日本政府による「五輪一人相撲」…開会式まで1カ月切るも、不手際続く

文=ダースレイダー
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Getty Imagesより

●ダースレイダーの「小学生からやり直せ」(第6回)

 東京五輪開催が近づいてくる。橋本聖子組織委員会会長の言葉を借りるならば「足音が聞こえてくる」。まるで進撃の巨人の地ならしの如く……そこにいたら踏み潰されてしまうのではないか?

 それでも世界中からアスリートや関係者など9万人が結集しようとしている。安心安全な大会という看板に対して、次々と巨人のように襲いかかってくるタスク。だが、その巨人は人類が自ら作り出したものだった……とそこまで漫画に寄せる必要はないのだが、自分で出した看板に自分で挑戦するという五輪一人相撲という競技はすでに開始されているようだ。

 選手団も次々と来日している。2032年の五輪開催を控えるオーストラリアはいわば豪州国威発揚の第一弾として日本と相似形のような使命を担っているわけだが、次に来たウガンダ代表の選手からコロナ陽性者が出た。

 大阪の泉佐野に移動してからさらに一人の感染が判明し、帯同した職員も濃厚接触者に認定された。安心安全の為の鉄壁の壁、ウォール・コロナを築くべき空港の検疫はウィルスに易々と突破され、ホテルに着いてからの検査で新たな陽性者が判明した水際の不手際が際立った。慌てて空港の検疫体制を見直すようだがなぜこんな事態すら想定していないのか?

 このタイミングでIOCの理事、コーツ氏も来日。14日の待機期間を守ったとして小池百合子都知事に褒めて欲しいと言い出した。決まりを守っただけで褒めろ、と言うからには守る気ないんでしょうね。でも、その14日間も詳しく見てみるとレストランでの個室利用やコンビニ利用という抜け穴が用意されている。五輪関係者に用意されたホテルでは組織委から朝食のオファーしかなく、ホテル側も食事をどうするのか困惑しているというが、これでは穴というか、ドアが開いているに等しい。

 海外からの9万人にはそもそも善意に基づく行動規制しか出来ない。平井“ワニ動画” 卓也デジタル大臣はアプリを落としてもらうと言うが、スマホを2台持ってアプリを入れた1台は部屋に置いておけば移動は自由だろう。

 そもそもこのアプリで9万人分の位置情報をリアルタイムで誰がモニタリングするのか? パソナからこの仕事の人材派遣もしてもらっているのか?

 僕は多くの海外ジャーナリストが日本に放たれてどんな記事を書くのか興味津々だ。つい先日も、選手村で配られるコンドームは選手たちが帰国後に使用するよう求められるというギャグのような規定をCNNが報じて賑わいを見せていた。

 今年の1月から続く緊急事態宣言やらまん防やらで政府や東京都はコロナ対策をいつの間にかアルコール対策と勘違いしてしまったようで、酒類提供を禁止してみたり、「2人で90分」というデートスタイルにしてみたりとアルコールを提供する業種に極端に負担をかける謎の疑似禁酒法を繰り返しているのだが、その一方、組織委は五輪では酒類提供を検討していた。

 みんな我慢していたお酒、五輪で飲めるよ!と大規模飲酒センターこと居酒屋五輪がド派手に開店しそうな勢いだったが、丸川珠代五輪担当大臣はステークホルダーと名指ししたスポンサー企業、アサヒビールが逆に慌てることになる。

 スポンサーだけが疑似禁酒法を抜け出す格好になってしまえば、消費者からも業界からもスーパードライ(超干される)の危険性が大きすぎるからだろう。組織委も慌てて飲酒案を引っ込めた。

 しれっとコロナ対策の観点から飲酒禁止と言ったのだが、流石に昨日の今日ではどの面下げても誤魔化すのは無理だろう。言うまでもないが、税金が投入されている以上は僕ら国民だってそもそもステークホルダーなのだが。

 電通出身のクリエイティブディレクター・佐々木宏氏による演出家・MIKIKO氏の排除と乗っ取りが「週刊文春」(文藝春秋)に報じられた開会式も準備は進んでいる。開会式の内容をばらしたと文春に抗議していた組織委だが、リハーサルでは音が外にダダ漏れ。『シン・エヴァンゲリオン』で使用された「翼をください」がどうやら使用されているようだ。地ならしに飽き足らず、ニアーサードインパクトまで引き起こすつもりなら確かに大友克洋氏の預言の書『AKIRA』の世界も間近かもしれない。

 五輪を巡る議論を開催、延期、中止からいつの間にか観客数にスライドさせてきた政府や組織委は新たなガイドラインに沿って1万人まで観客を入れる方向で調整しているが、この開会式ではスペシャルボーナスとばかりに2万人入れると言い出している。

 五輪関係者は観客とは別枠という理屈らしいが、もちろんコロナウイルスが人を選んで感染するというエビデンスはない。五輪関係者は対策されているというが、先述のウガンダ代表の件を見れば不安が残る。

 ちなみに各会場1万人と言っても7会場ひしめくお台場周辺では合わせて8万人ほどの人が集まる計算で、東京テレポート駅から文字通りそれぞれの自宅にテレポートでもしなければ密を表す模範例のような状況になるのは間違いない。安心安全に自ら挑む一人相撲、完全に押し切られそうじゃないですか?

 ここまで敢えてコロナ対策の話をしたが、僕はそもそも東京五輪最大の課題は暑さだと思っている。暑さ対策の話、ほとんど聞かないんですが編み笠は間に合ってますか?

 平年より高温が予想される今年の夏、なんと全国の小中学生の五輪観覧事業が進行中だ。断る自治体も出てきているが東京都ではそもそも授業の一環として考えていたようで自治体への中止の可能性の周知も遅れていた。

 熱中症対策には外出を控えるのが良いのはもちろんだが、全国の子供たちにはむしろ、今行われている「五輪一人相撲」を観覧してもらいその内容について大いに議論してもらうのが教育効果としては一番良いと思う。こういう大人になっちゃいけません。と言うか、政府と五輪関係者は小学生からやり直せ!

(ダースレイダー)

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