男女二元論・差別的な“就活マナー”に抗議 「ジェンダーアイデンティティを殺さず尊厳を損なわない恰好で」

文=雪代すみれ
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 次に、就活マナー本を作っている企業については、「次の版のときには変更します」と具体的な返信をくださった企業が二社ありました。ほか、「今後検討します」とテンプレート的な回答だったり、返信がないところもあります。1年に1回更新されるなかで、変更されるかわからず、ただ待っているのは嫌なので、フォローアップの質問は投げてみようと思っています。

 最後にスーツなどの就活産業ですが、多くは「とりあえず郵送で署名を送ってください」と返事をいただいているのですが、面談の約束はできていません。

 現時点で、コナカからは明確に断られていて、青山商事は署名提出窓口さえ教えてもらえませんでした。また、はるやまホールディングスは「返事がなければご縁がなかったと思ってください」、大学生協は「とりあえず送ってください」としながらも、「直接お答えできる立場にない」との返答がありました。

——署名を始めてからどのような反応がありましたか。

水野:「同じような悩みを抱えていたけれど、自分がおかしくないと思えた」「モヤモヤしていたけれども、言ってくれる人がいなかったので嬉しい」といった賛同の声をいただきました。「Smash Shukatsu Sexism」の活動は、私自身のわだかまりを解消するために始めたことですが、同じ思いをしていた人たちのためにもなっているなら嬉しいです。

 一方で、見当違いの批判や、フェミニストを馬鹿にしたような反応もあります。私たちの主張は女性差別だけでなく、LGBTQや男性なども含めたジェンダー問わず、性差別に対して是正を求める活動なのですが……。

 また、生まれたときの性が男性であった人の中で、MtFやMtXからは「短髪でいなければならないという規範」「男性がスカートを履くことが一般的ではない」といった意見が届いているのですが、シスジェンダーヘテロセクシャル男性からの反応や体験談が、ほぼないことも気になっています。ときどき「ネクタイを強制されているのは辛い」という声もあるのですが、全体的には少なく、それだけ「男性は弱音を吐いてはいけない」という規範が強いのかもしれません。

 また、否定的な意見の中には「新卒至上主義」に煽られたことがなく、私たちの主張がピンとこない人もいる印象です。就活の時期になると学年全体が「新卒就活をしなくてはいけない」雰囲気に包まれて、そこから零れ落ちたら人生が失敗してしまうような恐怖心を煽られます。その中で、自分のセクシュアリティに合ったリクルートスタイルを選べないことは、自己責任ではありません。その空気感を知らない人には、繰り返し説明しないと伝わらないと感じました。

就活において一人ひとりの違いを尊重してほしい

——教育機関、就活産業、新卒採用を行っている企業、それぞれどう変化してほしいですか。

水野:まず、教育機関については、人権に関して最先端でいるべきことを自覚し、学生の多様性を尊重してほしいです。就活マナー講座を開くのはかまいませんが、開催するからには色々な人がいることを理解したうえで、一律に規範を押し付けることのないよう実施してほしいです。

 マナー本やスーツなどの就活産業については、「採用企業側が変わらなければ、就活産業が変わりにくい」という構造はあると思いますが、だからといって就活産業が今のままでよい、ということではないと思います。

 就活マニュアルについて、「女性はスカートスーツで行ったほうがいい」「女性社員は息子の嫁タイプが理想」といった表現も「現状を書いているだけだ」という意見もあります。しかし、そこに差別がある場合、「現状はこうだけれども、これは差別的な規範である」といったことを示さなければ、ただ差別的な規範を拡散しているのと変わりません。

 スーツ販売店でも、お客さんのセクシュアリティを決めつけない、10種類あるうち1種類でもヒールのない靴を置くなど、小さなことでもできることはあります。青山商事は、今回は署名提出窓口を教えてもらえませんでしたが、「洋服の青山」には、トランスジェンダーから評判の良い店舗もありますし、他の企業もできることから取り組んでほしいです。

 企業は、採用情報ページに「アイデンティティに合った格好で面接を受けてください」「セクシュアリティを理由に不採用にすることはありません」といった一言を添えてほしいです。また、企業説明会や合同説明会の場でも一言でもそういった説明があれば、就活生は安心して面接を受けられると思います。東京レインボープライドに賛同していたり、SDGsを掲げていたりするならば、その姿勢が就活生にも伝わるようにしてほしいです。

——最後に、今後の活動予定や思いをお伺いします。

水野:署名提出の宛先になっている一部の就活情報サイトでは、私たちの活動が影響したのかはわかりませんが、差別的だった表現が、リニューアルされてセクシズムのない指南に変わりました。今後は、リニューアルした経緯を聞いてみようと考えています。

 また、教育機関への働きかけも強めていきたいです。大学など教育機関の就活マナーを紹介するページでは、セクシズムに染まった表現が多々見られていて、例えば、札幌女子短期大学の就職活動のマナーのページでは、<パンツスタイルはヒップラインがはっきりするので、男性から好まれない場合もある>といった、驚きの表現があります。

 さらに、就活セクシズムの問題をより多くの人に知っていただき、就活において多様性が尊重されるものとなるよう、文部科学省や国会議員へのアプローチも行っていきたいです。

 就活セクシズムは「LGBTQに関する問題」「フェミニズムの問題」と焦点を絞り問題分析をされることもあると思うのですが、私たちは、ラベリングで分断されてしまうことは望んでいません。というのも、そのラベルには属さないものの、悩みを抱えている人もおり、ラベルだけで見ることにより取りこぼしてしまう人もいるためです。

 例えば、「「一応シスジェンダーではあるけれども、服装とジェンダーアイデンティティを結び付けて見られることに抵抗がある」「ネクタイをしていると『男装したい人』『トランスジェンダー』と決めつけられる」といった声もあり、シスジェンダーとマイノリティの間にいるような人たちもいます。「ジェンダー問わず、一人ひとりの違いを尊重することが重要」であることを伝えていきたいです。

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