
りんたろー。Instagramより
「若者のオピニオンリーダー」のように取り上げられることが多い、お笑いコンビ・EXIT。
社会問題や政治に積極的な発言をし、かつダイバーシティにも前向きな姿勢を見せてきた彼らだったが、最近になりそのポジションに疑いの目が向けられている。
大きなきっかけは、7月2日に配信されたシングル曲『なぁ人類』(ソニーミュージック)。当楽曲は、EXITの二人が初めて作詞を担当した<現代社会への問いかけを詰め込んだ>曲とのことだった。
配信が始まると、ファンからは好意的な感想が見られる一方で、<正義振りかざすいじめっ子><ポテトヘッドは(what’s rule) ジェンダーレス時代により Mr.& Mrs.を返還 謎めいてく昨今のルール>といったフレーズに対して、「社会問題と向き合い戦おうとする姿勢を冷笑するひどい歌詞」「強者の語る自由」「中立の立場から物申してる感」など批判的な意見も噴出した。
また、曲中には<コロンブスがアメリカ大陸を見つけた時代の方がよっぽど自由と希望溢れてただろ>という歌詞もあり、「コロンブスは今や侵略と略奪の象徴」「勉強不足では」「誰も気づかなかったのかな」など疑問や困惑の声が散見される。
※歌詞は「Sony Music (Japan)」YouTubeアカウント、『EXIT「なぁ人類」MUSIC VIDEO』より引用
非難されているEXITの言動はこれだけではない。セクハラ発言も問題となった。
今年7月1日、タレントのフワちゃんが『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』(TBS系)の企画で、普段とは印象の異なる大人っぽいメイクと服装で、アパレル店員として仕掛け人になった姿をTwitterに投稿。
これに対し、同日、りんたろー。は<フワちゃんてちゃんとしてたらこんな可愛かったのか!泥酔とかしてたら全然なしじゃないな!見直したぜ!!>とリプライしたのだ。
<全然なしじゃない>とは、端的にいえば、「性的な対象になる」ということを上から目線かつ一方的にジャッジしているということだ。「ちゃんとしてたら可愛い」は、「普段は可愛くない」と言っているようなもので、さらに「酔ってたら」「抱ける」とは、二重にも三重にも酷い話である。
当然、このリプライには「セクハラ」「上から目線」など批判が集まった。なお、りんたろー。は後日、当ツイートをしれっと削除したが、一連の流れを記した複数の媒体の記事が残っているため、現在でも詳細を確認できる。
この件には「二人の間だから成立するコミュニケーションでは」といった擁護もあったが、仮にそうであっても、SNSというオープンな場でのやり取りとしては相応しくないだろう。また、「誉めてるつもりでも、容姿に言及するのは相手を傷つける可能性がある」という認識は、広まりつつある概念であり、親しい仲であっても、容姿への言及は慎重になる必要がある。
EXITへの疑念が深まる出来事はまだ続く。7月15日放送の『ABEMA Prime』(ABEMA TV)で、東京五輪の開会式で作曲を担当する予定だったミュージシャンの小山田圭吾の過去のいじめ問題について取り上げた際、りんたろー。は「人としてあるまじき行為」と否定しつつも、「じゃあ清廉潔白な人っていますかって思っちゃう」と小山田の起用を批判する人々に反論。
さらに、「この人の歩んできた道とか、後悔とか、成長とか、変化とかを全部なしにして、この行為だけをクローズアップして。今を見ずに、過去の彼に対して石を投げるってことが正しいのかっていう疑問はありますね」と述べた。
また、兼近大樹も声をあげている人について「一人ひとりが何のために『この人は過去にこういうことをしていただろ!』って叫んでいるのか知りたいですね」と言及。
これらの発言には「清廉潔白な人はいなくても、ここまで酷いことをしてる人は少数」「自分の身近な人が被害に遭っても同じことを言えるのか」「論点をずらしている」などの批判が続出した。
今回の小山田の起用にここまで火が付いている大きな要因は、「あらゆる差別の否定」を掲げているオリンピック・パラリンピックの理念に反するという点だろう。小山田の過去の行いは許されるものではないが、彼が今まで通りミュージシャンとして活動したり社会生活を送ることまで否定しているわけではなく、五輪という場において、わざわざ小山田が作った音楽を使用する必要はどこにもないということだ。ゆえに、EXITのコメントは論点ずらしと言われても致し方ないだろう。
