ルームシェアという生活形態はまだまだ少数派である。家族に色々な形があるように、ルームシェアにも様々な形がある。とはいえ、それぞれのシェア生活の経緯もルールもバラバラで、「家族ではない」からこそのコツや知見が蓄積されているように感じている。本連載は、そんな「それぞれのシェア生活」の知見を共有するのが目的だ。
私はオタクのアラフォー女性4人でルームシェアをしている。ほどほどの距離感で快適に暮らす日々を綴ったWEB記事や、エッセイ『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎)を昨年上梓したところ、「私も最近ルームシェアをはじめて、その際には藤谷さんの記事を参考にしました」というメッセージを周囲からもらうこともある。今回は、私と同じく4人でルームシェアをしている女性たちに話を伺った。
アラフォー女性4人のルームシェアは「家族でなくても共生しやすい社会」の実践
1年前からアラサー・アラフォーの女性4人(なお全員なにかのオタク)で、ルームシェアをしている。 ルームシェアというと、期間限定で若い人がや…
第2回 女子校の元同級生4人で暮らすKさん、Nさん、Sさん、Aさん
Kさんは私の友人の編集者だ。都内の中高一貫女子校出身のアラサー女性で、当時の部活仲間であるNさん、Sさん、Aさんの3人とルームシェアをしているという。
「卒業してからは学校や仕事も別ですし、頻繁に会っているわけではないけれど、なんとなく連絡は取り合っていて、たまに趣味のボードゲームをするために集まって遊んだりはしていて、そういう場所で冗談まじりに“いつか近所に住もう”とか言い合っていたんです」(Kさん)
与太話だった共同生活が現実味を帯びてきたのは、実家の変化が影響しているという。KさんとNさんは以前は実家ぐらしだったが、Kさんの仕事は新型コロナウイルスの影響で、リモートワークになったものの、家族の理解があまり得られず一人暮らしを考えるようになり、一方Nさんが実家の都合で独立を余儀なくされたという。
「リモートワーク中に、家族とちょっと折り合いが悪くなっていて、そしたらNからも“引っ越したい”という話を聞いて、“なんなら皆で住んじゃう?”と盛り上がったんです(笑)」(Kさん)
私も4人でルームシェアをしており、物件探しの段階で4人でのルームシェア可能な物件が少なく、やや手間取った経験があるのだが、Kさんたちの場合は内見一軒目ですぐに理想の物件に出会えたという。
「本来は時間をかけて探す予定で、“半年後くらいに見つかるといいね”って話してたんですけど、思いの外早く見つかりました」(Kさん)
「ファミリー向けの4LDKの分譲マンションで、食洗機やディスポーザーも完備していて、お風呂も広いし。24時間ゴミ出し可能、各部屋の広さも極端に差があるわけでもない」(Sさん)
「リップサービスかもしれないですが、不動産業者も、“ルームシェア可能でこんないい物件みたことない”っていうくらい(笑)。都心にも出やすい立地で周囲も治安もよくて、24時間営業している大きなスーパーもある」(Nさん)
「家賃は26万円で、一人暮らしよりものすごく安くつくわけではないけれど、ワンルームくらいの家賃でこの設備の部屋に住めるので満足しています。今はコロナの影響で使用できませんが、このマンションは共有スペースが充実していますし」(Kさん)
なお、家賃補助の出る会社につとめている、SさんとNさん二人の名義での契約になった。たいていの会社は賃貸契約者本人、あるいは同じ名字の者(つまりは配偶者)でないと家賃補助がおりないことが多く、さらに連名契約は家主側も嫌がることが多いため、ルームシェアの場合家賃補助を諦めることも少なくないようだ。なお、私の同居人のひとりは、不動産業者と相談して家賃の支払いを証明する書類を作ってもらい、それを人事に通して家賃補助を獲得している。強めに押せばなんとかなるケースもある……。
とはいえ、Sさんの会社は、個人での賃貸契約ではなく、会社が借りた物件の場合のみ補助が出るとのことで、結局家賃補助はおりなかったそうなのだが、「一人で社宅で暮らしたほうが安くつくけど、みんなと暮らしたほうが楽しいから」と、この生活を選んだそうだ。
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