農薬忌避、脱資本主義。いきすぎた「自然派」農業に挑む人たちのあきれた主張

文=山田ノジル
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渕上:いろいろなトンデモが大集合していましたね。いかにもなのは、アーシングイベント。携帯の電波が4G、5Gとどんどんヤバくなっていって、体内に悪い電子がたまっていく。でも、くるくる村の畑に行って裸足で立つと、その電子が放流されて病気知らずの身体になりますよと。じゃあ、くるくる村に行かれない人は? そんなあなたも大丈夫! このアーシングマットを買えば! ってやつです(笑)。あとはスタップ細胞を作ろうというイベントもありました。スタップ細胞は本当は存在しているんだけど、それが広まるとみんな病気にならなくなるから、アメリカの製薬会社の利権でもみ消されているそうです。

 ググってみると……なるほど、スタップ細胞であると主張されるまぼろしの何かは、その手の方々のブログなどで結構紹介されている物件であるよう。玄米に水と塩、黒糖を加えて発酵させたものを飲むと、体の細胞が活性化されて体内のスタップ細胞も自然に活性化されるんですってよ、奥さま。結果、不老不死みたいにスーパー健康体になる! いいえ、ならないでしょう。私の知ってるSTAP細胞と違うわ。世界は広いわ。

渕上:ウンコがどうとか言っているあたりはまだ笑えていたんですが、イベントのなかに反ワクチン動画の上映会などが混ざってきたあたりから、シャレにならないと思うようになりました。反医療となると、子どもたちが巻き込まれますのでね。

 そういったイベントは、参加者のほとんどが女性だったとか。子どものためを想い「体にいい野菜」に引き寄せられた結果、そうしたディープなトンデモにはまっていくのは、よくある沼のしかけです。

渕上:基本、よその土地からやってきて「農業をやりたい!」という人に対し、地元の人たちは応援するんですよ。ところが具体的にアドバイスをすると頑なになって耳をふさぎ、真っ当な手法は拒否する。そしてうまくいかなくなると「田舎は閉鎖的だ」とか言い出す。さらに自然派たちの困ったところは、作物がうまく育たない自分の問題だけでは終わらず、周りも迷惑被る点です。農薬が~除草剤が~といってそれらを使わないので、虫や雑草の発生源になる。また、種イモ代をケチって自家養殖したものを使えば、センチュウなどの病気が次の代で発生する原因となり、もし発生したら周囲の畑は大迷惑です。種イモを買い、農薬などを使うのはそれらを予防するためなんですが、自然派の人たちはそういった影響を気にしない。

 また、自分たちが無頓着なだけではなく、他者を攻撃してくるという実例もあります。直売所など野菜を売っている場で農薬使用を非難され、「◎◎を使っているのでダメだよね!」と大声で言われたり。そもそも普通の農家は、安全性の確立されているものを基準値を守って使用しています。守らなければ、残留農薬検査などでバレますしね。それなのに、あたかもこちらが悪みたいに風評被害をされるんです。私はいつも言っています、それを公開の場で話あいましょう、と。嘘をついているのはどちらなのか、はっきりしますから。しかしそうすると、逃げてしまう。

 何かトラブルが発生しても自然派スピ系の人たちですと、お約束のポエムで「宇宙のリズム」とか「気づき」とか「自分に必要な試練」とか言ってぼんやりさせ、ふんわりはぐらかす気も……。

渕上:まさにそのとおりです。「やっぱり自然農は大変だ。でも僕は負けません!」みたいなストーリーに持っていく。「農薬を使っている農家ならこんな苦労をしないけど、僕は大変! でもやる!」みたいな。つける薬がありません。彼らの場合、思想を表現するツールが農業なんですよね。農業がやりたくて、結果自然派になったのではない。イベントに集まってくるような人たちに感じる共通点は、怒りを抱えていることでしょうか。今の時代、誰しもが現状に不満や怒りを抱えていると思いますが、私が出会ったトンデモさんたちは、自然派というツールを使って怒りを表現しているように思えました。

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 何か実現したい暮らしがあるのであれば、孤島に行って単身でやってくれと思ってしまいますが、ニワカにはそこまでの力があるはずもなく、意識高い取り組みを発信して承認欲求を満たすには、あくまで一般社会の中でアクションを起こすのが重要なのでしょうか。「田舎に行ったらひどい目にあった」というのは、昔からホラー作品の定番設定ですが、今の時代は「そとから異質なものがやってくる」ほうが多いのか?

 渕上さんの活動する長崎県が、トンデモを支持する元農林水産大臣の出身地であることも関係していることも、大変興味深いポイントです。いずれ「日本トンデモ発生地マップ」を作りたい私としては、これから先も長崎県は要チェック。まだまだ他のトンデモ事件が発生している様子ですので、またいずれ続報をお届けできればと思います。

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