ウィシュマさんを忘れてはいけない! 悲劇を繰り返さないため市民がやるべきこと

文=織田朝日
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Getty Imagesより

「すべての外国人に見てもらいたい。今回は姉でしたが、明日はあなたの番ですよ!」

 今年3月、名古屋入管施設で収容中に命を落としたスリランカ人ウィシュマ・サンダマリさんの妹、ワヨミさんが嗚咽交じりに多くの報道陣の前で声を震わせながらそう叫んだ。

 法務省・入管庁はウィシュマさんが死亡するまでの様子の映像を遺族のみに見せることを許可した。しかし、映像は2週間分あるのにも関わらず、わずか2時間に編集したものだった。

 その映像を見た遺族は、姉の苦しんでいる姿を見て具合が悪くなってしまい、1時間10分ほどで耐えきれず外に出た。そこで前述のように叫んだのであった。

 現在の日本の姿をこの言葉が集約しているかのようだった。この国では外国人の命はあまりにも軽い。この国に住む全ての人たちは、この言葉の意味を重く受け止めるべきではないだろうか。

ウィシュマさんの死をめぐる入管庁のあり得ない対応

 映像の中では、食事がとれず衰弱しているウィシュマさんがうまくカフェオレが飲めず、鼻から噴出した際に、職員2人が「鼻から牛乳や」と笑う場面があった。

 また床に倒れ動けなかったウィシュマさんの服を引っ張るだけで、ベッドには戻してもらえず、そのまま床に放置して、彼女をまたいで部屋を出て行ってしまう職員の姿があったという。まるで動物のように扱われていたそうだ。

 入管庁の出してきた調査報告書にも、動けないウィシュマさんに対して職員が「薬きまってる?」と失言をしたり、ウィシュマさんの介助をする際「いい加減にしてよ』という気持ちになり「重いよ」と本人に当たったことが書かれていた。

 8月13日、参議院会館の講堂で「難民問題に関する議員懇談会」が開かれた。ワヨミさんは映像のショックで体調を崩し欠席。もうひとりの妹ポールニマさんが出席した。

 入管庁の役人たちも出席し、ウィシュマさんの死亡事案に関する最終報告が発表されることとなった。

 出入国管理部長の丸山秀治氏は、職員の失言に対し、「人権意識に欠ける不適切発言であったことは認める、その点は本人も反省している」と回答。

 しかし、最終調査については「調査を尽くして結論を導いている。調査継続を考えていない。(ウィシュマさんの死は)複数の要因が原因であり特定困難」と、死の原因が特定できないまま調査を終了という姿勢を見せた。

 これに対し同席していた立憲民主党の近藤昭一議員は、「真相をつきとめたい。このままでは納得できない」と発言したが、丸山氏は「調査を尽くした」との一点張りであった。

 ポールニマさんは「ほんとうに反省しているなら、ちゃんと認めてください。お母さんに映像を見せたいので、データとしてほしい。映像を弁護士や議員にも見せてほしい」と訴えた。

 また遺族は、名古屋入管に対し行政文書開示請求をしていたが、15万円もの手数料を請求されたにもかかわらず、出てきた文書約1万5千枚はほとんど黒塗りだった。

 指宿昭一弁護士は8月17日の記者会見で、黒塗りの紙をかかげ、「入管はとにかくすべてのことを隠したがる。調査報告書に記載していることすら黒塗りで出してくる。これが国として行政として正しい姿なのでしょうか。この真っ黒な紙は入管の闇を表していると思います!」と怒りを込めて、声を上げた。

 入管庁は懇談会で何度も「反省」という言葉を用いたが、本当に反省し、改善をしていく気があるのだろうか。

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