性的指向・性自認の問題は誰にとっても“他人事”ではない SOGIという考え方

文=エミリー
【この記事のキーワード】

「認める」「認めない」ではない

 日本では特に異性愛主義的傾向が強く、当事者がカミングアウトしづらいと感じる環境(LGBTQ+であることを周囲にカミングアウトしている人は全体の1-3割ほど)のため、「周りにLGBTQ+の人はいない」と思っている人もまだまだ多いようです。けれども実際には、人口の8.9%、11人に一人がLGBTQ+であり、それは左利きの人と同じくらいの割合だといいます。(p.17)

 私自身も、アセクシュアルという言葉を知り自覚するまでは、自分が持つ「友情と恋愛の好きの違いがわからない」という感覚や、「物語や友人の恋愛話の中で何度も触れてきたような恋愛感情が自分にはないのかもしれない」という思いを「普通ではない」「おかしいのかもしれない」と感じ、ほとんど誰にも打ち明けられずにいました。そして自覚した今でも、特に職場などではどう受け止められるかわからず、気まずい思いや傷つく経験をするかもしれないという不安から、あえて積極的に伝えようとは思いません。

 それでも当事者がカミングアウトするかどうか、あるいは周囲がその存在を認識しているかいないかにかかわらず、身の回りには思っている以上に多くのLGBTQ+の人が、当たり前に存在しています。

 その事実を知り、そしてLGBTQ+は「特殊」なのではなく、あくまで数多くあるうちの性の在り方の一つであると捉えるならば、今の日本での社会や法律の在り方が、その中の一部の人々の権利しか保障していない、不平等なものであることの問題が改めてはっきりと見えてきます。

 今年5月に、LGBT理解増進法案についての自民党の会合の中で、参加した議員による「道徳的にLGBTは認められない」「人間は生物学上、種の保存をしなければならず、LGBTはそれに背くもの」といった発言や、山谷えり子参議院議員によるトランスジェンダーへの偏見や差別を助長するような発言が大きな問題になりました。

 世界80以上の国でLGBTQ+に対する差別を禁止する法律が整備され、29の国と地域で同性婚が認められているような状況の中で(p.152-154)、日本ではいまだにそのいずれの法的整備もなく、LGBTQ+の理解を促すための法案を議論する場ですら、差別的な認識や発言が当然のようにまかり通っているようなひどい有り様です。

 「認める」とか「認めない」ではなく、LGBTQ+の人々は今も当たり前にこの社会に存在していること、性の在り方に関する教育や理解が十分に進んでいないことによって、傷つけたり傷つけられたりしている人がたくさんいることを、もっと多くの人が知り、考える必要があると思います。

 そして、セクシュアリティに関する理解を深め、それに対する差別や偏見をなくしていくことは、決してマジョリティにとっても無関係なことではなく、そのまますべての人にとってより生きやすい社会になることに繋がっているはずです。

 今「LGBTQ+」との距離が近い人も遠い人も、誰もが必ず何かしら共感したり反省したり新たな気づきを得られる、性の在り方を丁寧に紐解くことで自分も他の誰かもきっと少し生きやすくなることに近づくことのできる、そんなきっかけをくれるのがこの本。

 まさにプライド月間(世界各国でLGBTQ+の権利を啓発する活動やイベントが行われる期間)でもあるこの6月に、ぜひ多くの人に手にとってみてほしいと思う一冊です。

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