【シリーズ黒人史11】Black Lives Matterへと続くアメリカ黒人の歴史~ジュリアーニNY市長

文=堂本かおる
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行き先を失ったジュリアーニ

 市長と市警上層部によるストップ&フリスクの奨励は警官たちに「俺たちこそがストリートのキングだ」という錯覚を抱かせ、「やりたい放題」にさせたと言われている。アブナー・ルイマへのリンチがどれほど常軌を逸していたかが、それを証明している。

 当時、黒人市民はNY市警を恐れ、同時に市警をコントロールしていた市長のジュリアーニを忌み嫌い、「ジュリアーニ・タイム!(ジュリアーニの時代だ!)」と揶揄した。ニューヨークを舞台とした2000年のアクション映画『シャフト』の中で、主役俳優サミュエル・L・ジャクソンが使ったセリフに由来する。ジュリアーニの横暴はニューヨークを超え、全米に知られることとなった。

 黒人市民から警官への不信感も募った。黒人地区で犯罪が発生した際、被害者が警察に通報しない、目撃者が名乗り出ないという現象も当たり前となった。NY市警は市民の協力無くしては治安の維持も困難なことから、市民との融和策に乗り出した。地元警察署と住民との対話集会、ストリートフェアなど地域イヴェントに市警がブースを出し、警官が子供たちと交流する、警官とティーンエイジャーのバスケットボール風景をSNSにアップするなど、地域住人からの信頼回復策を続けている。

 警察暴力の被害者たちの努力も続いている。民事訴訟によって875万ドルの補償金を得たアブナー・ルイマは “アブナー・ルイマ基金” を設立し、祖国ハイチと米国のハイチ難民への支援を続けている。

 アマドゥ・ディアロの母親カディアトゥ・ディアロは、事件当時から機会があるごとに警察暴力に対する声を上げ続けている。カディアトゥもまた “アマドゥ・ディアロ基金”を立ち上げており、ニューヨーク市と祖国ギニアで若者への教育支援を行なっている。

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エリック・ガーナー事件の抗議集会に参加するカディアトゥ・ディアロ(左)(2014年)(wikipediaより)

 昨年のジョージ・フロイド事件についてインタビューされたカディアトゥは、警官に首を押さえつけられたフロイドが声を振り絞って「ママ!ママ!」と呼び続けたことに触れ、「アマドゥの母親として彼の声を聞きました。そして、すべての母親が彼の声を聞いたのです」と答えている。

 ニューヨークの人種問題に大きな傷痕を残したジュリアーニだが、市長としての人気を利用し、任期終了直前の2000年に上院議員選に出馬している。しかしながら選挙戦中に前立腺がんが発覚して離脱せざるを得ず、本戦では民主党候補ヒラリー・クリントンが当選を果たした。これがクリントンの政治家としてのデビューであった(クリントンは上院議員を9年勤め、2008年の大統領選に出馬するもバラク・オバマに敗れ、オバマ政権の国務長官に。2016年に再度、大統領選に出て民主党候補となり、トランプと接戦の末に敗れた)。

 ジュリアーニはがんの治療のかたわら市長職を続け、翌2001年の911同時多発テロでヒーローとなるも、同年で任期終了。2008年の大統領選に出馬するが支持率が上がらず、早期に離脱。そして2018年、トランプの個人弁護士チームの一員となり、現在に至っている。(敬称略)
堂本かおる

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