
GettyImagesより
ふと真夜中に目覚めたときに寂しい将来がみえ、やっぱり自分には子育てが必要だと思い直した、うさぎママ。もしも家庭に恵まれない子どもがいたら養子縁組して育てたい。夫も快く賛成してくれて、さっそく調べることに。
<この連載について>
特別養子縁組とは、子どもの福祉のために(親のためではなく)、子どもが実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、養親(育ての親)と実子に等しい親子関係を結ぶ制度です(※)。
そんな特別養子縁組制度が成立した翌年の1988年、うさぎママ夫妻は児童相談所の仲介で0歳の娘・アンちゃんと出会い、その後、親子になりました。この連載は、アンちゃんが大人になるまでの日々を感情豊かに綴った書籍『産めないから、もらっちゃった!』(2012年、絶版)の改定版を公開するものです。
※厚生労働省 特別養子縁組制度について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169158.html
第1章 アンに出会うまで
「養子を育てたい」と思って、いろいろ調べてみたところ、『特別養子縁組』という制度があることを知りました。実子と同じように親子になれるなら、とてもいいと思いました。
とはいえ、どこへ相談や申し込みに行ったらいいのかなど、まったく見当もつきません。人に聞いたり、役所に電話をしたりして、最終的に児童相談所が窓口になっていると紹介されました。
児童相談所に行くと、当時30代だった担当者の「まーにいちゃん」(北野大<まさる>さんに似ていたので、のちに私たちはこっそりこう呼びました)が、親切にレクチャーしてくれました。
特別養子縁組をするには、まずは里親として子どもを受け入れること。里親には「養育里親」と「養子縁組を目指す里親」の2種類があり(当時は「専門里親」はありませんでした)、里親登録には時間のかかる審査があること。さらに特別養子縁組には、6カ月の養育期間のあと、家庭裁判所の審査・許可が必要なこと。
夫婦ふたりして、「思ったより簡単じゃないんだね〜」などとのんきなことを言いながら、里親申請が明るくスタートしました。遠い記憶なので曖昧ですが、当時も審査項目はたくさんありました。たとえば、次のような感じです。
<審査項目> | <メイプル家の状況> |
・資産 | まるまるローンが残っている自宅のみ |
・収入 | 少々年をとっているのでそれなりに |
・里親の健康状態 | 夫はダッシュで健康診断へ |
・里親の夫婦仲 | なんとか11年はもっています |
・育児方針 | 「生まれてきてよかった」と思える子に育てたい |
・親族の状況・意見 | すみません、これは曖昧でした |
・住環境 | 分譲宅地の一戸建て |
・飲料水 | 井戸ではなく上水道です |
このほか、数ある審査項目の中で「えっ?」と驚いたのが「ご近所の評判」。子どもを育てても大丈夫な家庭なのかどうかを近隣の人に聞くというもの。近くのさっぱりしていてステキなお母さんに事情を話して、児童相談所の方と訪問させていただきました。養子をもらうことをオープンにしていた私は平気でしたが、秘密にしたい場合は困ったかもしれません。
まーにいちゃんに聞いたところによると、児童相談所の名入り封筒での郵便物は困るという方がいたり、養子縁組が成立したらすぐに引っ越して連絡を絶つ方がいたりと、いろいろな方がいたそうです。
もちろん、養子であることをかくしたい気持ちはわかります。かくしきれるものならって。でも、いつか、なんらかの形で子どもは真実を知ることになります。どんなことにおいても、逃げるのはよくない解決法というよりも、解決しない方法なんです。
我が家では、養子をもらおうと決めたときに夫婦で長く話し合った結果、「養子であることをかくさない」をモットーにしました。
血のつながりのない家庭で育つことに関して、赤ちゃんにはなんの責任もないのだから、「かくしていたのは悪いことだから? 恥ずかしいことだから?」なんて絶対に思ってほしくなかったからです。これが、まだ見ぬ子どもへの親心のスタート地点だったように思います。
特別養子縁組をしただけの普通の家族の話
「特別養子縁組」をご存知でしょうか? 特別養子縁組とは、子どもの福祉のために(親のためではなく)、子どもが実親(生みの親)との法的な親子関係を解…