入管問題は一時のブームに終わってほしくない 『東京クルド』日向史有監督インタビュー

文=太田明日香
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若い人から将来を奪っていく仮放免

 クルド語、トルコ語、日本語が話せるラマザンさんには、英語もマスターして通訳になりたいという夢がある。また、解体の仕事をしているオザンさんは他の仕事をしたいとタレント事務所の門を叩く。しかし、いずれも「仮放免」という立場のせいでその夢は断たれる。

 仮放免というのは、在留資格のない外国人が、入管施設での収容を一時的に解かれた状態を指す。難民申請をして許可が下りなくても仮放免の間は収容されずに生活できる。しかし、基本的には就労は禁止で、健康保険にも入れず、生活保護の申請もできない。また、定期的に入管に出向いて仮放免許可の期間を延長する申請をしなければならない。

 取材する中で日向監督は仮放免のどういう部分が問題と考え、当事者にとって大変だと感じたのか。

「仮放免という立場を理由に夢が断たれる瞬間が何度もあって、それは見ていてきつかったですよね
 『教育を受ける権利っていうのはどんな立場であってもある』とラマザンが言うように、在留資格があろうと仮放免という立場であろうと関係ない。学校側が仮放免について知らなくて、そのような立場に無理解だから入学が拒否されてしまうこともありました。また、オザンは仮放免だから就労できませんとはじかれてしまいました
 特に10代とか20代前半というのは、自分が何かになれるかもしれないとか、こういう人間になりたいとか、こういう職業につきたいとか、世界を旅してみたいとか、わくわくすることってあるじゃないですか。それがいくら努力してもチャンスさえ与えられないのはなんて残酷なんだろうなと。
 制度が人から将来を奪っていく。それでも当たり前なんですけど、(どんな状況にいても人は)将来を想像するんですよね。想像は止められないけど、(仮放免という立場のせいで)それが潰えていく。これはきついなって思いました」

難民認定がなかなか出ない現状

 日本は制度上、難民申請はできるものの実質的には認定されることがほぼない。仮放免も一見自由を与えているようで様々な制約がある。じわじわと日本にいようという気を削ぐような制度のようにも見える。

「日本はそもそも、難民の保護を保障し、生命の安全を確保するための権利や義務について規定している『難民条約』を批准しています。それを知らない人も多いので、大前提として難民条約の加盟国であることを知ってほしいですよね。日本は対外的に難民を受け入れる国ですよと言っているんですよ。それなのにこの映画のような現実があるんです」

 難民条約に加盟してはいるが、2020年の日本の難民認定率は0.5パーセント程度で、主要加盟国の中でもかなり低い。

「日本は難民であることを認める条件がとても厳しいからです。例えば難民申請者が『(もともといた国から)逮捕状が出ています』と主張すると『じゃあ逮捕状を見せてください』『その証拠を見せてください』と言われる。でも、その証拠を母国で集めているうちに逮捕されてしまうかもしれない。緊急性があればあるほどそういった証拠を持たずに逃げてくるわけです。むしろ、そうした証拠を持ってないのが難民なのに、それを難民申請者自身に求めるという矛盾があります」

 入管は「本人の証言が信用できない」とか「偽造パスポートを使っているから厳しくしている」と主張しているようだが……。

「緊急性が高い状態で逃げてきた人たちだからこそ、本国からパスポートをもらえなければ、偽造をするしかないようなこともありえるわけですよね。だけど、偽造したパスポートで日本に逃れてくると、偽造したことが悪で不法入国であり、日本にい続けると非正規滞在になってしまう」

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 日向監督は「不法滞在者」という言葉をなるべく使わないそうだ。それは、そもそも日本の法律の方に問題があるからという視点があるからなのだろうか。

「そうですね。法律を守ることと難民を保護することはかなり相入れない部分があると思います。極論ですけど、例えば国境線を超えてシリアから逃れてくる人たちの中にはパスポートを持っていない人もいると思うんです。だからって、不法に国を超えたと非難はしないじゃないですか。
 法務省という法を司る省庁が難民保護を担当していることがそのような厳しい条件を生み出しているのではないでしょうか。第三者機関が難民認定の審査をすることで、「難民保護」の視点から判断ができると思うんです。
 また、「不法就労」という言葉にも違和感があります。外国人が、さも犯罪ギリギリの仕事をして稼いでいるという印象を与えるからです。2019年、不法就労で捕まった人の入管の統計(「2020年版出入国管理(白書)」)があるんですが、その統計を見ると男女合わせて、1位が農業、2位が建設、3位が工員、つまり工場労働。技能実習生もそうですけど、非正規滞在の人たちがこの労働力不足の一端を担っているところもある。身近にあるコンビニでも店員の方で外国の人が目立って増えてきていますし、商品を製造する工場でもたくさんの外国人が働いています。外国の人に来てもらわなければコンビニだって成り立たない状況にあるのに……制度が追いついてないと思いますね」

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