また東京や首都圏での感染急増のもとで、医療関係者や病床を五輪関係者用に割り当てたために、東京などでの医療ひっ迫を加速させる懸念がもたれています。コロナによる都内の入院患者数は7月24日時点で2638人と、1カ月前から倍増しています。また東京での自宅療養者は約5000人に上っています。デルタ株では若い人でも重症化するリスクがあると言われ、自宅療養者の観察がより重要になりますが、首都圏ではこれが手薄になっています。
五輪を優先するために、東京では開会直前の12日から4度目の緊急事態宣言がなされ、飲食店での酒類の提供が停止されました。そして競技会場近くの交通が長期間規制される上、首都高の料金は1000円上乗せされました。周辺の道路では渋滞の発生が報告され、食料品の流通、宅配の遅延などが報告されています。国民の生活や命が犠牲になる形の開催となっています。
残るのは感染拡大と借金か
57年前の東京大会では、五輪開催を機に、東海道新幹線が開通し、首都高、東京タワーが完成しました。先進国の仲間入りをアピールする大会になりましたが、今回は何が残るのでしょうか。「震災復興」の建前のもと、「簡素で安上がりの大会」を招致理由の1つにしましたが、競技場の多くが大金をかけて建て直され、大会後の利用が早くも懸念されています。
すでに東京大会用に3兆円以上が使われたと言われますが、ほぼ無観客の大会となったために、入場料収入はほとんどなく、その債務負担が今後国民や企業に重くのしかかってきます。そして「人類がコロナ禍を克服した証」に読み替えた大会が、新たなコロナ感染の機会になってしまえば、何のための五輪だったのか、説明がつかなくなります。
オリンピックは平和の祭典の理念に立ち返り、商業主義と政治利用で国民や選手が犠牲になるオリンピックの開催は、これが最後になることを祈るばかりです。
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