SDGsは環境問題だけではない 遅れをとる日本のジェンダー平等

文=雪代すみれ
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——ジェンダー平等が前進しない理由として、環境やエネルギー問題に取り組んだ方が企業の利益に繋がりやすいという面もあるのでしょうか。

長島:そう捉えられやすいのですが、米マッキンゼー・グローバル・インスティテュート(2015年)による調査では、全ての女性が男性と同じ条件で同じように働いた場合、世界のGDPは30%近く上がると言われています。EUでも女性の管理職登用を積極的に進めており、経済効果は高いと考えられています。短期的には、環境やエネルギー問題の方が経済的インパクトが大きいかもしれませんが、長い目で見ると、ジェンダー平等に取り組むことも企業や組織に有益と言えるでしょう。

——「ジェンダー平等やダイバーシティが経済的にも有効」とは数年前から言われていますが、その認識が日本にはあまり広まっていないように感じます。

長島:根本的な働き方の問題が改善されていないからではないでしょうか。先日、改正育児・介護休業法が成立し、男性版産休の制度ができました。一方で、「産休・育休が取得できるのはいいけれども、そもそもの働き方に問題がある」といった指摘もあります。

 男性が育児に参加するためには、残業なしで帰宅し、子どもに向き合える時間が必要です。また、2018年の「雇用均等基本調査」によると、男性の育児休業取得日数は2週間未満が7割を超えているのですが、もちろん2週間で育児が終わるわけではありません。ここ数年で働き方の見直しはされてきているものの、生産性を高め、時間内に仕事を終わらせることが、日本全体ではまだできていないように感じます。育休と同時に働き方そのものへの議論も進める必要があります。

 また、そもそもなぜ女性の社会進出が難しいかというと、日本の働き方が長時間労働・残業が前提となっていて、フルタイム労働を諦めざるをえない環境だからです。そして、子育ては母親だけで担うものではないのに、なぜ母親が中心になるかというと、根本には男女の賃金格差や働き方の違いがあります。女性の方が非正規で働いている人が多く、非正規の方が賃金は低いですよね。家庭内の経済的コストを考えると、賃金の低い方が無償労働である家事・育児を担った方が効率が良い、そして、男性がずっと働き続けたほうがいいとなってしまいます。

——「イクメン」という言葉が流行した頃には、既に働き方の問題の指摘があったように記憶しています。つまり約10年前からそうした課題が改善されていないですが、今後、日本企業は働き方を改善していけるのでしょうか。

長島:新型コロナの影響でリモートワークが普及したことにより、状況は変わってきたと感じます。育児や介護のために、会社に通勤して働くことは難しくとも、在宅勤務が可能になることで働ける人が増えました。コロナが収束した後も、働き方の多様性を維持していけるかがポイントだと思います。

なぜ政治家や管理職になりたい女性は少ないのか

——では、国内企業や海外でジェンダー平等に取り組んでいる企業は、どのような取り組みをしていますか。

長島:働き方の多様化が見られます。小さなお子さんがいる人の時短勤務や、産休・育休後の職場復帰サポート、契約社員として働くなど、ライフスタイルに合わせた様々な働き方が推進されるようになりました。

 一方で多様な働き方を認めるだけでは、「マネジメント職に就きたい」「昇進したい」といった希望は叶えにくく、課題が残っています。海外ですと、EU加盟国では、2010年代から女性のマネジメント職に関し力を入れていて、役員割合を決めたり、国によっては罰則規定を設けていたりもしています。

 世界経済フォーラムが公表している2021年の「ジェンダーギャップ指数」によると、日本は156カ国中120位で、特に政治と経済の分野で遅れが目立ちます。

 日本でも女性議員の割合を増やすよう、2018年に施行された「候補者男女均等法」において、各政党に努力義務が課されているのですが、国によっては法律で定められている場合もあります。女性役員や女性候補者を増やすことで助成金がもらえるなど、インセンティブを付与することも必要かもしれません。

 また、クォーター制(会社役員や議員にあらかじめ女性の枠を設け起用すること)の話になると、日本では「議員や役員になりたい女性が少ないのだからいらない」といった意見が出るのですが、そもそも女性だけが立候補しにくい・なりたいと思えない環境が問題ですよね。政治においては、当事者として有権者の声を届けるという意味でも、同じ女性だからわかることもあります。女性が議員や役員になりたいと思えるような後押しも必要です。

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