2016年頃から日本でも販売が始まった、台湾の筆記具ブランドTWSBI(ツイスビー)は、欧米のOEMメーカーとして長年の実績と技術力を活かした筆記具を生み出し、今では多くのファンを持つブランドに成長しました。
そんな中で、2018年に発売されたTWSBI GO(ツイスビーゴー)は、世界中をみまわしても比べる相手がみつからないほどのユニークな特徴を備えた万年筆です。

はじめてスプリングの力を利用した吸入方式を採用したTWSBI GO
TWSBI GOの1番の特徴は、他にはないちょっと変わったインク吸入方式を採用していることです。
スプリング(いわゆる弾力性のあるバネです)を利用してインクを吸い上げるシステムで、わかりやすく「スプリング吸入式」とここでは呼ぶことにします。
現在発売されている万年筆の中で、このような吸入方法を採用している例は見当たりません、大きく分別するとペリカンやモンブランなどの高級万年筆に多く採用されているピストン式に分類されるかもしれませんが、それらは尻軸を回転させてインクを吸入する仕組みです。

インクを吸入する方法
インクを吸入するために胴軸を外すと、万年筆の中身とは思えないむき出しのスプリングの中にピストンとインクが収まるタンク部分が見えますが、そこにはインクカートリッジもコンバーターも存在しません。
現行のTWSBIブランドの万年筆には、インクカートリッジやコンバーターを採用しているモデルがなく、すべて本体吸入型のスタイルで統一されていて、TWSBI GOも同じ流れを汲んでいます。
無骨な感じが伝わってくる見た目とは裏腹に、インクを吸入する方法はいたってシンプルです、インクボトルにペン先を浸してから尻軸に親指を当ててピストンをゆっくりと押し込み、指を離すとスプリングが元に戻ろうとする力が働いて、自動的に万年筆の中にインクが吸いあげられます。
この1回のノックで本体容量のほぼいっぱいまでインクを吸い上げる事ができるのもTWSBI GOの大きな特徴です。

驚きの大容量インク
万年筆のインク容量が大きいほど性能が良いという訳ではありませんが、家庭用プリンターも最近ではエコタンクといった大容量のモデルが人気を集めていますし、容量が大きくて長く筆記ができるのはやはり便利といえます。
市販されているインクカートリッジの容量はメーカー毎に差はありますが、概ね1ml前後で、コンバーターの場合だとさらに容量は少なくなります。
TWSBI GOは本体に約1.4mlものインクが入る容量を備えていて、一部の万年筆を除けばトップクラスになります。使用頻度にもよりますが、1度インクを吸入すれば補充することを忘れてしまうほど。
また、中のインク残量が見えるクリアなボディを採用しているので、気がついたらインク切れしているという心配はなさそうです。

カジュアルに万年筆を着こなす
TWSBI GOにはポケットなどに挟み込むためのクリップがない代わりにキャップの横に小さな穴が空いています。この穴にお好みの紐を通して首にかけられるようにしたり、リングをつけてIDカード証と一緒に身につければ、速記性と利便性を得られると同時に、万年筆がより身近な存在になり、カジュアルな筆記用具として着こなすことができます。
オーソドックスな万年筆では、そんな使い方はできませんが、フレンドリーな質感のTWSBI GOだからこそ似合う使い方のひとつです。

ECOと同じニブを使ったお買い得感
TWSBIの万年筆ラインナップには、エントリーモデルとして「はじめての万年筆」に選びたい1本に数えられるTWSBI ECOがあります。TWSBI GOのペン先(ニブ)には、この1ランク上のモデルTWSBI ECOと同じペン先が使われているので、書き心地の良さは折り紙付きで、まさにお買い得感に溢れたモデルといえます。
以前、台湾の文具店へ取材で伺った際、TWSBI GOについて「お店に並ぶ万年筆のなかでは、どんな位置づけですか?」と訊ねると、日本の株式会社パイロットコーポレーションから発売されている万年筆KAKUNOのライバルですよと答えが返ってきました。
TWSBI GOは3400円(2020年現在日本での販売価格)、KAKUNOは1000円と価格差が開きすぎると思ったのですが、それぞれの国での価格は関税の関係もあって、台湾ではKAKUNOの販売価格は約1500円でコンバーターを加えると2500円前後になり、私がTWSBI GOを台湾で購入した時は2500円程度でしたから、立派なライバル関係にあるといっても過言ではないようです。
日本では販売価格に差があるために、KAKUNOをはじめとする1000円前後の低価格万年筆を買い求めるユーザーの候補になるかはわかりませんが、このユニークな仕組みとしっかりした書き心地のTWSBI GOは、ライバルとの価格差などを抜きしても、よりカジュアルでフレンドリーな存在になってくれる1本です。
製品名 TWSBI GO
カラー スモーク/サファイア/クリア
ペン先 EF/F/M/B/スタブ1.1
価格 3400円(税別)