森戸やすみ先生に聞く「なかなかおねしょが治らなくて心配です」

文=森戸やすみ
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小児科医・森戸やすみ先生の子育てQ&A

Q.なかなかおねしょが治らなくて心配です

A.だいたいは自然に治りますが、心配な場合は小児科で相談しましょう

 これから始まる夏休みのほか、冬休みや春休みなどの長期休暇になると、どこかに宿泊する機会が増えるだろうと思います。親戚や友達の家に泊まったり、林間学校やキャンプに行ったり。そんなときにとても困るのが、おねしょです。ご本人はもちろん親御さんも、おねしょを他人に見られたらどうしよう(子どもがショックを受けたらどうしよう)、後処理はどうしようと心配になりがちですね。中には本当は宿泊に行きたいけど、おねしょの心配から断念する子もいるようです。

 よく「うちの子はおねしょが治りませんが、病気ではないでしょうか」と心配される親御さんもいます。まず、子どもが小さな頃は、尿をためておく膀胱の容量が小さく、さらに尿を濃縮して量を減らす抗利尿ホルモンの分泌量が少なく頻繁に排尿するため、おむつが必要です。幼児期のどこかで日中にトイレに行けるようになっておむつが不要になり、さらに夜間もおむつが不要になっていきますが、その時期には個人差があります。よく「おむつはずし」が早いほうがいいと言いますが、特に急がないといけないということもありませんし、無理やり早くしようとしても難しいことが多いでしょう。小さな子が排尿をコントロールできず、おもらしやおねしょをしてしまうことがあるのは普通のことです。小学生でも、6〜10%弱の子がおねしょをしてしまうことがあるというデータもあります。意外と多いですね。

 では、何歳からだと治療が必要でしょうか。2016年6月、12年ぶりに新しい夜尿症診療ガイドラインが発表されました。2014年の国際小児尿禁制学会の基準に沿い「5歳以上で月に1回以上のおねしょが3か月以上続く場合」が夜尿症と定義され、本人や保護者が悩んでいる場合に治療することをすすめています。気になる場合は、お子さんと相談のうえ、小児科を受診してみましょう。

 小児科では、まず身長や体重やバランス、発達状況をみます。そのうえで、おねしょの頻度、量、普段の水分の摂り方などを確認することが多いでしょう。

 受診前にどのような状況のときにおねしょをするかなどを観察し、メモをとっておくとスムーズです。夜尿症の原因は、抗利尿ホルモンが少ないことで起こる「多尿型」、尿量は多くないけれど、膀胱が成長途上であることから溜められない「膀胱型」、どちらの要因もある「混合型」などに分類されます。おねしょの原因は、紙おむつを使ったからだとか、親が甘やかしたからだとか、子どもが怠けているからなどではなく、機能的な問題なのです。

 治療は、まず生活の見直しから。なるべく規則正しい生活をする、日中に水分を多く摂り夕食後は少なめにする、排尿のパターンや量をメモする、寝る前にトイレに行くなどです。抗利尿ホルモンは夜中ぐっすり眠っているときに分泌され、成長とともに尿がためられるようになっていくため、毎晩深夜に起こしてトイレに連れていくのはあまりよくありません。そのほか、水を感知するとアラームがなるものをパンツにつける「アラーム療法」やミニリンメルト錠などの薬を飲む「薬物療法」があります。また、おむつをはく、おねしょシーツを使うなどの対策もとれるのです。

 最後に多くの場合、夜尿症は自然に治っていきますから、焦らなくても大丈夫。排尿に失敗した子どもはたいてい傷ついていますから、片付けは大変だと思いますが、責めたりはせずに見守ってあげてくださいね。

<今回のポイント>

○   規則正しい生活をする
○   夕食後の水分摂取量を減らす
○   おねしょアラームをつける
○   おしっこの量を減らす薬を飲む

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