CO2排出だけじゃない! 肉の消費を減らすことが地球を守ることにつながる理由

文=志葉玲
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Getty Imagesより

●いま、“ここ”が分水嶺…豊かな地球を残すために知っておくべきこと(第5回)

 「毎日でもステーキを食べたい」──よりにもよって国連気候行動サミット(2019年9月)に参加するために訪米した際、報道陣の前で飛び出した小泉進次郎環境大臣の発言は、環境問題への理解不足だとして、批判を浴びました。

 食肉、とりわけ牛肉は、その生産過程で、大量のCO2を排出し、地球温暖化が加速する要因となっています。また、家畜の飼料のために、膨大な面積の土地が使われ、森林を破壊し、野生動物を絶滅の危機に追いやっています。今後、世界の人口がさらに増加し、食肉需要が増えれば、温暖化の進行や生態系の危機はますます深刻になることが予想される中、注目されているのが、食文化を見直すことや、代替肉など従来の肉に代わる食べ物です。

 今や家庭での料理や外食で、肉を食べることは当たり前で、むしろ肉抜きの食事の方が珍しいという人は少なくないでしょう。しかし、世界の人口が増え、大量の食肉を生産することが、地球の生態系に重い負担をかけています。国連食糧農業機関(FAO)が2013年に発表した報告によれば、温室効果ガスの14.5%が畜産業に由来しているとのことです。

 中でも、牛肉の生産は、1キロの牛肉のために約11キロの穀物、約2万リットルの水が使われるので、広大な農地や大量の水資源を必要とします。牛はニワトリや豚に比べ体が大きく、出荷まで成長させるのに時間がかかる上、牛が餌を消化の際に放出するゲップやおならに含まれるメタンガスは、CO2の約25倍という強力な温室効果ガスです。前出のFAOの報告によれば、牛が排出するCO2は、畜産業のうち65%を占めているそうです。牛に比べれば、ニワトリや豚の肉の生産過程での排出は少ないものの、温暖化の破局的な影響を食い止めるには、やはり「食」の見直しは避けられないでしょう。

 肉に依存した食生活は、生物多様性の危機にも直結しています。世界自然保護基金(WWF)が昨年9月に発表した報告によれば、世界の野生生物の個体数がわずか40年あまりで平均68%減ったとのことです。その要因としては、乱獲や外来種の侵入、温暖化になどがありますが、中でも深刻なのは畜産のための生息地の破壊です。

 例えば、生物多様性の宝庫であるアマゾンの熱帯雨林は、牛のための放牧地や家畜飼料として輸出される大豆の畑のために破壊されつづけ、温暖化の影響も相まって、近い将来、消滅してしまうことが危惧されています。とりわけ、ブラジルで2019年に環境問題を軽視するジャイル・ボルソナロ大統領が政権を握ってからは、過去10年間で最悪の乱開発が進み、大規模な森林火災も発生し続けています。

 世界全体でみても、FAO報告書『畜産の長い影』によれば、畜産のための土地利用は陸地の26%を占めているとのこと。このまま世界の人口が増え続け、人々が大量の肉を必要とするならば、野生生物達に未来はありません。

 いずれにせよ、私達は肉の消費を大幅に減らす必要があるようですが、野菜や穀物だけの食事は、なんともさびしい気もしないでもありません。

 そこで活用したいのが、豆腐や油あげなどの、大豆食品です。豆腐ハンバーグなど、肉を使わないでも美味しく食べられるベジタリアン料理は、今やネットで検索するといろいろとレシピが公開されています。

 また、最近では、植物性の原料を使いながら、食感は肉料理に近い「代替肉」も特に欧米で注目を浴び、新たな産業になりつつあります。日本でも、例えば伊藤ハムが代用肉製品をいくつも開発しており、スーパーによっては販売しているところがあります。

 筆者も、同社の「大豆ミートのからあげ」を食べてみましたが、チキンナゲットのような食感で、思っていたより美味しくびっくりしました。同製品はレンジで加熱するだけで食べられるので、料理が面倒な時やお弁当にも良いでしょう。

 日本ではまだまだ、ベジタリアンメニューや代用肉メニューが外食業界の中で普及していないのが実情ですが、ネットで「ベジタリアンメニュー レストラン」と検索するとそれなりにヒットしますし、全国のベジタリアンレストランを紹介しているサイトもあります。ファーストフード業界では、例えばモスバーガーは大豆ベースの「ソイパティ」を使ったソイバーガーを各種扱っています。

 また、ファミリーレストラン等のアンケートに地球環境のためのメニューを増やしてほしいと要望を書くことも大切なのかもしれません。

 エコなことをするというと、禁欲的な発想になりがちですが、むしろ、新たなライフスタイルを楽しむという姿勢で試行錯誤してみましょう。

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