「育休取得」しただけでは不十分! 男性の家庭進出を成功させるため夫婦で話し合うべきこと

文=望月悠木
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──気兼ねなく育休取得ができる社会を実現するために、私たちはどのような価値観を共有するべきなのでしょうか?

  “人生100年時代”と言われていますが、その100年のほんの数カ月・数年ぐらいは仕事ではなく子どもと一緒に過ごすことに使っても良くないですか?

 育休中は、本当に目まぐるしく、友人の赤ちゃんを見ると「自分の子どもにこんな時期あったっけ?」と思えるほど光の速さで過ぎ去ります。そんな尊い時期にあくせく働く必要があるのか疑問です。

 確かに育休を取得すると、キャリアを積むための時間は減るかもしれません。ですが、代わりに得るものもあるんです。

 私に関していえば、これまでは“会社の中の前田晃平”しかいなかったのが、育休を取得したことにより、地域の人たちと交流する機会が生まれ、“地域の中の前田晃平”という新しい顔を持つことができました。

 育休取得が地域に自分の居場所をつくり、老後の充実感につながったり、新たに視野が広がることで仕事にいかせることも多いと思います。男性の育休取得には“子育てするため”“産褥期の妻を支えるため”といった役割が大きいですが、それだけではなく、人生の幅広いキャリアを培ってくれる制度でもあるのではないでしょうか。

──職場の雰囲気に負けたり、自分の居場所を失うことへの恐れから育休取得を断念する男性は多いです。そういった方にどのようなアドバイスを送りたいですか?

 大前提として、育休取得したからといって減給や配置転換をすることは違法行為です。堂々と取得して良いと思います。とは言え、“男性は働き続けて家族を支えるもの”というジェンダーバイアスに縛られ、育休取得を躊躇ってしまう気持ちはよくわかります。そういった方はぜひ「パートナーが働くことを望むなら、定年まで1人で働き続けるより、夫婦2人で働けたほうが良くないですか?」と考えてみてほしいです。

 “正社員の妻が出産育児のためにキャリアを断念すると2億円の損失になる”という試算があります。

 男性が育休を取得せずに終わりなき出世レースを戦う場合と、妻がキャリアを継続できるように男性も育休を取得して家事育児に協力する場合では、どちらが精神的・肉体的・経済的に安心安全なのかは容易に想像がつきます。

 配偶者は“パートナー”と表現されますが、本当の意味でパートナーとして配偶者と接している人は少ないように感じます。男女問わず、収入や家事育児を一人で背負わず、パートナーと支え合う未来を考えてみてはいかがでしょうか。

企業と政治の意識改革が不可欠

──育休取得のメリットを語っていただきましたが、具体的に育休取得率のを上げるためにはどうすれば良いですか?

 主に2つあります。1つ目は企業の働かせ方の見直しです。

 男性社員が育休取得を断念した理由に関する調査結果では、「職場の人手不足」「会社の育休制度が整備されていなかった」「育休取得が難しい職場の雰囲気だった」など、企業側の課題が上位を占めています。

 まず「職場の人手不足」ですが、それをどうにかするのはマネジメント側の責任です。突然の退職や休職などと違い、育休は事前にどの時期に取得するか予定が組めますから、仕事の引き継ぎや業務の調整などもしやすいはずです。

 次に「会社の育休制度が整備されていなかった」「育休取得が難しい職場の雰囲気だった」などは企業側の怠慢でしかありません。育休は法律で定められており、従業員1人1人の権利を尊重するために直ちに改めるべきです。

 2つ目は国からの子育てに関する支援予算の拡充です。

 いまの日本は子育てに対する支援がまったく足りていません。

 とりわけ、家族手当てや出産・育児休業給付、保育・就学前教育などに行う“家族関係社会支出”の割合は、海外と比較しても著しく低い。家族関係社会支出が増加すると、女性が担っている家事育児を社会がサポートできるようになり、出産育児に関する出費を減らせるだけでなく、安心して子どもを預けることができます。

 にもかかわらず、 家族関係社会支出を増やさないどころか、政治家の中には“削っても良い予算”と考えている方も少なくありません。

 男性が育休取得をためらう理由として、給与やキャリア面での不安をあげる方も少なくないかもしれません。しかし、国からの家族関係社会支出が増加すれば、子育て世帯は育児や教育にかかるお金の心配をしなくてすみますから、もっと育休取得を前向きに考えられると思います。ですので、子育て世代を始めとした若い世代が政治に関心を持つことが、子育て関連の予算をつけるための最大の活動と言えます。

──具体的に私たちはどのように政府にアプローチをすれば良いのでしょうか?

 SNSが普及したおかげで直接国会議員の方に声を届けられるようになりました。「私たち現役世代にちゃんと投資してください!」とメッセージを出し続けることで、大きなインパクトを起こせます。SNSを上手く活用すれば、政策の意思決定のプロセスに介入できるし、実際にそのような事例は数々生まれています。

 “男性の育休取得”が議論されると、“家事育児に無関心の男性vs家事育児に疲弊する女性”といった対立構造が生じやすいです。しかし、男女が手を取り合い一枚岩となり、誰もが当事者意識をもって男性の育休取得が当たり前の社会をつくっていきたいです。

(取材、構成:望月悠木)

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前田晃平『パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ! ママの社会進出と家族の幸せのために』(光文社)

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