森元会長辞任の際には「ただ攻撃することが目的になっちゃってる」
これらのEXITの発言に、最近では「EXIT無理になった」「“若者代表のご意見番”扱いされてるのが疑問」「化けの皮が剥がれてきたのでは」「逆張りに路線変更したのか」といった声も見られている。
だがそもそも、EXITは一貫して社会的に弱い立場の人に寄り添い、また、根本的な人権問題の知識を持っていただろうか。
例えば、今年2月に東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗元会長の女性蔑視発言が問題になった際、『ABEMA Prime』(ABEMA TV)にて、兼近は森元会長を批判するネットユーザーについて、下記のように述べた。
<何よりも今回で気持ち悪いなって思うのが、自分が被害の及ばない所から石をひたすらぶつけて『降ろしてやったぞ』と。目的が引き下ろすというか『なんか偉そうなジジイを俺が降ろしてやったぜ』みたいな感じがすごい伝わってくる。ほんとに見失っちゃってんなっていう。ただただ攻撃することが目的になっちゃってる>
りんたろー。も<見失っちゃいけないのは、本来の目的はネット上でつるし上げて抹殺することではなく、オリンピックを成功させる、偉大なイベントを成功させるのが目的なんだと。そのために最善で最短の策をとることが重要であって、そこの目的だけ間違えちゃいけないと思う>とコメント。
このときも、今回の小山田の件と同様に、事の本質を理解することなく、「ネット上で声を上げる=弱い者いじめ・ただの憂さ晴らし」と表面的に捉えていた印象だ。
EXIT兼近大樹の発言が物議。森喜朗会長辞任に「降ろしてやったぞ、気持ち悪い」
お笑いコンビEXITの兼近大樹が、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長による女性蔑視問題について自論を述べ、物議を醸している。 兼近は2…
今年4月の『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、「容姿いじり」についてピックアップされた際、若者に容姿イジりがウケなくなっている理由について問われ、兼近は<同じことされるんじゃないかとか、私もその見た目だからこういうふうに言われるんじゃないかとか、あと言われてる当事者じゃなくて、周りが意識高くなっているので、「それをやることで私の周りの誰々が傷つくんだけど」とか、多様性が広がっている時代だからこそ、難しくなってきている>と的を射た回答をしていた。
だが、この際にも、上の世代が作ってきたお笑いは楽しいと感じていることに触れ、<俺は正直変わらないでほしいと思っています>と打ち明けていた。容姿イジりに対して世間のウケが悪くなったことは察知しているが、自分は旧来のお笑いを続けたいというのが兼近の本音ということか。はたまた、大御所芸人に媚びを売らないと生き残れないというテレビ業界の習わしなのだろうか。
メディアと視聴者が創り出した「社会問題に敏感な若者の代弁者」像
前述したように、EXITのこれらの言動にネット上では一部否定的な反応を見せているが、EXITが変わったというより、メディアが持ちあげすぎたり、視聴者が期待しすぎたというのが実態ではなかろうか。
人にはギャップに惹かれやすい側面があるだろう。例えば、真面目そうに見える人が真面目な発言をしても注目を集めないが、チャラく見える人が社会問題に言及すれば、その“意外性”に人は惹きつけられてしまう。
ただ、これらを彼ら個人の問題として片付けることには賛成できない。EXITがブレイクしたひとつの理由は、今までのお笑い界に一石を投じるような実直な発言であり、情報番組へ出演していることから、彼らなりに勉強していることもあるだろう。
しかし、兼近は30歳、りんたろー。は35歳であり、差別に対して今よりも認識が緩かった社会を生きてきた。現状の日本では、10代の若者でも、人権やジェンダーについて深く学べる機会が設けられているとは言えず、自ら興味を持たなければ、問題を根本から理解することは難しい。
社会問題の土台となる人権への知識や意識が育まれないまま、メディアが「社会問題に敏感な若者の代弁者」として安易に持ち上げ、視聴者も過度に期待した結果が、今のEXITの姿なのではなかろうか。
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