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2021年、SDGs(Sustainable Development Goal)は6周年を迎える。
テレビ番組やファッション誌で特集が組まれるなど、SDGsの認知度は高まっているものの、17の目標のうち日本の取り組みが不十分だとされている分野も存在する。その一つが「ジェンダー平等」だ。
ここ数年、日本でもジェンダー平等への“意識”は高まっているように感じるが、なぜ“取り組み”は不十分なのか。現状の問題点や今後の改善策について、SDGs市民社会ネットワーク理事の長島美紀さんに話を聞いた。

長島美紀(ながしま みき)
SDGs市民社会ネットワーク理事 認定NPO法人Malaria No More Japan理事、合同会社ながしま笑会代表、政治学博士。 大学で研究活動の傍らNGOに関わったのをきっかけに、これまでさまざまなNGOや財団の広報・キャンペーン業務を経験。08年より20年まで早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンターではコーディネーターとしてマラソン元日本代表の瀬古利彦氏のチャリティ駅伝大会の運営に10年以上にわたり従事。12年より理事を務める認定NPO法人Malaria No More Japanでは「ZEROマラリア2030キャンペーン」を運営している。
日本のSDGsの現状
——まず、SDGsの17の目標のうち、日本ではどの目標に取り組んでいる企業が多いでしょうか。
長島美紀さん(以下、長島):外務省が運営している「Japan SDGs Action Platform」では、企業や団体でのSDGsの取り組みが紹介されており、数としては「⑦エネルギーをみんなにそしてクリーンに」「⑫つくる責任つかう責任」「⑬気候変動に具体的な対策を」「⑰パートナーシップで目標を達成しよう」が多いと感じます。つまり傾向としては、環境問題、消費、再生エネルギーに取り組んでいる企業・団体が多い印象です。
一方、国際レポートである「Sustainable Development Report(持続可能な開発報告書)2021」によると、日本が遅れをとっているのは、「⑤ジェンダー平等を達成しよう」「⑬気候変動に具体的な対策を」「⑭海の豊かさを守ろう」「⑮陸の豊かさも守ろう」「⑰パートナーシップで目標を達成しよう」の5つです。
少し前まで、日本で環境問題への取り組みというと、木を植えるとか、ゴミ拾いをするといったものが主流でした。それらも大切なことではあるものの、地球温暖化や生態系の変容といった環境全体の問題に意識が向くようになったのは最近です。環境問題に取り組んでいる企業は多いにもかかわらず、遅れをとっているのはそこに理由があると考えられます。
——SDGsの一環として環境問題を押し出す企業は多い一方で、「ジェンダー平等」については言及しない企業が多いように感じます。
長島:環境問題やエネルギー問題は「温暖化」「脱炭素」と言われるように、「どう解決するか」がわかりやすいと思うのですが、ジェンダーについては、具体的な解決策がわかりにくい部分があるからかもしれません。
一方で、社会全体のジェンダー平等への“関心”は高まっているように感じます。と言うのも、日本政府は2019年の年末に「SDGsアクションプラン2021」を策定しているのですが、そのパブリックコメントではジェンダー関連の要望が多く見られました。
また、「人権問題」の枠組みで見ると、消費者のサプライチェーンへの意識の高まりも見られており、モノづくりの現場で搾取がされていないか、ということにも注目が集まっています。つまり、「意識は高まっているけれども、取り組みは遅れている」のが現状です。
一方で、高齢者や障害者、少数民族、海外にルーツにある人など、社会的に弱い立場の人を「~できない人」と、弱者として切り捨ててしまう風潮の強さも感じます。
今は何不自由なく生きている人でも、怪我や病気でいつ同じような状況になるかはわからないのですが……。
私自身、怪我をして松葉杖生活をしたことがあります。最初はタクシーに乗らざるを得ない生活でした。というのも、公共交通機関が誰にでも使いやすい環境ではないためです。エレベーターがなかったり、段差が多かったり……電車に乗れるようになってからは、優先席で寝たふりをされたこともありました。
なぜそうした状態なのか考えたのですが、「見えない問題」にしがちだからではないでしょうか。
車椅子を利用する方は存在しますが、怪我した当初の私のように、利便性が低ければ公共交通機関を使いません。そのため、外に出る機会が減り、見えない存在になっているのです。いざ見えたときには、社会の許容度が低いため、マイノリティにとっては生きづらい環境です。社会的に弱い立場の人への想像力を育む必要があると感じています。