丸川珠代大臣が恐ろしい 思想も執念もなにも感じられない「虚無」の政治家

文=平河エリ
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写真:つのだよしお/アフロ

連載「議会は踊る」

 丸川珠代五輪担当大臣の顔を見ない日はない。

 東京を歩いていてもそうだ。いわゆる二連ポスターで、丸川氏は大人気である。なんせ、前回の選挙でも100万票をゆうに超える得票を獲得し、公明党山口那津男代表を超えてトップ当選している。

 アナウンサーから議員に転身したのが14年前の2007年。今や、オリンピック担当大臣だ。国家的関心事項であるオリンピックを担当する大臣ということで、その顔は毎日メディアに登場している。

 東京オリンピック・パラリンピックのボランティアへの新型コロナウィルス感染症ワクチン接種について、2回目の接種が間に合わないことに触れて「1回目の接種で、まず一次的な免疫をつけて頂く」などと根拠のない発言を行ったことや、会場での飲酒について「ステークホルダーの存在がある」と発言をして批判を受けたことは記憶に新しい。

 私は丸川氏が怖い。キツイとか、表情が怖いとか、そういった話ではない。丸川氏が政治家として何を目指しているのかがわからないからだ。

 丸川氏の政治家としての活動は、2007年の参院選、前代未聞の「投票漏れ」によって始まった。丸川氏は2004年に帰国して以来、6回の選挙で一度も投票に行かなかった。そしてそのことに、初出馬まで気が付かなかったのだ。

 この光景は、私の頭の中に今もこびりついている。もちろん投票に行くか行かないかは本人の自由である。しかし、常識から言えば、選挙に行かない人が選挙に立候補するのは、ありえないことだ。

 選挙に行かない、というこの一点を持ってしても、丸川氏がそもそも根本的に「政治」に興味がないのではないかという疑惑は晴れない。

 次に丸川氏が話題になったのは、「愚か者めが」「このくだらん選択をしたバカ者どもを絶対忘れん」という野党自民党時代の「ヤジ」の酷さだった。

 このヤジは「子ども手当」の強行採決を行った民主党に対して向けられたものだったが、一体何が「くだらん選択」だったのか、10年たった今はよくわからない。

 この発言が自民党支持層にウケた。自民党は「愚か者めが」Tシャツまで作って宣伝した。最初の選挙は4位だった丸川氏は、やがて、東京都では必ずトップ当選する押しも押されもせぬ人気議員となったのだ。

 数奇な運命だが、この「愚か者」発言があったからこそ、丸川氏は大臣まで登り詰めたと言えるのではないか。そして、丸川氏は現職の五輪担当大臣であるだけではなく、男女共同参画担当大臣でもある。

 直近で話題になったことといえば、選択的夫婦別姓についての発言だ。

 丸川氏は、男女共同参画担当大臣に就任する前に、選択的夫婦別姓制度の導入に反対する文書にサインをして、制度導入に賛同する意見書を地方議会で採択しないよう求める文書を送っていたのである。

 そのことを国会で福島瑞穂参院議員に問われ、「個人としての考えはあるが大臣として反対したわけではない。反対かどうかの答弁はできない」など7回に渡り答弁を拒否し続けた。

(実際の映像)https://www.youtube.com/watch?v=3jfmr_ll9zo

 最終的には「家族の一体感について議論がある」などと答弁をしたが、この答弁もよくわからないものだった。

 選択的夫婦別姓と子ども手当を否定することで、男女共同参画担当大臣になったというのは、どれだけ聞いても理解し難い話である。

 しかし、これだけを持って、丸川氏が復古的、あるいは極右的な人間であると断じるのは極めて早計である。いや、むしろ、丸川氏からはそういった復古的な思想「すら」伝わってこない。

 例えば三原じゅん子参院議員は選挙特番において「神武天皇は実在の人物」と発言して話題を呼んだ。有村治子参院議員は国旗の順番について触れ、「NHKはどこの国の放送局なのか」と発言した。しかし、丸川氏はそういった復古的発言からは無縁で、記憶に残っているのは政治的発言とすら言えない「ヤジ」である。

 このような経歴と発言を振り返って考えると、丸川珠代参院議員・五輪担当大臣の本質は「虚無」であると言わざるを得ない。参院3期、すでに14年のキャリアを持ち、大臣を3回も勤めた政治家であるにも関わらず、丸川氏が政治的にどのような思想を持っているのかは全く伝わってこないし、丸川氏が目指す国家像がいかなるものであるのか、私は知らない。

 それは、オリンピックについても男女共同参画についてもそうである。丸川氏がどのような五輪を目指しているのか、感染症対策と五輪開催のどちらにプライオリティを置いているのか、私には全く見えてこない。

 橋本聖子前大臣から伝わってきた五輪への執念すら、丸川大臣からは感じないのだ。

 そう考えればそう。誰も見えない競技場でグルグルと聖火が回り、黙って観戦して歓声も挙げずに家に帰ることを強制される「虚無」のオリンピックを担当する大臣としては、最もふさわしい政治家であると言えるのかもしれない。

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