「育休取得」しただけでは不十分! 男性の家庭進出を成功させるため夫婦で話し合うべきこと

文=望月悠木
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前田晃平氏

 2021年6月、育児・介護休業法の改正法が衆議院本会議で成立した。育休を分割して取得できるようになったため、柔軟に仕事と家庭を両立することが可能になる。また、育休対象の男性に対して育休制度の説明や取得意向の確認をすることが企業側に義務付けられ、以前よりも育休取得が容易な空気感の醸成が期待されている。

 現在、男性の新卒社員の約8割が育休取得を希望してはいるが、取得率はわずか7.48%にとどまっている。“イクメン”や“イクボス”などのキャッチフレーズは普及したものの、育休それ自体の普及はまったく進んでいない。今回の法改正は男性育休推進の一歩になったが、育休取得率の低さを鑑みると、今後も継続的な議論が望まれる。

 そこで、自身の育休取得経験から日本社会の問題点について考える『パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ! ママの社会進出と家族の幸せのために』(光文社)著者・前田晃平氏に、育休取得時の感想や男性の育休取得率を上げるために必要ことなど幅広く伺った。

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前田晃平
1983年生まれ。東京都出身。認定NPO法人フローレンスでマーケティング、事業開発に従事。政府・行政に政策を提案、実現するソーシャルアクションを行う。妻と娘と三人暮らし。
Twitter:@coheemaeda

「育休取得した俺はすごい」を捨てた

──まず、育休取得時に感じた理想と現実のギャップをお聞かせください。

 当初は「2人で育休をとったのだから子育ては余裕」と考えていました。しかし、いざ育児に参加すると、寝てくれない、母乳を飲んでくれない、離乳食を食べてくれないなど、自分の思い通りにならないことの連続。赤ちゃんが眠っているわずかな時間に、ご飯を食べたりお風呂に入ったりしなければいけない怒涛の生活を送るようになり、「どうにかなるっしょ!」という考えは早々に消えました。

 加えて、出産前と比較して夫婦喧嘩が格段に増えました。知らず知らずのうちに育児は妻が主導になっており、私は指示待ち状態になることが多かったからです。

 育休取得率が1割を下回っている現状ですので、そんな中でも育休を取得した自分を“パパ偏差値の高い存在”と自惚れていました。しかし、妻からしたら家事育児の貢献度は相対評価ではなく絶対評価です。当時の私の評価は“育休取得した優しい夫”ではなく、“育休取得したのに使えない夫”でした。

 戦力として期待していた夫が役に立たず、産後の心身ともに不安定になりやすい時期とも相まって、口調がついつい荒くなっていたのでしょう。しかし、当時は私も「育休を取得したのに、なぜそんなに責められなきゃいけないんだ!」と反発してしまい、喧嘩に発展することは珍しくなかったです。

 ただ、次第に自分が指示待ち状態になっていたこと、妻の心身が不安定であることに気付くようになり、“パパ偏差値”みたいな考え方は捨て、「ちゃんと頑張ろう!」という気持ちになりました。

使えない夫にならないためには…

──“使えない夫”にならないために、どのような点に気を付けるべきですか?

 よく「男性は家事育児ができない」「育休取得しても邪魔になるだけ」と言った声を耳にします。このような“男性無能論”が出てしまう背景には、“僕ら(男性)は家事育児ができないのではなく、パートナーが想定している手順で家事育児ができていない”ということが挙げられます。

 つまり、夫婦どちらかが家事育児を主導することによって、求められるハードルが異常に高くなり、そのハードルをもう一方が越えられないために、家事育児を主導している方がイライラしてしまうのです。

 例えば、ルールがガチガチに固められた店舗(前田家の場合は妻)に、新しく入ったアルバイト(私)はすぐに順応できません。その結果、店舗側は不満を募らせ、「なんでこんなこともできないの!」と怒鳴ってしまう。一方、アルバイト側は理不尽に怒られたと感じ、出勤しなくなってしまう。これが“男性無能論”が生まれる原因です。

 こうした状況を回避するため、父親もアルバイトではなく“オープニングスタッフ”として、当事者意識を持って積極的にコミュニケーションをとりながら、家事育児のやり方やルールを一緒に0から作り上げていく姿勢をもつことが大切です。

 先述した通り、家庭内のルールが固定された状態から家事育児に参加しても、どうしてそんなルールになっているのかを理解しなければ、地雷を踏み続けて夫婦関係を悪化させるリスクがあるからです。

 他方、家事育児を主導している側も、パートナーが活躍できない原因を知っておくべきです。家事育児はどうしても“自分にとって”一番都合の良いやり方を採用してしまいます。パートナーと一緒に業務フローを作って、お互いが効率的かつ納得できるかたちを模索していくことが大切です。

──家事育児を分担しても「自分の負担が大きい」といった感情が双方に生じます。この“やってあげている感”とは、どのように折り合いをつけると良いでしょうか?

 「トイレ掃除」「アイロンがけ」「公共料金支払い」など、家庭内のタスクを一通り書き出し、それらが終わる毎にチェックをするなど、お互いのタスクを可視化することで、“やってあげている感”は多少軽減できます。

 とは言え、“フェア”という視点は非常に哲学的で、家事育児の負担を5:5にすることは実質不可能です。

 “やってあげている感”に囚われずに、率先して家事育児に関わっていくように習慣づけていくことが大切なのではないでしょうか。

 そのためには、夫婦の時間を確保してコミュニケーションを取り続け、お互いの不平不満を心の中にため込まないことが、最も大切なことだと考えています。

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