
市販の飼育キットを購入すると、こんな状態で4令のカイコが宅急便で送られてきた。
カイコを飼ってみたいと思ったら、必須情報となるのが「カイコの一生」。飼育に便利な人工飼料を使っても、毎日のエサやりや飼育箱の掃除、温度・湿度に注意する……など、結構手のかかる坊や(もしくはお嬢ちゃん)たちなのです。そこで、一連の成長過程をわかりやすく解説します!
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娘、虫の「完全変態」に大泣き⁉︎ カイコ飼育レポート・後編
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カイコは教材や研究用に販売されているので、「羽化まで確実に世話できる」スケジュールさえ確保できれば、わりといつでも飼育を始めることができます。ただしそれは、人工飼料を使う場合。桑の葉で育てたい場合は、桑の葉が手に入る5~9月に限られます。
卵も業者から購入できるので孵化直後からの飼育も可能ですが、一般的な「飼育キット(エサと幼虫がセットになって販売されている)は4~5令の幼虫からというケースが多いよう。1~3令までのカイコは大変病気に弱いため、一般的な養蚕の現場ではその時期は設備の整った共同飼育所で人工飼料により飼育され、その後農家へ出荷され、桑葉で飼育されているといいます(出典:群馬県 カイコの人工飼料)。
また、通年飼育が可能とはいえ、適切な飼育温度は「25℃以上・適温27℃~29℃・湿度75%」が目安です。18℃以下では活動をやめ、37℃になると死んでしまうので、やはり初夏か秋の飼育が適切なようです。
カイコは、次のように育っていきます。
1・「眠(みん)」を繰り返し、脱皮していく1~4令
卵から孵ったばかりのカイコは、長い毛の生えた2㎜ほどの小さな体です(老眼で目視するにはちょっと辛い!)。毛児(けご)、蟻蚕(ぎさん) とも呼ばれます。桑の葉を与える場合は、細かく刻んで与えます。エサを食べ続け3~4日間で4~5㎜程度に成長すると、約1日静止する「眠(みん)」を経て、脱皮。そして2令へ。これを4令まで繰り返し、ズンズンむくむく大きくなります。※2令、3令は各3~4日間、4令は約5日間。
ちなみに一度桑を与えると、その後は人工飼料を食べなくなります。

まだまだ小さい、30㎜程度の4令カイコ
2・幼虫最後のステージ5令は、まさに「はらぺこイモムシ」

モスラ感出てくる、5令
5令になると、幼虫最後のステージです。5令の6~8日間で、生涯で必要とするエサの8割を食べるといいます。毎日ムクムク大きくなっていくのが分かり、ちょっとした達成感も得られるかも。それと同時に、エサの在庫が尽きてしまわないか、震える時期でもありますが……。孵化したての蟻蚕から熟蚕まで、体重は1万倍に増えていきます。

5令のラストは「熟蚕(じゅくさん)」と呼ばれるステージとなり、体が飴色に変化していきます(おいしそう)。エサを食べなくなり、繭を作る場所を探して歩き回り、場所を決めると糸を口から吐き出しはじめます。
3・繭を作り、サナギになる

糸を吐くと、体が縮んでいく

「まぶし」に作られた繭
熟蚕は口から糸を吐き、約2日かけて繭を作ります。かつての養蚕農家の仕事は、この繭を出荷するところまで。この後、製糸工場で絹糸を取り出す作業が行われていました。昆虫食愛好家の自分は、ここで繭を切り開きサナギを茹でて食べますが。

繭をカットして取り出した蛹。取り出したての新鮮なサナギは、茹でると豆のような爽やかな香りです。市販の「蚕サナギ佃煮」は、糸をとった後なので脂が酸化しているのか、正直食べにくい風味です。

羽化が近づくと、目に色がついてくる。
4・フワフワの愛らしい姿がたまらない、羽化
蛹になって10~15日ほどたつと繭の中で成虫になり、繭(絹)を溶かす酵素を出し、糸をゆるめて小さな穴を作り、頭で押しわけるようにして外へ出てきます。成虫はエサを食べることができず、交尾して卵を産んだら5~10日ほどで寿命となります。

繭から出て、翅がキレイに伸びた成虫(飛ぶことはできない)

繭から出てくる途中の成虫(こちらは2013年に飼育したときのもの)

繭から出てくると、相手を探して即・交尾。カイコの一生は短いので、のんびり相手を吟味しているヒマはない。

1頭の蛾から、400~500個の卵が産まれます。卵のサイズは1.5㎜程度とゴマ粒のよう。数日たつと灰色に変化し、越冬します。
観察してもよし、食べてもよし。インドア派にぴったりな、虫飼育です。
※記載した日数は目安です。飼育環境などにより変わることがあります。

『むしくいノート びっくり!たのしい!おいしい!昆虫食のせかい』(カンゼン)
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