
Getty Imagesより
「ニーズや空気を読む力」という言い方をしてしまうと、なんだかビジネスライクというか、冷たい感じがしてしまいますけれど、そういった姿勢がダメかっていうと、そんなことはないと思うんです。
そもそもエンターテインメントというものは、大衆のニーズや時代の空気を先読みし、「いま必要なのはこういうメッセージ」というのを嗅ぎ取れなければ支持されませんから。
それに面白いもので、テーマに対する愛であるとか、深い理解がなければ売れません。だからつくり手たちは作品に落とし込むのにあたり、社会でなにが起きているかを徹底的に勉強していると思うんです。
──いまおっしゃっていただいた要素は音楽に限らず、すべてのエンターテインメントの基本であるようにも思えますが、なぜ日本の音楽業界ではそれができないのでしょうか。
K-POPがこれだけ早いスピードで新しいことにどんどんチャレンジできるのは、日本に比べてポピュラー音楽業界の歴史も浅く、ルールや伝統に縛られていないから、というのはあると思いますね。
日本の場合、「こんなことを言ったら批判される」といった、悪い意味での空気の読み合いが発生しがちです。それでは新しいものも生まれて来ないし、スピードも遅いというのがあるんだと思います。
一方韓国の場合は業界自体も若いですし、「これがいまウケてるんだから」「これからの時代はこうだから」と素早く決断し、それが成功しようと失敗しようと、構わずどんどん挑戦していけるのではないでしょうか。
ただ一方で、日本には日本の良さがあるとも思っています。
K-POPはトレンドの移り変わりが非常に速いわけですが、その結果として、業界に長く残り、作品を発表し続ける作家はそれほど多くないんですよ。
1990年代から活躍し続けているシンガーソングライターのユン・ジョンシンのような人はいるものの、阿久悠・筒美京平・松本隆・小室哲哉などなど、「大家」と呼べるような作家の成長と変遷を継続的に楽しむことができる土壌はあまりありません。
竹内まりや「プラスティック・ラヴ」、松原みき「真夜中のドア〜Stay With Me」といった40年近く前の楽曲が突如ブレイクし、世界中で日本のシティ・ポップがブームを起こしていますけれど、こういったことが起こせるのは当時のミュージシャンの多くがいまも活動を続けているからです。そういった意味では日本には日本の良さがあるとも思うんですよね。
(取材、構成:wezzy編集部)
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