
生涯で必要とするエサの8割を食べるようになる幼虫期の最後=5令(ごれい)はドーンとでかくなる。
完全変態を理解してもらおうという親の目論見で、久々にカイコを飼育してみることに。幼虫との触れ合いは楽しんでいるようだが、「お勉強」的な要素は一ミリも受け取らない娘。繭を作るサナギから成虫へと成長していく過程はさてどうなるか!? 親子での虫飼育レポート、後編です。
娘、虫の「完全変態」を理解できるか⁉︎ カイコ飼育レポート・前編
絵本『はらぺこあおむし』(偕成社)を愛読していたにも関わらず、イモムシからサナギを経て、蝶になるという虫の「完全変態」をイマイチ理解していない様子の6…
以前に飼育した時もカイコたちの恐るべき食欲に震えたものですが……いや~改めて、すごい。繭を作る直前=幼虫期の最後「5令(ごれい)」になると、ラストスパートとばかりに桑を食って食って食いまくり、その姿はフードファイターのごとし。桑畑のひとつも持ってりゃ問題ないのでしょうが、なにせニワカ養蚕です。虫仲間からゆずってもらった桑の葉しかストックがなく、節約しながらギリギリの量を与えるという懐事情で、常に在庫とにらめっこ。そのため就寝時は「朝まで持つように」と余裕をもって桑を与えることができず、夜中にふと目を覚まして「桑! 桑は尽きてねえが…!」となまはげのように飼育箱にかぶりつく有り様です。
そんな戦いをよそに、日中、桑の葉をシャクシャクパリパリと食む「蚕時雨(こしぐれ)」を「いい音~♪」と楽しむ娘。嗚呼これも、育児で何度も出くわすあるあるだ。世話の大変な部分には関わらず可愛いとこだけを楽しむ身内に、モヤっとさせられるヤツぅ……。今回は親の都合で飼ったので、仕方ないけど。桑の葉を一心不乱にシャクシャク食む姿はいじらしさしかなく、在宅中に気がむいたときは、娘もそれなりに給餌作業をしていました。
余談ですがカイコが羽化した後、メルカリで桑の葉が売られているのを発見。何でも売ってるなあ、メルカリ。ちなみに食用の予定がなければ、カイコ専用に開発された人工飼料を使うのが圧倒的に楽だと思います。

脱皮する期間「眠(みん)」に入ったカイコ幼虫(4令)。上半身を持ち上げたポーズのまま動かなくなる。SFの定番現象「時間停止」のようで神秘的だが、我が家のカイコはなぜ組体操のように重なり合うのか
カイコは1令から4令まで脱皮と眠を繰り返し(番外編参照)、幼虫期のファイナルステージ5令になってから約一週間ほどたつと、繭を作り始める「熟蚕(じゅくさん)」へと育っていきました。熟蚕になると、それまで限られた場所でモリモリとエサを食べるだけだった幼虫が頭をぶんぶん振ったりウロウロと動き回ったりと活発になるので、祭り感すごい。ここまでの世話に新生児との共通点を感じていましたが、このステージでは、寝返り機能実装とともにすごい勢いで動き出し、ちょっとビビらされるずりばい期が思い出されます。でも、主な世話はこれにて終了というところがヒトと比べて雲泥の差。後はもうエサやりは必要なくなり、繭を作るのを待つばかりなので。
ここまでたどり着くと、肩の荷を降ろしたようなちょっとした解放感です。ところが「カイコが繭を作り始めるよ! サナギになるよ!」とテンション高く娘に声をかけると……「うわーん!」と大泣き。え~なんでだよ。「お別れ、さびしい~!」。……お別れじゃなくて、大人になるために体を変えるんだってばよ。はらぺこあおむしぃ(以下略)。脱力しながら説明するも「でも、プニプニのシロちゃんが気にいったの~!」なんだとか。娘はわりと保守的な性格ですが、自然の摂理を否定されても困る。サザエさん時空(※キャラクターが歳をとらない)は現実には存在しないことを、ご了承いただきたい。
さて、そんな娘は放っておき(ひどい)、カイコたちを繭を作りやすい場所へ移動させなくてはなりません。今回は2種飼育してみたので、桑の葉チームは紙の卵パックへ。人工飼料チームは、養蚕農家からのお下がりである「まぶし」(カイコが繭を作りやすいように作ってある足場のようなもの)へ。これは格子状に組んだ板でもトイレットペーパーの芯でもなんでもOKで、浮世絵には木の枝をまぶしとして使っている様子も描かれています(ぜひこれも一度やってみたい)。
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