少ない太陽光や風力などの再生可能エネルギーを使っていくことが重要です。

 そのために、私たち個人でもできることはあります。積極的に再生可能エネルギーの電気を供給する電力会社を契約することができるのです。ただし、その契約内容を確認することが、とても大切です。

 電力小売り全面自由化によって、2016年からは日本の一般家庭でも電力会社を選べるようになりました。この電力自由化と共に、たくさんの電力会社が新たに電気の小売りを始めました。これらは「新電力」と呼ばれています。

 新電力の中には、積極的に再生可能エネルギーの電気を販売している会社も多く、そうした会社と多くの人々が契約することは、再生可能エネルギーの普及にもつながる、と言えます。

 電力会社を新たに契約しなおす、というと少々面倒な気がするかもしれませんが、実際には簡単です。多くの場合、その新電力のウェブサイトで簡単に手続きを行うことができます。筆者も、ものの数分で手続きをして、東京電力から新電力へと契約を切り替えることができました。

 どの新電力がいいかについては、「パワーシフト・キャンペーン」というウェブサイトに情報がいろいろありますので、是非御覧ください。

再生可能エネルギー普及のため、新電力の価格高騰が二度と起きない仕組みをつくれの画像2パワーシフト・キャンペーン https://power-shift.org

 ただし、契約する際に注意しないといけないことがあります。それは、電気料金の価格設定が「市場価格と連動した価格体系」となっていないかを確認することです。

再生可能エネルギー普及のため、新電力の価格高騰が二度と起きない仕組みをつくれの画像3

「内閣府再生可能エネルギー規制総点検タスクフォース資料」より

 今年1月、「天然ガスの在庫不足」等の理由から、新電力が電気を調達する卸電力市場への、大手電力などによる供給電力量がしぼられたことで取引価格が高騰。それまで、平均で1キロワット時あたり10円程度だったものが、一時は250円を超えるなど、通常の20~30倍までに跳ね上がったのです。

 「市場価格と連動した価格体系」というかたちで契約していた消費者は悲惨で、「1月の電気代が10万円」というようなケースすらあったと報じられています。多くの場合、新電力は価格高騰分を消費者に転嫁せず、自ら負担することを選びましたが、その結果、数千万から数億もの損失を抱え込むことになってしまったのです。

 なぜ、卸電力市場での価格暴騰が起きてしまったのか、その原因は、経済産業省の制度設計にあります。

 まず、卸電力市場での価格暴騰を止める「ブレーキ」が上手く機能しませんでした。経産省は、卸電力市場の取引価格高騰を受け、今年1月17日以降の1キロワット時あたりの価格上限を200円と設定しましたが、時既に遅しでした。

 そもそも通常の取引価格と比較して「1キロワット時あたり200円」という上限はまだまだ高すぎます。これについては、2022年4月を目処に制度の見直しが行われるとのことですが、前倒しで見直されるべきでしょう。

 また、卸電力市場ではなく、太陽光や風力による発電施設と契約して電気を調達している新電力も、その買取価格(=固定買取価格)は、卸電力市場の取引価格と連動しているため、暴騰の影響を被ってしまったという問題もあります。こちらも制度を改善していく必要があるでしょう。

 環境NGOなどによる「パワーシフト・キャンペーン」は、「再エネ普及に大きなカベ?!でんき市場価格高騰の実態解明と公平なしくみを求めます」として、先月末30日に17047筆を超える署名を経産省に提出しました。

 現在も賛同者が増加中のこの署名では、今回の卸電力市場の高騰について、「実態解明と再発の防止、情報開示」「電力市場価格高騰による一部の消費者や再エネ新電力会社の極端な負担に、政府としても何らかの緊急対応を」「再エネ拡大につながるかたちへ、電力システム改革のあり方を見直すこと」を求めています。

 現在の日本の電力業界は、まだまだ大手電力会社が市場の8割を占める寡占状態であり、これらの大手電力会社は石炭や天然ガスの火力発電、原発を抱えるため、やはりこれらの施設の稼働に拘る面があります。

 だからこそ、再生可能エネルギーを活用していこうという新電力を、消費者として応援していくことは重要なのです。そして、こうした新電力と消費者達が制度の欠陥によって不利益を被ることがないよう、政府は制度改革を急ぐべきですし、私たち市民も声を上げていくことが大事なのでしょう。

*政府は今回の電力市場高騰に関連して、パブリックコメントを今月29日まで募集している。
リンク

(志葉玲)

著者の過去記事はコチラ→志葉玲

「再生可能エネルギー普及のため、新電力の価格高騰が二度と起きない仕組みをつくれ」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。