
GettyImagesより
女性の体の健康をめぐる動きは今、フェムテック・フェムケアが注目の分野です。フェムテックは女性の健康をテクノロジーで解決しようという取り組み、フェムケアはデジタルなテクノロジーではないアプローチで改善していこうというものです。基本、どちらも今までおざなりにされがちで、我慢を強いられてきた部分も多い女性の健康課題を、時代にあわせた形で適切に対処していこうというものでしょう。
ところがこの流れにも、トンデモが混ざりこんでいます。
当連載でたびたび取り上げる、「腟ケア」物件もそのひとつ。「女性の健康の要は腟ケアである」「今まで見ないようにしてきた性器と向き合ってこそ、女の人生が充実する」なる、結構(相当?)無理めの主張。
特に婦人科・漢方内科を専門とする駒形依子医師の発信は、現代社会の流れに逆行する一部の狭い層をターゲットにしているかのように思え、私から見れば婦人科系のディストピアです。著書『膣の女子力』(KADOKAWA)によると「腟は女性の象徴」「腟の健康を整えることが、女子のたしなみ」と言いますので。楽しい恋愛、気持ちいいセックス、自然妊娠、スムーズなお産。それらのためには腟ケアが大事……だと!?
※駒形氏の著書では「膣」と表記されていますが、現在は「腟」が一般的ですので、本文中は後者で表記します。

『膣の女子力 女医が教える「人には聞けない不調」の治し方』(KADOKAWA)
同書全体から伝わってくるのは「腟ケアしないと、女としての価値が下がる」という呪いのメッセージでした。車内広告で放たれる「脂肪を落とせ、ムダ毛を処理しろ」という圧とも、すごく似ている。精進して腟をよりよく保つ意識が、真の女子力! と伝えたいようなのですが、そもそも腟ってそんなしくみだったけ? と首をかしげたくなる主張ばかりでした。
まず同書では、前提として「女性の8割は腟が冷えている」としています。そして腟が冷えれば子宮も冷える。子宮の冷えが病気の原因。腟が冷えていると性交時の感度も下がるので、パートナーシップの危機でもある。でも、しっかり腟トレや腟マッサージをすれば生まれ変わる! 腟の血流がよくなると体が温まり、免疫機能が高まり、ホルモンバランスが整う……なんだとか。
でも、そもそも腟って冷えますかね? 医師でもなんでもない私が言うのもなんですが……冷えないよね。生命の危機になるほど体温が下がれば冷えるでしょうが、そうなったらホルモンがどうしたどころの話じゃありませんしね。
1 2