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■産婦人科医・宋美玄先生の妊娠・出産Q&A
Q.妊娠中は、暑い時期でも体を温めるべき?
A.寒くないなら温める必要なし! それよりも熱中症に注意して。
「女性全般はもちろん、特に妊婦さんは体を冷やすとよくない」「妊婦さんが体を冷やすと陣痛が弱くなったり、逆子になったりする」などという説をよく聞きます。じつは産婦人科医である私も、妊娠中に「足首を出していて冷やすと微弱陣痛になりますよ」と言われたことがあるくらいです。冷えると不妊になるとか、婦人科系の病気になるといった説もありますよね。
こういった説には医学的根拠はなく、いわゆる迷信です。体をどんなに冷やしてもいいということではありませんが、妊娠中は血液の量が増えるため、普段は寒がりの人でも冷えにくくなると思います。それに妊娠中に限らず、本人が寒いと思っていなければ、別に普段通りでいいのです。
ところが、なぜか「冷え」に関する迷信は根強く、ちっとも寒くないどころか暑く感じているのに、真夏でもクーラーや扇風機を避けたり、あえて厚着をしたり、腹帯や腹巻きをしたり、レギンスやレッグウオーマーを着たりする妊婦さんもいます。中には、なんとカイロを貼っている人も!
このように真夏に体を温めすぎるのは、すごく危険なことです。熱中症になるかもしれないので絶対にやめましょう。少し寒く感じるよりも、妊婦さん本人はもちろん、赤ちゃんにもよっぽどよくありません。暑い時期は、自分が快適な室温になるようクーラーや扇風機を使ってください。むやみに厚着をしないようにしましょう。腹帯や腹巻きなどをつけなくても大丈夫だし、素足になっても、サンダルをはいても、寒くなければ問題ありません。私も、妊娠中でも夏は素足で過ごしていました。たとえば、クーラーがきいている室内にいて寒く感じたときだけ上着を着たり、ひざかけを使ったりすれば十分です。同様に、冬も快適に感じる程度の着衣でOKです。
そして、「妊娠中は塩分をなるべく控えるように」とも言われることも多いでしょう。たまに「料理に味付けはしないようにしています」という妊婦さんさえいます。これも危険なことです。妊娠中だからといって塩分摂取量を減らす必要はありませんから、普通に摂取しましょう。むしろ、汗をたくさんかく真夏に塩分を摂っていなければ、熱中症で倒れてしまうかもしれません。また、妊娠中でなくても同じですが、汗をかいたら水分をしっかり補給しましょう。
……といったことを、私は夏になるたびに、SNSやインタビューなどで繰り返し繰り返し言っているわけですが、それほど「冷やしてはいけない」「塩分を摂ってはいけない」と思っている人が多いのです。
暑い夏は、妊娠していると、さらに厳しく感じられるだろうと思います。だからこそ、できるだけ快適に過ごしてくださいね。
<今回のポイント>
○冷えに関する迷信は多い
○寒くないのに温める必要はない
○むしろ熱中症に注意が必要
○水分も塩分も普通に摂るべき

宋美玄『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK-プレ妊娠編から産後編まで! 』(内外出版社)
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