入管問題は一時のブームに終わってほしくない 『東京クルド』日向史有監督インタビュー

文=太田明日香
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二世が成長していくなかで

 クルド人が難民認定を求めて日本にやって来るようになったのは90年代のこと。その間に日本で育つ人や二世が生まれてきている。日本で育つ彼らにとって日本は故郷でもあるはずなのに、日本での地位が不安定なままでは安心して暮らしていけないだろう。

「日本で幼少期から育った子、もしくは日本で生まれた子、日本語が母語で日本の風習や習慣にも慣れ親しんだ子ども達が育ってきています。それはクルド人に限ったことではないですよね。
 難民保護と労働力不足は同じ土俵で語れない全く別の問題ですが、労働力として新しく海外から日本に来てもらう政策をとるなら、まず日本国内にどういう現実があるか目を向けた方がいいと思います」

 オザンさんは自分のことを「ダニ以下」と言っていた。将来が描けないことへの不安や、入管で言われる心ない言葉のせいで、自己肯定感や自尊心を持てなくなっているのではないか。

「それはあるでしょう。入管職員が面談でオザンに言った「ほかの国行ってよ、ほかの国〜」という言葉にショックや怒りを感じたという感想は多く見かけました。あれは彼らにとっては冗談なんですよ。そのくらい普通に言われている。僕には冗談に聞こえないから映画に出しているんですけど。

 残酷だなと思うのは、成長していくにしたがって他の日本の子たちとの違いに気づいていくんですよね。オザンも最初は、いじめられても得意な野球で居場所を見つけられたけど、成長するうちに自分は働けない、進路がない、住民票も健康保険もないということに、どんどんどんどん気づいていく」

就労の資格もなく、生活の基盤も築けない。それでは日本社会で何もできないことになる。そういったことは本人だけでなく、周りとの関係にも影響を及ぼしていくはずだ。

「そうですね。オザンの父親との関係は一見どこにでもあるような反抗期に見えますが、その奥には在留資格のあるなしという彼らの立場が関わっているんです。制度が親子関係にも影響を及ぼすということはすごく思いますね」

入管問題は一時のブームに終わってほしくない 『東京クルド』日向史有監督インタビューの画像7

(C)2021 DOCUMENTARY JAPAN INC.

 映画では2019年当時、入管に長期収容されていたラマザンさんのおじさんのメメットさんが、体調不良にもかかわらず施設内で十分な医療行為を受けられず、妻と支援者が救急車を呼んでも入管に二回追い返される様子が撮られていた。2021年3月に起きたスリランカの元留学生ウィシュマさんが亡くなった事件や、5月に国会に提出された入管法改正案が取り下げられたことで、収容に上限がないことや待遇の悪さなど、少しずつ入管の問題が明らかになってきてはいるが、自分は何も知らなかったんだなと改めてショックを受けた。

「メメットさんだって亡くなってもおかしくなかったわけです。そういうことが事実としてずーっとあるんだってことは知ってほしいし忘れないでほしい。
 メメットさんを取材するため、入管に面会に4カ月弱、週に2、3回くらい通っていたのですが、それが……。僕も辛かったんですよね、本当に。『いつ出てくるんだろう』って。本人や家族が一番そう思っていると思いますけど、やはり上限が定められていないことがいちばん辛いですよね。
 ウィシュマさんのことは本当に悲しくいたましい事件ですけど、あんなことが入管の中ではずっと起きているんです。今入管の問題については盛り上がっていますが、一時のブームに終わってほしくないなと思います」

最新映画情報

渋谷 シアター・イメージフォーラム、大阪 第七藝術劇場、京都 出町座、神戸 元町映画館ほか、全国順次公開中。最新の全国公開劇場、劇場イベント詳細は映画公式ホームページ https://tokyokurds.jp/ にて。

<劇場イベント情報>

京都府京都市|出町座
8月3日(火) 15:40の回上映後:植山英美さん(本作プロデューサー/ ARTicle Films代表)によるアフタートーク開催

愛知県名古屋市|名古屋シネマテーク
8月7日(土) 10:00の回上映後:日向史有監督による舞台挨拶開催

広島県広島市|横川シネマ
8月8日(日) 11:40の回上映後:日向史有監督による舞台挨拶開催

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(C)2021 DOCUMENTARY JAPAN INC.

●クレジット
監督:日向史有
撮影:松村敏行、金沢裕司、鈴木克彦
編集:秦岳志
カラーグレーディング:織山臨太郎
サウンドデザイン:増子彰 MA:富永憲一
協力:日本クルド文化協会
映像提供:#FREEUSHIKU
技術協力:104 co Ltd クルド語翻訳:チョラク・ワッカス
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)、独立行政法人日本芸術文化振興会
プロデューサー:牧哲雄、植山英美、本木敦子
製作:ドキュメンタリージャパン 配給:東風
2021年|日本|103分 © 2021 DOCUMENTARY JAPAN INC.

●公式HP・SNS
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