宋美玄先生に聞く「妊娠中は小麦・卵などの代表的なアレルゲンを食べないほうがいいと聞きました」

文=宋美玄
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Gettyimagesより

産婦人科医・宋美玄先生の妊娠・出産Q&A

Q.妊娠中は小麦・卵などの代表的なアレルゲンを食べないほうがいいと聞きました。

A.根拠のない説です。 母子どちらのアレルギー予防にもつながりません。

 妊娠中の母親が小麦・卵・牛乳などの代表的なアレルゲンを抜くと、子どものアレルギーが防げるという説がまことしやかに広まっているようですが、すでにまったく効果がないことがわかっています。栄養が偏る原因になりかねないので、 お母さん自身にアレルギーがない限り、普通に食べましょう。

 本当に食べてはいけないのは、生肉や生ハム、無殺菌のミルクやチーズなど、病原性原虫の『トキソプラズマ』や細菌の一種である『リステリア』に感染するリスクのあるものです。トキソプラズマに感染すると、流産や死産、胎児の脳や目に障害をきたす『先天性トキソプラズマ症候群』になる危険性があります。リステリアに感染した場合も、流産や早産、胎児が髄膜炎になることがあるのです。

 手作りの酵素ジュースや発酵食品なども、やはり食中毒のリスクが高いので、妊娠中はやめておいたほうがいいと思います。どの食中毒でも同じですが、予防の基本はよく洗うことと殺菌です。手だけではなく、包丁やまな板などの調理器具、食器類も清潔にしましょう。

 そのほか、たくさんの小魚を食べるクロマグロ(本マグロ)、メバチマグロ、メカジキ、キンメダイなどの大きな魚には水銀が多く蓄積していますから、赤ちゃんに影響しないよう、妊娠中は控えめにしましょう。アジ、イワシ、サンマ、タイ、ブリなどは心配ありません。詳しくは厚生労働省のパンフレットを参考にしてくださいね。

厚生労働省「お魚について知っておいてほしいこと」
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/100601-1.pdf

 また、ほとんどのサプリメントには特に効果も害もないと思いますが、葉酸以外はおすすめしません。プラセンタは人の胎盤を使っているものもあるため、やめましょう。

 あとは「妊娠中に白砂糖はよくない」「妊婦さんは身体を冷やす食べ物は避けて」なども聞きますが迷信です。妊娠中だからといって、食べてはいけないものは少ないのです。根拠も意味もない食事制限はしないで、普通の食事をできるだけバランスよく美味しく食べてくださいね。

<今回のポイント>

○代表的なアレルゲンを避ける必要なし
○食中毒のリスクのある生ものや水銀に注意
○妊娠中でも食べてはいけないものは少ない

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