吉川ひなのが著書で明かしたトンデモ自然派ライフの何が問題か?

文=山田ノジル
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その4■経皮毒

 「子宮はためこむ臓器」だからと、カラーリング剤を極力使わないというエピソード。これは「経皮毒」というニセ医学の考えです。経皮毒とは、日用品の化学物質が皮膚からしみこんで体内に蓄積されると主張されているもので、すでに「都市伝説」とツッコまれつつも一部自然派には根強く浸透しています。カラーリングの化学物質が頭皮からしみこみ、子宮に毒素がたまることを心配しているのです。同書にはほかにも「水に含まれる塩素が経皮吸収する」というような記述もあり、なるほどそれを信じていたらデトックス(と信じられている療法)せずにいられないだろうなあ。でも実際は、吸収しているのは化学物質じゃなくてトンデモ思想なので、ひまし油や砂浴では抜けなそうです。

その5■布ナプキン

 ひなのが愛用する生理用品は、オーガニック素材の使い捨てタイプor布ナプキン。これも自然派女子のマストアイテム。使う理由は肌触りのよさに加え「化学物質も揮発しないし冷えないし環境にもやさしい」からだとか。これは裏を返せば「使い捨ての紙ナプキンは、石油由来の素材だからデリケートな性器にあてるべきではない」「化学繊維は体を冷やす」「使い捨ては環境に悪い」と言っているわけです。これもまた、テンプレそのまんまの布ナプ・プロパガンダ。そろそろ耳にタコ……。

 布ナプキンの話題をとりあげるたび、しつこく同じことを言いますが、「環境にやさしい」と主張する人たちが、第3の生理用品として注目される月経カップを無視するのは本当にナゼ? 水と洗剤をたっぷりつかって布にしみこんだ経血を下水に流すより、血液だけを少量の水と石けんで流せるカップのほうがはるかに地球にやさしいと思うのですが。

 同書で唯一よかったのは、布ナプキン信者たちがよく主張する「布ナプキンを使うようになったら生理痛がなくなった」「生理期間が短くなった」という、根拠なき効果効能を語っていない点でした。

その6■肉断ち&動物愛護

 ベジタリアンではないけれど、「お肉を食べるのをやめた」理由を語っています。

「思えば私たちの体は、食べたもので作られている」
「ダイレクトに体内に入れるものなので健康状態やマインドが変わって、当然なのだ」
「人間に食べられるためだけに生まれてきた経済動物たちが殺されるまでに受ける不当な扱い」
「恐怖と痛みのなか殺されていくその悲しみや悔しさ」
「そういった目には見えないものが体の中で毒物や異物と反応して、食べた人間側のイラつきや不安、悲しみという不快な症状で現れても、なにも不思議ではない」

 いや、不思議だよ。そして魚は食べているようですが、この手の人たちって養殖魚はスルーなんですね。食品ロスや温室効果ガス問題はもちろん改善していかねばなりませんが、動物の恨みが健康を害する! とまで飛躍するのは、目に見えない恐怖をあおる霊感商法に近い。人間の価値観で全てを考える擬人化はほどほどに……。

 家畜のありかたに違和感を覚え、肉断ちを宣言する人たちは、環境劣悪な養殖場を引き合いに出し、家畜を擬人化し、感情に訴えかけてくるのがお約束。「動物たちの苦しみ」を滔々と語るアプローチもまた、どれもこれも似たような話ばかりなので、結局は受け売りなのでしょう。そして皆、どこかトンチンカン(代表例は「邪魔だゴッ太郎」※知らない人はググってね!)。

その7■自然なお産

 自然派ママのヒエラルキーがあるとすれば、トップ入りに必要なカードは「自然なお産」に違いありません。ひなのは現在第3子を妊娠中。第1子は病院で産んだものの、その体験がすごく嫌だったので、第2子は自宅出産を選んだというエピソードがつづられています。この経緯も、自然なお産教のデフォルトです(どこまで教科書通りなの)。

 自然なお産にあこがれて第1子から自宅出産を選ぶ人ももちろんたくさんいますが、その界隈では「気持ちと体によりそってもらえない、病院での機械的な処置」で不本意な思いをし、医療介入なく主体的に自然なお産に挑む……という経緯が、星の数ほど語られています。嫌な思いをしたのが前提なので恨み節になるのはある程度仕方ないものの、結果的に一般的なお産をディスるような物言いが多くなり、嫌味ったらしいことこのうえなし。何かを貶めないと魅力を説明できないのって、結局は後ろめたい部分があるからでは? なんて穿ってしまう。

 同書では「エコーで確認しないほうが、赤ちゃんの体重やお腹のはる理由が自分でわかる」とまで語られており、自己肯定感や満足感を超え、万能感まで得ているのが妄信的で怖いです。

その8■オキシトシン神話

 自然なお産信者は決まって、オキシトシンを語りますが、この点も同書はテンプレ通り。オキシトシンとは、通称「愛情ホルモン」。出産時に陣痛を促したり母乳を分泌させるなどの働きがありますが、最近では育児出産以外でも健康効果があると知られるようになってきました。それを自然派推しの医師や助産師たちが積極的に広めてきたからでしょうか。なぜか自然派さんたちがあちこちで、都合のいいようにオキシトシンを語るのです。

 帝王切開や無痛分娩、分娩台のようなリラックスできない環境ではオキシトシンが分泌されない。陣痛促進剤として人工的なオキシトシンを打たなくても、自然に分泌を促す方法がある。同書では出産時のオキシトシンについて語るだけでなく、ヨガの師匠から聞いたというこんなお説まで披露されていました。「言葉の中で『ありがとう!』がオキシトシンを一番分泌させる」。オキシトシン濃度、計測したんですかね? 神話を鵜呑みにしすぎ。オキシトシンを都合よく扱いすぎ。「オキシトシン」って言っとけば、今どき感が出ると思っている人もいそうな勢いです。

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