アダルトサイトより正しい性知識と相談先を ネット検索の問題を訴えるプロジェクト「#SEOセックス」

文=原宿なつき
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Getty Imagesより

 Googleで「痴漢」と検索したさい、一ページ目に表示されるのは、風俗店の情報や、被害者と示談を行うための弁護士事務所のHPなどだ。

 「セックス」と検索すれば、アダルトサイトが一番に表示される。

 「お酒 襲われた」の検索上位は、「お酒の飲み過ぎでやってしまったランキング」「下心というか本能。男はお酒を飲むとヤりたくなるもの」といった記事だ。

 現状、性にまつわるワードをネット検索したとき、一番最初に目にするのは、「アダルトな情報」「性暴力を暴力とみなさない記事」「性にまつわる誤った知識」である可能性が高い。

 こういった現状を変えたいと行動を起こした大学生たちがいる。「#SEOセックス」プロジェクト発案者のひとり、前田かや子さんにインタビューを行った。

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前田かや子
16歳の時に性犯罪の被害に遭った経験がきっかけで、社会に性暴力の問題を提起する活動をスタート。2020年にジェンダーに関する話題を語り合うためのコミュニティ「ちっぷす@東海」を設立し、2021年4月にはSEOセックスプロジェクトを開始。主な発言の場はテレビ番組等の出演や個人SNS (@diversity_usagi)。法学部生。

▼「#SEOセックス」プロジェクトとは
SEO(エスイーオー Search Engine Optimization)とは、ある単語をインターネット検索したさい、検索結果で上位をとるための施策を指す。

「#SEOセックス」プロジェクトは、性にまつわる疑問を検索したさい、アダルトサイト、風俗サイト、または誤った知識が掲載された質問サイトなどではなく、適切な情報を上位に表示させることで、「誰も被害者にも加害者にもさせない」「被害者を孤立させない」ことを目指すプロジェクト。6月23日〜29日の男女共同参画週間中に、Google Japan、Yahoo! JAPAN、厚生労働省、内閣府などに署名提出予定。発案者は、前田かや子さん、伊東勇気さん、中島梨乃さんら3名の大学生。
厚生労働省-安心して性知識が得られるサイトを検索上位に出してください

自分が性被害を受けたとき、正しい情報にアクセスできていれば……

――まず、「#SEOセックス」プロジェクトを始めたきっかけについて、お伺いできますか?

前田かや子さん(以下、前田):私自身が16歳のとき、見知らぬ男性から性暴力を受けたことがきっかけです。当時は、被害にあったことを親にも相談できず、学校でも言えなかったんです。そうなると、インターネットで情報を探すしかなかった。でも、頼みのインターネットですら、ちゃんとした情報にアクセスできるようにはなっておらず、性被害にあった後は重度のPTSDを発症し、長い間苦しみました。

 その後、ジェンダーについて勉強したり、話し合える人たちに出会えたことで、立ち直っていきましたが、ふりかえって考えてみると、「もっと早く適切な情報にアクセスできていたら、あんなにも長く苦しまなくてもよかったんじゃないか」と思ったんです。

 性暴力被害者が適切な情報にアクセスできるために、自分に何かできることはないか……と考えていたときに、性教育について詳しい中島梨乃さんと出会ったんです。

 中島さんが「セックス」とネットで検索したときに、性行為について正しい情報が出てこないことを問題視していると知り、「私も性被害について同じこと思っていた!」となり、それで一緒にプロジェクトを始めることにしました。

――「#SEOセックス」プロジェクトは、「性被害」と「性に関する正しい知識」両方にアプローチするもの、ということでしょうか?

前田:はい、その通りです。ターゲットはふたつで、ひとつは「初めて性に興味を持った子どもたち」、もうひとつが「性被害にあった方」。両方が適切な情報にアクセスできることを目指します。

 プロジェクトの最初の目標は、性被害に関する検索ワードで、適切な情報を上位表示することです。性被害は緊急性が高く、命に関わる問題です。また、内閣府男女共同参画局のワンストップ支援センター(※1)など被害者の助けになる情報が掲載された適切なページもすでにありますから、こういったサイトを上位表示させることをまずは目指しています。

 最初のステップとして、性被害に関する検索ワードで適切な情報を上位表示させ、次に、性に関する正しい知識に関する議論に入っていきたいと考えています。

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