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■産婦人科医・宋美玄先生の妊娠・出産Q&A
Q.妊婦健診のときに体重は増えないほどいいと言われました。
A.お腹の赤ちゃんの発育のためにも適正な範囲の体重増加は大切です
「やせていれば産道に肉がつかないから安産」「太ると難産になるし、体によくない」という説をよく耳にします。医療関係者の中には、妊婦さんが痩せていれば痩せているほど優秀だと褒めてしまう人さえいます。そうすると、妊婦さんの中には体重増加が5kgくらいにとどまってしまう人も。一瞬、体型の変化も少なくスタイルが維持できるうえ安産だなんて、とてもよいことだと思われるかもしれません。でも、これは大間違い。安産になるとは限りませんし、赤ちゃんとお母さんの両方に栄養が不足してしまうので決してよくありません。
じつは妊娠中のお母さんの栄養状態が悪いと、体重2500g以下の低出生体重児が生まれやすくなります。低出生体重児は、様々な合併症を起こしやすく、将来的にメタボリック症候群や肥満、高血圧や糖尿病などの生活習慣病になりやすいことがわかっているのです。そして、今、日本で生まれる赤ちゃんの10人に1人が低体重出生児です。低体重出生児が生まれる理由はさまざまですが、ひとつには妊娠中の体重増加が十分でないということが挙げられます。
そのほか、私たちのでは糖質が不足すると「ケトン体」という物質が作られ、胎児に発育に悪影響を与える恐れがあります。やはり、お腹の中で赤ちゃんが育っているのですから、適正な範囲で体重は増えたほうがいいのです。
そういった背景もあり、今年(2021年)3月には、妊娠中の体重増加の目安が改正されました。妊娠前が普通体重(BMI18.5以上25.0未満)の場合は10〜13kg、低体重(BMI18.5未満)の場合は12〜15kg、肥満1度(BMI25.0以上30未満)の場合は7〜10kg体重が増えるのが望ましいとされています。肥満2度(BMI30以上)の場合のみ個別相談です。(※)
<BMI値の計算の仕方>
体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))
改正前は、標準体重で7〜12kgの体重増加が望ましいとされていて、この範囲内でも体重が増えすぎだと、妊婦さんを厳しく指導する医師や助産師も多かったようですから、大きな違いですね。
ですから、新基準をきちんと把握して、必要な範囲で体重が増えていくよう、できるだけしっかりバランスよく食べましょう。たとえBMI値ごとの上限まで体重が増えても絶食やダイエットなどは禁物です。かかりつけの医師と相談のうえ、食べ過ぎに気をつける程度にしましょう。
※妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針(令和3年3月)概要
<今回のポイント>
○ 妊娠中の体重増加は必要なもの
○ 普通体重で10〜13kgが目安
○ 目安は2021年3月改定された
○ 低出生体重児にはリスクがある

宋美玄『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK-プレ妊娠編から産後編まで! 』(内外出版社)