なぜ『イン・ザ・ハイツ』の評価はわかれるのか ラテン系のステレオタイプと多様性

文=竹田ダニエル
【この記事のキーワード】

カラーリズムがアジア系に与える影響

 有色人種の俳優たちが歴史的に、実力があるにもかかわらず作品では脇役などでしか活躍できず、現在に至るまでハリウッドから排除され続けてきた問題はアジア系にも大きな影響を与えている。

 エンターテインメント業界における、人種差別に基づく体系的な排除や抑圧に関する批判は、例えば同じチュウ監督の作品『クレイジー・リッチ!』に対しても向けられた。本来は人種的に多様な国であるシンガポールを舞台にしながらも、ほとんど東アジア系(特に中国系)の俳優しか登場しないことが問題視された。シンガポールの人口の約13.4%はマレー系、そして9%がインド系であるにも関わらず、映画内ではこのような「ブラウン系」アジア人は裕福な中国人に使える脇役でしか登場しないのだ。

 ハリウッド映画がアジア人に対する有害なステレオタイプを助長し続けていることも、アジア系に対するヘイトクライムが今年の春に相次いで発生した際に問題提起された。

 2019年の年間興行収入上位100本の映画に登場するアジア人、アジア系アメリカ人、太平洋諸島人(API)のキャラクターの4分の1以上が、映画の終わりまでに死んでおり、1人を除いて全員が暴力的な死を遂げるということが統計からわかった。ハリウッドにおいて、アジア系に対して「永遠に外国人」というような陰湿なイメージを増幅させるために登場人物が誇張されたアジア系のアクセントで話したり、英語を理解していないように描かれたりしていることも憂慮されるべきだと批判されている。アジア人女性が過剰に性的に描写されていることなども、欧米の映画業界においてなかなか消えない、有害な表現方法の使い回しだ。

参考:https://www.huffpost.com/entry/asian-american-representation-aapi-hollywood-asian-stereotypes_n_60a030a6e4b063dcceaa493e

 同じ「ラテン系コミュニティ」または「アジア系コミュニティ」であっても、その中に存在している人種的、文化的な多様性を否定するような作品はやはり“representation”に一役を買っているとは言い切れない。どんな肌の色の人であっても均等な機会を与えられるためにも、視聴者も作品のキャスティングや、作品が描いている文化の歴史的な背景を知ることが求められている。『イン・ザ・ハイツ』をきっかけに、メディアや映画業界の中でのカラーリズムと向き合うきっかけが得られることで、より包括的な意味で「多様」な作品、そして社会に繋がることに期待したい。

1 2 3

「なぜ『イン・ザ・ハイツ』の評価はわかれるのか ラテン系のステレオタイプと多様性」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。