男性育休を浸透させるため「当事者の声」以上に必要なものとは?

文=望月悠木
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 WEZZYでは上映会終了後、「ペア休」発起人でキャリアコンサルタントの境野今日子氏に、育休の現状や課題などを伺った。

 新型コロナウィルスの影響により、在宅ワークが普及した。なかには、「在宅ワークなので育休はとりません」と宣言する人もいるようだが、境野氏は「在宅ワークをしながら育児をするのは難しいだろう」と話す。

「日中の大半は育児に時間を割けず、生まれたばかりの赤ちゃんは夜通し対応が必要になります。例えば、『夫婦で交代しながら夜に対応して昼間に休む』といったことが育休期間中には可能ですが、在宅ワークであれば難しいでしょう。結局、在宅ワークであっても母親がワンオペ状態になってしまうため、『在宅ワークなら子供を見ながら仕事できる』と安易に考えずに、育休をしっかり取ってほしいです」

 とは言え、コロナ禍は育休取得に関して前向きな変化ももたらしたようだ。境野氏は「里帰りができない」「実家に頼れない」と理由がつけられるようになり、育休の希望が言い出しやすくなったと言う。

 しかし、本来、育休取得に理由は必要ない。境野氏は、育休取得をめぐって声を上げる当事者以上に、当事者の声に賛同・応援する人間の存在の重要性を訴える。

「男性の育休取得は、どうしても対象者が限られます。育休を希望する男性はマイノリティになりやすく、『自分が休んでいる間は、この案件やってくれる?』と周囲に言い出しにくいです。ですので、当事者ではない第三者の方から、『私がやるよ!』と積極的に手を貸していただければ、男性が育休を取得しやすい空気感が作れます」

 「育児は女性がやるもの」といったジェンダーバイアスだけでなく、業務量の多さが育休取得のハードルになっているケースも少なくなくなさそうだ。それに対して境野氏は「業務過多を理由に育休取得を拒否することは容認できません」と言い切る。

「新潟県にある建築金具メーカー・サカタ製作所のように、かつては長時間労働が常態化していた職場でも、男性の育休取得率が100%になった会社は存在します。そもそも、従業員が1カ月休んだだけで業務が回らないという状態は異常ですので、そういった会社は早急に業務改善が必要です。
 育休は突発的にやってくるわけではなく、数カ月前から準備ができます。属人化していた業務にマニュアルを作ったり、『どこになんの資料があるのか』を分かるようにしたりなど、育休を機会に前向きに取り組んでほしいです。
 また、『業務が回らないから』と男性の育休を断る会社は、女性にもそうやって断っているのでしょうか。『女性は育休を認められて、男性は認められない』というなら、業務量の問題ではなく『育児は女性がするもの』というジェンダーバイアスが根底にあることになります。男性育休100%に成功した企業の事例を参考にしながら、多くの企業がこれを機に働き方改革ができるといいと思います」

 育休取得には当事者のみならず周囲の意識も非常に重要である。動画を通して、まずは、「なぜ育休取得が必要なのか」が広く理解されることを切に願う。

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