子どもの心身に深刻なダメージを与える新型コロナ 米国の試行錯誤から学べること

文=みわよしこ
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 2020年3月13日、奇しくも「13日の金曜日」、米国のトランプ大統領(当時)は国家非常事態宣言を行った。同時にロックダウンが開始され、学校も休校となった。この時、トランプ氏は「アメリカ人の生命・健康・安全を守るためなら、何でもする」という内容のメッセージを発していた。日本の公衆衛生政策に強い影響を与えている米国では、どのように子どものメンタルヘルスを守っているのだろうか。

トランプ氏の「アメリカ人」に有色人種の子どもは含まれるのか

 2020年3月、米国のトランプ大統領(当時)は国家非常事態宣言を発し、国内すべての州でロックダウンを開始させた。同時に約50兆円規模の財政出動・医療従事者の支援・新型コロナウイルスの感染検査の拡大の3点を軸とする措置「American Rescue Act」を実施した。同時に発せられたトランプ氏のメッセージは、「アメリカ人の生命・健康・安全を守るために必要なことをするのに、何らためらいはない。アメリカが好ましい状態であることを、私はいつも最優先している」というものであった。

 まことに美しいメッセージではあるのだが、トランプ氏は、4年間の任期中に米国の社会保障や社会福祉を大きく後退させた張本人である。このメッセージは、自己責任論と反福祉主義の権化のようなトランプ氏が、自らの推し進めてきた政策と反する措置を行うにあたっての、支持者に対するエクスキューズだったのであろうか。あるいは、同年11月の大統領選挙を控えて、「社会的弱者が感染症でどうなろうが知ったことか」とは言いたくても言えなかったのであろうか。

 トランプ氏が「アメリカ人」と語る時、多くの場合に「白色人種」「キリスト教徒」「就労収入または老齢年金で生活が成り立つ」の3点が自動的に含まれる。大統領選挙に臨むにあたり、選挙権を保有している「アメリカ人」であることも重要だったはずだ。有色人種、非キリスト教徒(たとえばムスリム)、社会保障や社会福祉を必要とする人々、住民登録せずに息を潜めて暮らしている不法移民たち、まだ選挙権を持っていない子どもたちは、想定されていただろうか? おそらく、トランプ氏の意識の中にはいなかったであろう。

 しかしこの時、トランプ氏が想定していない人々を含めて、少なくとも当面の数カ月を乗り切ることは可能そうな規模の財政出動が実行されたのである。ビジネスパーソンとしての経験を持つトランプ氏にとって、先に人件費や経費を確保するのは当然だったのかもしれない。結果として、トランプ氏の美しいメッセージは「実行してください。カネなら連邦政府が出しますから」という行財政の裏付けを伴うこととなった。

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