いきすぎた自然派&キラキラスピリチュアルの有名人、この二人に極まれり!

文=山田ノジル
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止まらない選民意識

 さてさてさて。大トリとなるラストは、完全に異世界へ転生した作家・蝶々です。2002年、銀座ホステス時代に書いていたブログ「銀座小悪魔日記」を出版し、作家としてデビューした人物です。小悪魔ブームの火付け役と言われ、モテるにはどんなテクニックが有効か? 男心をわしづかみにするには? 俗世界の指南書を世に送り出していましたが、2004年からパワースポットめぐりや神社めぐりを開始。モテの教祖からスピ教祖へとシフトチェンジしていきました。

 モテ教祖時代も大上段からものを言うぶっ飛んだ作風が特徴でしたが、スピ界入りしてからは「私は特別」という選民意識が、狂気かと思えるほどに次元上昇しています。スピリチュアルを文芸で描く大御所・吉本ばなな(以下、ばなな)との対談本『女子の魂!』(マガジンハウス)も強烈でした。同書における、蝶々の主張はこんな感じです。360度「スピしぐさ」そのものですが、ここまで自分アゲしてしまう物件はなかなかお目にかかれません。

※( )内は山田ノジルのツッコミです。

ばななと蝶々は、古代の巫女仲間。転生によって人間をやり尽くしているので、人間の本質的なことが見える。ふたりは生まれつき特殊で、スピリチュアル・インデックスが多い。(2008年に発行された『小悪魔な女になる方法』では「霊も前世もオーラも見えず、超能力ももちろんゼロ」って書いてあったけどなあ)

世界中のどこに行っても、自分にはプリンス級の男が寄ってくるが、それは彼らが抱える「家の業」を祓ってもらいたいという本能から。でも、いち男性を祓うために自分の光やエネルギーを使いたくない。(名家や資産家が何かしらのお家騒動を抱えているのは超絶よくある話でしょうし、そしてそういう方々が有名かつ目立つ蝶々と出会うことも、何ら不思議はなさそうなのですが……)

九州の神社の高位の神官に「あんたは宇宙から来た」と言われはじめる。神職と間違えられることもよくある。(神主も太客にはリップサービスすんのかな~と、ゲスな庶民は思いました)

自分は清らかすぎて、精進料理とかを食べる生活を送っていると波動が上がりすぎる。酒煙草を意識的にやらないと、この世にいられない。ゴシップ記事を読んだり衝動的にファストフードを食べたりするのは、現世と調和するため。(あらやだ。ホラー映画を観まくる私も、やっぱり清らかすぎるからでしょうか?)

宇宙や天界から降ろしてきた光を使い、周りの人へお祓い&プロテクトを施している。だから自分と会うと、涙が出た、お腹壊した、吹き出物が出たなどのデトックスの作用が報告される。(不調ですら自分の手柄にする思考回路はすごいぞ)

 ちなみにばななとはイマイチ話がかみあっていないのですが、この対談をどう読むかを、あとがきでばななが必死に補足している感も、大変味わい深いポイントです。

モテ教祖からスピ教祖へ

 蝶々はその後、2014年の冬に41歳で妊娠したことも報告されています。幸せいっぱいなマタニティライフは『蝶々、ママになる』(集英社)で語られていますが、さすがスピリチュアル作家への転向。こちらは胎内記憶界隈、子宮系女子界隈でよくお見かけする「胎児と会話する」という新たな設定をぶち込んでいます。

「魂の波動とか発言の視野の広さとか安定感とか、すでに子どもとは思えない。めっちゃしっかりしている」
「地球に来てやりたいことがある。経験を積んだ私が母親であることが、この子にとって動きやすい」

 「おなかに入る前からおしゃべりしていた不思議な赤ちゃん」が、広い視野と価値観を教えてくれたのだとか。さらに、産院からの紹介で行った仙骨調整では「あなたは神の子を宿している」と言われ、さらにその気になっている様子も伝わってきます。ええ、それは一体どんな産院なのか? 作中に医師や施設の名は出てきませんが「庭での薪割り」「玄牝-げんぴん-」というキーワードから、「自然なお産」のカリスマ的存在である、愛知県岡崎市の吉村医院で確定でしょう。産院の母親学級では胎児とおしゃべりできることを「あるって思ってコミュニケーションとろうと試みたら、詰まっているものがとれて開通するよ!」と力説したエピソードも登場しますが、なるほどこの産院を選ぶお母さん方なら受け入れてくれそう。

 「神の子」「宇宙から地球にやってきた」「子どもが自分を選んで生まれてきた」あたりは「胎内記憶」定番の展開ですが、コラボ大好き胎内記憶業界と関わっている気配はあまりありません。彼女の発信からは、自分はそのへんのスピ女子とは格が違う、と自負している様子が度々伝わってきますから、雲の上の存在を演出する戦略であると思われます(でもオリジナルのパワーストーンは売ってるのが平凡だわ)。

 モテ教祖のままでは、年齢的にも頭打ちになるのは必須。そこからスピ教祖へと鞍替えしたのでしょうけど、自分アゲの芸風は変えていかないと、今の時代にスピリチュアルを求める人たちの心は離れていきそうです。

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 さまざまな方面で活躍していた人たちが、今やトンデモ。この流れは、他にもいくらでも出てくるでしょう。いかにトンデモが活躍しやすい世の中であるのか。私たちは今、百鬼夜行の行列が、果てしなく長く伸びていくのを目撃しているのです。

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