昆虫食愛好家、育児の中で「味」だけではない虫の魅力を再発見

文=ムシモアゼルギリコ
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私の昆虫食のきっかけは「漫画メシ」だった

 昆虫食は今でこそ、次世代のたんぱく源としてポジティブなトピックだと注目されつつありますが、私が食べ始めた当時はアンダーグラウンドな扱いでした。メディアに登場するシーンといえば、深夜番組の罰ゲームが定番。虫を食べている姿がメディアに取り上げられれば、「グロいものを食べてる私、特別って感じ~?」と、ネット民から自意識こじらせ女とされてヒソヒソ言われる。個人的に思い出深いのは「貧乏だから虫を食べている」という前提で、某貧乏生活密着番組からリサーチされたこと(いやいや、むしろめっちゃ金かかるよ!)。

 そこから2013年になると、FAO(国連農業食糧機関)が未来の食糧不足問題を解決する可能性のある食材が昆虫であるという趣旨の報告書を発表(※3)したことから、世の空気が一転。世界中で昆虫食が再評価されはじめ、日本でも少しずつポジティブな扱いに変わっていきました。そんな背景があるからか、最近昆虫食に興味を持ち始めたという人たちは、比較的環境意識が高い印象があります。

 ところが私は基本、環境問題や昆虫食のイメージ改善といった啓蒙活動にあまり興味がありません。それは虫を食べ始めたきっかけが「漫画メシ」だったからです。漫画メシとは物語に出てくる食べ物を、リアルで再現する遊びのこと(代表例は「ラピュタパン」)。幼少期から私が親しんでいた漫画や映画には、虫を食べる描写がたくさん登場していたもので「漫画メシのように実際食べたらどんな味がするんだろう?」と心に火がついたのです。例えば『はだしのゲン』(中沢啓治、汐文社)で、ゲン一家が楽しく食べていたイナゴ串。『アタゴオル物語』(ますむらひろし、朝日ソノラマ)でネコが料理する「セミ天」(※蝉の天ぷら)。そして実際食べてみると……ンマ~イ! 意外なおいしさに、衝撃を受けました(もちろん、まずかった虫もある)。

 そんな感じで私の中で、虫はサブカル的な楽しみとして食べるものというポジションでした。基本的に生き物全般は大好きですが、虫が特別好きなわけでもない。むしろ「愛でる」対象としては虫は優先度が低く、「100%食べ物」です。

※3 それまでも、 FAOは伝統的昆虫食文化が素晴らしいことに注目してきたが( 2010年の報告書「Edible forest insects Human bites back」)、 2013年の報告書ではそこからさらに未来へ話を進め、 これまで昆虫を食べてこなかった先進国もぜひ食べようではないか という提案を行った。

テレビ番組や絵本など子供の世界は虫だらけ

 しかし子供が生まれると、また少し周りの景色が変わってきました。絵本や幼児向けの教材、知育アプリなどなど、子供の世界のあらゆるところに虫が姿を現すのです。

 朝、目覚ましがわりにつけているEテレでは、捕食できず飢えるカマキリの悲哀が歌われ、幼児教育の通信講座では、何度も何度も虫の生態が説明されている。カードを差しこむとセミの鳴き声が流れ、どの種類のセミかを当てるという高度なグッズまでついてくるから、すごい。そして誰が教えるわけでもなく、子供らが延々と熱中する虫探し(主な獲物はダンゴムシ)。

 すると今までただおいしく食べていた虫に、また別の魅力を感じるようになってきました。

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 ちなみに現在6歳の娘は、虫を触りはするけれど、食べてはくれません(写真は2歳の頃)。乳児の頃から公園で虫に出会えば「これはおいしい虫だよ~」とか仕込んでいたつもりでしたが、彼女は聞こえていないかのように全面スルー。「虫を食べるか食べないかは、子供の頃からの習慣の問題」って誰かが言ってたのに、おっかしいなぁ。親の口から発せられる意味不明な情報と、家でたまに食べる姿という程度じゃ、ダメなんでしょうね。

 これから始まるこの連載では、子供との生活の中で出会う虫、触れ合う虫、隙あらば食べる虫……そんな様々な虫のことを書いていこうと思います。今回は、簡単な自己紹介まで。これから始まる虫語りを、どうぞよろしくお願いします。

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