なんとなくコロナが争点となっているように思えるが、この番組が日本をロケ地として放送される問題は、実はそもそもそこではなかった。ロケ地、東京の夏は、スポーツ大会を放送するにしては暑すぎるのだ。
2年前、東京五輪が取り組むべき課題は暑さだった。しかし、テレビ番組の性格上、7月開催は動かせない。
1964年の東京大会は10月10日に開会している。この時期の気候なら確かに世界中のアスリートを迎えるのに最適だと、東京に住む人なら誰でも思うはずだ。
猛暑の夏がアスリートに最適という嘘をついてロケ地に立候補したところから欺瞞は始まっているが、この欺瞞をごまかすために朝顔を植えたり、人工雪を降らせたり、丸の内のビルから冷房を外に吐き出したり。果ては、謎の編み笠を考案し、東京でやるならマラソンは午前4時スタート(結局札幌に移動したが札幌も十分に暑い)という非合理で非科学的な迷走をしていた。
いま盛んに言われている「コロナさえなんとか抑えれば開催出来る」というのは完全にミスリードである。
むしろ、コロナ対策に全リソースを割かざるを得ない状況で暑さ対策が全く出来なくなっている。
現在は、コロナ禍の最中に医療従事者や医療施設を五輪に動員することへの批判が出ているが、そもそもは熱中症への医療リソースが心配されていた。
選手、関係者のみならずバイトやボランティアが猛暑の中、長時間活動する時点で「安全、安心」が戯言なのは明白だ。
これだけのハードルを乗り越えてまでテレビ番組を成功させる意味はどこにあるのだろう?
五輪が楽しみな人がいる、観たい人だけ観れば良い、と言う人もいる。
ところが、すでにこのテレビ番組の制作費は3兆円に上り、そこには税金も投入されるのだ。僕らはいつの間にかこの番組のスポンサーになっているようなものだ。
だったらこんないい加減な制作方針には文句を言わせてもらおう。
コロナパンデミックの最中、こんなテレビ番組のロケ地になってくれるのは日本くらいかもしれない。だからプロデューサーのIOCも何がなんでも実現させようと次々と強圧的な態度で臨んでくる。
チャンネルを替えておしまいではない。ギル・スコット・ヘロンの言葉を借りれば「五輪はテレビに映らない」という選択を僕らは出来るのか? 暑い夏も間近だ。
(ダースレイダー)
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